投稿者 考える葦へ(転載) 日時 2001 年 10 月 11 日 16:53:34:
(1)米国の最終的な狙いは、中東の石油である。
米国の埋蔵原油は、年間消費量の10年分しか残っていない。
(2)ただし、それはイスラム圏の世論が許さない。
(3)米国としては、危うい状態にある、ファハド王家と結ぶ米国
軍駐留を続ける、国際的な名目を得たい。
サウジは、王家転覆、民主革命前夜であると見ます。
(4)米国は、参戦の名目を得るため、イラクのフセインを、戦争
に引き出したい。
(5)国家的テロ集団と言えば、イスラエルと長期紛争状態にある
アラファトのパレスチナである。
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※本マガジンの、「購読サンプル」としての、友人・知人・同僚・
部下・上司・取引先への転送は自由におこなってください。
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ビジネス知識源プレミアム(有料版)Vol.7
緊急号:アフガン空爆後の世界
・・・経済恐慌の確率が高まった
2001年10月8日:経営分野
著者へのひとことメール yoshida@cool-knowledge.com
ホームページ http://www.cool-knowledge.com
著者:Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
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こんにちは、吉田繁治です。10月8日の米英軍のアフガニスタン
空爆で、同時多発テロ事件は、4週目に新しい局面に入りました。
今は、時間単位で、情勢が動きます。一瞬も、目が離せない。
緊急号として、最初に、この問題を考察します。
次に、可能性が高くなってきた「恐慌」についての予測と考察を加
えます。
最後に、米国が言う長期戦の本当の意味の推測です。
本有料版の読者数は、開始1ヶ月で1,111名を超えました。今
回のまぐまぐの有料版発行は166誌、ビジネスのカテゴリーでは
22誌です。トップクラスの支持者のようです。感謝申し上げます。
どれくらいの支持があるのか、判然と予想ができず開始しました。
目処と実際が、予想を10から20%上回って一致しました。
(注)明日の夜送信する分に<SCM経営をめぐる考察>の第2部
を含みます。
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< 緊急号:アフガン空爆後の世界
・・・経済恐慌の確率が高まった>
【目次】
1.アフガン空爆開始で起こった新しい事態
2.危惧
3.経済恐慌の確率が高まった
4.人為と、マネー原理の相克
5.米国の消費の性格を考察する
6.世界の生産物を吸収してきた米国
7.米国が言う長期戦の意味
(10月10日号へ続く)
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■1.アフガン空爆開始で起こった新しい事態
▼今日の時点での新しい事態とは?
問題の核として考慮すべきは、核ミサイルを持つパキスタンの内政
です。ビンラディンを追い詰めること、タリバン政権の転覆は、本
質の問題ではないのです。
テロ組織の壊滅戦略が、その波及を生んだことが新しい事態です。
経済援助金と引き換えに、米軍及び西側への支持を表明したムシャ
ラフ大統領への抗議デモが、各地で大規模に起こった。
10月8日時点で、米国非難を公式に表明しているのは、イラク、
イラン、レバノンの3カ国です。
西側世界にとって、テロ集団を壊滅すること自体は、正当な行為で
す。しかし、その波及までを想定して、戦術を立てる必要があるの
です。
12億人のイスラム世界では、西側からの何世紀にもわたる侵略・
抑圧・搾取が、根底の問題であるという認識が共有化されている。
その過激派が、イスラム原理主義です。ここを忘れてはならない。
▼今最大の問題は、パキスタンの過激派の動向
パキスタン軍のなかに、原理主義の過激派支持が少なくとも30%
以上です。多く見るひとは50%と見ている。
パキスタンでは、米国支持に回った現ムシャラフ(軍事)政権への
反発で、軍部クーデーターが予測される事態を迎えています。
アフガンやパキスタンの民衆には、戦争は日常です。
安全が前提であり食糧には困らない世界と、認識が違う。
パキスタンの過激派クーデーターが起これば、西側軍は、20から
30の核ミサイルを持つと言われるパキスタンとの戦闘状態になる。
これが、10月8日、今日の時点での新しい事態です。
今、世界情勢は、1時間単位で動いています。
西側軍は現大統領のムシャラフと結び、軍を立てパキスタンの過激
派を押さえることができるのか。机上作戦では可能です。
しかしそうすれば、米軍は、イスラム全体を敵に回す。
パキスタンの政情の推移如何では、この可能性が出てきた。
2001年10月8日現在、これが、危惧される事態になったので
す。
▼アフガン・パキスタンでは・・・
認識すべきは、パキスタン、アフガンにとって、戦争より重大な問
題は、寒冷地で差し迫った冬をどう越すか、つまり飢餓であること
です。西側世界とは、価値の優先順位が違います。想像力が必要で
す。
アフガン国境で医療活動に長年奉じる日本人医師は、昨日、現地で
は食糧が不足し、行き渡らないと言っていた。更に難民になってか
らでは対策は遅い、難民になる前に、物資が届くようにしなければ
ならないという意見にも、なるほどと思った。
この医師の話を聞き、支援とは、難民を作らないための支援だとい
うことに気がつきました。
日本を含む西側諸国は、食糧供給を宣言し、今より更に大量の食糧
を積み、空輸すべきです。単に空輸ではなく、飢え寸前の人たちに、
行き渡る食糧ロジスティクスが必要です。大事業になりますが、
世界の危機を避けるために、必要なことです。
これが日本らしい、世界への貢献になるでしょう。
▼尊敬される国:日本になって欲しい
日本は、今、米軍の後方支援のみをミッションと設定すべきではな
い。
パキスタン、アフガンの民衆は、親日です。大量の食糧の、約半年
間の無償供与、末端まで届くロジスティクスを日本が表明すれば、
日本は世界から尊敬される国になれる。パラパラと戦闘機から落と
すくらいではお笑いです。
若い人たちが、自分の国を尊敬できるかどうか、ここが、国家にと
って根底的に大切です。世界で最初に核攻撃を受け、サリンも、阪
神淡路大震災も経験した。国としてのアイデンティティに誇りを持
つには、パキスタン、アフガンに対する食糧の、継続的、組織的援
助を、独自の決定で、行うことです。
▼大戦の危機は回避できるか
今回の「新しい戦争」では、西側世界の世論をまとめるブッシュ政
権の手法のみではなく、イスラム世界の穏健派と、宗教的指導者を
味方につけるための世論作りと、そのための援助が必要です。
【食という、人間になるための条件】
多くの人間は、食料がなければ、殺人、殺戮、略奪、犯罪をなんと
も思わない動物になる。フィリピンで、敗残兵として敗戦を迎えた
義父から聞いたことです。そこで見たこと、起こったことは、誰に
も話したくないと言っていた、誇り高い、貴族の雰囲気を持つ義父
です。
87歳になった今、私と二人でお酒を飲んでいるとポツリともらす
ことがある。
類似の体験を持つ、同世代の人も多い。
ダイエーの中内氏も同じ体験を持つ。
いかなる時も、いかなる理由があっても、人を飢えさせてはいけな
い。
日本人ができることは、武力以外に、どさっさりある。
イマジネーションを喚起し、相手の立場立つことです。
武力は、問題の最終解決にはならない。無駄な公共投資と、円で言
えばわずかな金額で済む食糧とどちらが大切か。
▼イマジネーションの喚起ということ
「個客」の立場で、企業の商品とサービスを見直すのが、CRM経
営です。企業側が、「個客」の立場に立つには、イマジネーション
が必要です。「個客」の立場から企業を見る想像力を90年代米国
企業が発揮したことが、CRM経営を確立させた。
今月のテーマのSCMも、根幹は同じです。「個客」に向かって、
販売、流通、生産の最適化を図ること。ここには、流通の全体を見
る視点、すなわちイマジネーションが必要です。
あらゆる事象で、双方が立場の主張をすれば、摩擦という無駄なコ
ストが発生する。(経済学では、これを「取引のコスト」と呼んで
います)
以上、テロから世界大戦への拡大を避けるための考察です。
軍主導の問題解決は、危険です。
日本が機能するのは、米軍の軍事的支援では、決してない。
日本政府の対応は、方向がずれています。
狙って、やっているのなら、小泉政権は姑息です。
(戦線が拡大すれば、最終的には、イラク対イスラエル、及び、サ
ウジアラビア(人口1788万人)の、米国と結ぶファハド王家に
対する民主革命も予想されるのです)
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■2.危惧
▼ブッシュが言う、テロ組織とテロ国家
米国の狙いが、戦争と戦線の拡大でないことを願います。ブッシュ
大統領は、計算の上での発言かどうか、「テロ組織、テロをかくま
う国家、そして支援する国家」が敵であると言っています。
そうなると、昨日の時点で、アフガンを含めると4カ国、イラン、
イラク、レバノンが敵になる。
ここで、米国の敵の本命は、フセインのイラクです。
実は、今の時点で、そこまでの戦線拡大が予測される。
<テロとの戦いは長期戦である>という、ブッシュを含む米国首脳
の、繰り返す発言がとても気になる。
▼目的はどこか
目的が、
(1)ビンラディン及びアルカイダの首脳を捕まえ、あるいは殺し、
(2)タリバン(国土の90%を支配)を壊滅させ、
(3)穏健派と目されているアフガン北部同盟(現在は国土の10
%部分を支配)の政権を作ることは、造作もないことです。
米国が本気で向かえば、数週間で終わるでしょう。
1979年から89年までのソ連のアフガン侵略で、山地での戦闘
の困難さが言われます。
しかし、このアフガン10年戦争の実態は、<ソ連−アフガン>で
はなく、<ソ連−アフガン−米国CIA>だったのです。アフガン
を支援し武器を供給したのは、米国だった。これも認識しておく必
要があります。
▼「世界のテロ組織の末端までを壊滅させる」目標の非現実性
米国が言う、世界のテロ組織の末端までを雲散霧消させることは、
全く、現実的な目標にならない。それは、世界から殺人を無くすと
いうのと同じくらい<目標にならない目標>だからです。どこにい
るのかわからない潜伏した人を、どうやって探すことができるので
しょう。
マスコミ情報に踊らされるのでなく、ここを、考えて欲しいのです。
テロ組織の末端までの壊滅が、リアルな目標にはなりえないという
現実論から判断すると、ブッシュ将軍(敢えてこう言います)の目
的は、テロ支援国家との戦争です。
その張本人は、フセインということになる。
ここまで、推理ができます。
(※後半部分で、さらに考察を進めます)
次は、経済面の危機の考察です。
▼3項
(1)9月11日の同時多発テロ事件以前でも、米国経済のハード
ランディング(株価急落、消費急減、民間信用縮小、投資減少)が
確度をもって、予測できた。
(2)9月11日以降の事態は、ハードランディングどころか、ク
ラッシュの確度が高まった。
この4週の、米国消費の減少が、激しい。米国は消費財輸入の国。
輸入代金はドル増刷で払い、海外に一旦は流出したドルを、金融で
集める構造だった。米国の消費が急減すると、世界経済の構造が、
変わるのです。
(3)米国経済は個人消費がGDPの70%(日本は60%)を占
め、個人消費が経済を支える。1993年からの足掛け9年の、消
費景気が、ソフトに終わるのではなく、クラッシュすることが、こ
の4週で確定的になってきたのです。
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■3.経済恐慌の確率が高まった
最初の危機は、9月17日、NYSE(NY証券取引所)が再開さ
れた日でした。ここで暴落が起こっていたら、世界恐慌へ直行だっ
た。
幸い、売りを抑制した米国人のマネー原理を超えた愛国心、FRB
議長の緊急利下げ、世界の中央銀行の協調によるマネー供給で、シ
ョック的暴落は回避できた。世界が、固唾を呑んで見守った一週間
でした。
▼2000年以降の株価の急落
しかしながら、世界の主要株式市場では2000年以降で、$29
.2兆から01年9月の$19.2兆にまで、$10兆が失われて
いる。
こうした時は微細な部分ではなく、大きく見ることが必要です。
【再掲:株価時価総額の急減】 (日経新聞 01.10.02)
2000年以降のピーク 01年9月末
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ニューヨーク $12.9兆 $10.4兆
ナスダック 6.3兆 2.3兆
ロンドン 2.9兆 2.1兆
フランクフルト 1.5兆 0.9兆
パリ 1.6兆 1.0兆
東京 4.0兆 2.5兆
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(合計) $29.2兆 $19.2兆
参考:世界GDP $31.3兆
▼巨視
ここで観察しなければならないのは、東京市場の$2.5兆と米国
市場(ニューヨーク+ナスダック)の$12.7兆です。
【冷静な比較】
日本の実物経済(GDPで計る)は、米国の約半分です。
株価の時価総額では、日本が$2.5兆なら、米国は$5.0、米
国が$12.6なら日本は$6.3兆が、妥当な線になる。
ところが日本の$6.3兆は、1989年末の、日経平均39,0
00円の時の時価総額、600兆円に匹敵する。
NYダウは$9123、ナスダックが1580ポイント(いずれも
10月4日)まで下落したが、下落後の現在株価が、なお日本の地
価・株価バブルのピークの時期に匹敵するのです。
【下がった米国株価の認識】
こうした比較をすれば、米国の99年末の株価が、2段バブルの異
常だったことがわかる。
一段のバブルがはじけた後の01年10月第1週の現状でも、日本
のバブルの頂点に匹敵する価格。ここを、認識しておくべきです。
米国が、(株価が上昇しなくても)現状の高い株価水準を維持でき
れば、問題はない。そのためには、日本、アジア、欧州から米国へ
の資金流入が続くことが必要です。
世界が米国への資金流入を、続けることができるか、ここが問題の
焦点です。
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■4.人為と、マネー原理の相克
9月11日以降、ドルは、世界の中央銀行が、協調的に支える状況
になった。米国は、民間消費(GDPの約70%)の急減、投資の
急減を深刻化させないため、金利を下げる必要がある。米国の金利
が下がれば、やはり世界のマネーは米国から、逃げる。
【景気対策の裏腹】
10月3日、FRB(米連邦準備理事会)は、
(1)短期財務証券のFF金利を2.5%に下げ(今年9回目)、
(2)同時に公定歩合も2.0%に下げた。
(9月17日の、0.5%利下げに続くもの)
▼実質金利の視点
米国は、マイナス物価の日本とは違い、インフレ率が2.7%です。
ということは、今回の引き下げで米国の実質金利は、マイナス金
利になった。マイナス金利では、ドルは世界のマネーをひきつける
ことはできない。
一方で、日本は、名目金利はゼロですが、物価がマイナスのため、
実質金利はプラスです。日本では名目金利ゼロでもマネーの実質は
増える。
こうした状態では、米国に行っていたマネーは日本に戻るのが、自
然な流れになる。円高、ドル安の構造ができたのです。
▼人為とマネー原理
増えるところに集まるマネーの原理で言えば、ドル安と米国株価下
落が同時進行する。
世界の中央銀行は、人為的・政策的にドル安、米国株価安をとどめ
ようとするが、人為は一時的な効果しかないのです。
世界の中央銀行がドル安を止めようとする理由は、
(1)ドル安(=ドル売り)が進行すれば、世界の株価総時価の
($12.7兆÷$19.2兆=)66%を占める米国株が下がり、
(2)その結果、世界が急激なマネー不足、クレジットクランチに
なるからです。
しかし、マネー原理では、以下のようになる。
高いところ(マネーのリスクが大きなところ)から、低いところ(
リスクが小さなところ)に、マネーは自然に流れ、両者が均衡し、
また別の新しい流れになる。中央銀行の人為は、水の自然な流れ(
マーケット判断)をせき止めて、ダムを作るようなものです。
ダムにたまるエネルギーは大きくなり、ある日、突然決壊する。
私は、それをもたらすのが、今回の米国実質金利のマイナスである
と見ています。米国の実質金利マイナスで、しかも株価下落では、
マネーを集める基盤が2つとも同時に失われた。
米国経済は、実質金利のマイナスという材料をうずめて余りある、
マネーを集める、経済成長の材料を見つけなければならないのです。
それが、今、あるか? 世界経済が恐慌になるかどうかは、一点に
そこに集約されます。日本では不良債権で、金融問題が煮詰まった
ように、米国の金融問題も煮詰まったのです。
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■5.米国の消費の性格を考察する
90年代後期から現在まで、米国経済を支えてきたのは、
(1)旺盛な個人消費と、
(2)IT投資です。
資金面で支えたのが、
(1)最初はナスダック(ニューエコノミー)、
(2)次はNYダウ(オールドエコノミー)の株高です。
連続的な株高によって、2000年までの個人消費とIT投資が支
えられた。
以下、米国の消費に関し、普通は、指摘されないことを示します。
米国の店舗観察から得られた内容です。
(日本との比較を思い浮かべて読むと、違いが鮮やかになります)
▼ナスダック株の下落が、消費縮小に直結しなかった
まず、2000年春からのナスダック株の暴落(現在はピーク価格
の30%)で、IT投資が急減した。一方で、個人消費は、まだ強
気だった。これが、米国経済への強気の見方を支えたのです。株が
下がっても、消費は下がらないとの楽観が生まれた。
ナスダックの株は下がったが、それは401Kの年金資産の下落で
すから、今日の消費には関係がなかった。401Kでの株や投資信
託は、毎月のわずかな年金の積み立てです。
家計は長期的に見ていた。00年にナスダック株が下落した時、消
費縮小になると見られたが、それは起こらなかったのです。
家計は、小額の買い物はカードローンで、車の購入はリースで、及
び安くなった金利での住宅ローンの借り換えで、いずれも借金の積
み増しで、買い物を続けた。
▼消費過剰を誘う構造の米国経済
ここで説明すべきことがあります。米国家計に、消費過剰の構造を
組み込む、民間金融の仕組み、信用創造があることです。
日本とはここが違います。3つの例を挙げます。
【消費を誘う金融構造】
(1)車を買うときのリース
例えば、300万円の小型高級車を買うとき、2年で200万円の
下取りの契約をします。2年で100万円(月4〜5万円)で買え
る。
しかもリース会社は、金利を安くし、引き取り価格をあげた。一家
に3台どころか、4台、5台の車の所有が多く見られるのです。こ
うしたリースが、自動車購入の増加分を支えてきた。
(2)住宅ローンの借り換え
米国では住宅ローンの金利が下がると、すぐ借り換えをします。銀
行が、借り換えになかなか応じない日本とは事情が違います。
例えば担保評価額2000万円、ローン残高1000万円のとき、
1000万円を借り替え、金利が2%下がれば、年20万円の支出
減になる。ここまでは、当たり前です。
ここで米国住宅ローン会社は、なんと2000万円を貸す。つまり、
家計には、借り換え後で1000万円の手元現金が増える。こう
した借り換えなのです。これも、高額品消費に向かった。
また、住宅を買うときの住宅ローンを組むのも簡単です。
頭金30%があれば、ほぼ無条件でローンがおります。
ローン会社は、住宅価格の70%の担保価値を、ノンリスクの価値
と見ているのです。
2000年になって、FRBは9回も利下げをした。その利下げが
あるたびに、こうした借り換え、借り換え、そして住宅需要支えて
きた。
(3)家具等の高額耐久財の買い物では、6ヶ月間、または12ヶ
月間支払いゼロのローンがあります。
住宅が売れると、それに付随して家具、住まい関連のホーム・ファ
ニシング商品類(家具より総金額は大きい)、家電製品、そして車
の買増しまでが起こる。住宅購入は、家計の蓄積を一挙に吐き出さ
せるのです。
こうした、耐久財の購入が、米国の消費を支えてきた。住宅リフォ
ームの部材・部品売るホームデポが、年間200店も増やしたので
す。
日本では、金利の低下が、消費者の買い物を増やすことには直結し
ません。ところが、米国では直結する。
2001年初頭の米国の短期金利は6%でした。
これが、9回の利下げで10月3日に短期FF金利2.5%(公定
歩合2.0%)になった。
ここでもう、これ以上は、利下げが困難になった。インフレ率控除
後の実質金利マイナスで更に利率を下げれば、今度は、ドル安、資
金流出で、マネーがなくなって市場金利は上がる(米国財務省債権
の価格下落)になるからです。
こうなると、いよいよ金利感度の高い米国消費が、ファイナンスの
面で縮小する。そうした時期を迎えたのです。
今までの米国消費が、少なくとも5%、多く見れば10%は多すぎ
た。
底上げがあったのです。
▼注:日本の金利と米国の金利の性格の違い
日本では、金利をどんどん下げても、国内金融機関と期間投資家が
、運用先に困って、低利の国債を消化する構造があった。その国債
購入を支えたのが、国民の郵貯・銀行預金の増加です。庶民は、預
金を減らさなかった。日本では、国外からの購入に頼らなくても、
国債を国内消化できる構造があった。
ところが、米国では、国債金利を下げると、国債が売れない状況(
商金利が上がる)構造があるのです。
日本のゼロ金利からみれば、まだ2%ではないかと見る向きがある
と思います。しかし、資金循環の、本源的資金を国外に頼る米国で
は、低金利は、資金縮小を生むのです。
▼買い物を楽しくさせ、商品の価値を見せるVP
更に、米国小売業のVP(Visual Presentation:視覚的に商品価値
をわからせる陳列技術)と日本では、雲泥の技術格差があります。
買い物の楽しさ、お得感を与える演出が格段にうまい。
(※米国、先端流通業研修で、VPの技術構造を解説します)
店舗に行くと、知らず知らずに(時には余分に、しかし楽しく)買
ってしまう演出があるのです。
▼お金の使い方の違い
以上でまとめたように、米国では、家計に消費過剰を誘う基盤が、
複合的にある。買い物を、現金で行うことが習慣の日本の家計とは、
構造が違います。
2000年で、米国の家計は、貯蓄率をマイナスにしてまで、買い
物をしたのです。
現金での買い物では、銀行預金や財布の中身で消費は抑制されます。
一方プラスチックマネーのカードで買えば、誰でも制限感がなくな
る。コンロトールが効(き)かないのが、普通の人間です。
米国で、現金で買い物するのは、クレジットカードを持つことがで
きない人、言いかえれば銀行口座がもてない人だけですね。
米国のワーカーの週給制度は、日本のように月給を与えると、すぐ
に使ってしまう人が多いことが理由でもあるのです。現金を持たな
くても物が買えるカードが極度に発達したのは、ワーカーの週給制
度が原因でもあります。
実はカード使用額の増加分は、民間信用の増加、つまり市中マネー
の増加、信用創造と同じ効果をもたらします。
まとめれば、日本の家計と米国の家計では、消費の姿勢が違います。
(実は、年俸、1年1回払いの賃金制度にすると、同じ金額でも心
理的に消費は抑制され貯蓄が増えます。週給では貯蓄は増加しにく
い)
▼一方で賃金は?
米国では、賃金5分位で下位80%を占めるワーカーの賃金は、物
価上昇分を控除した実質賃金では、1970年代のオイルショック
以降、増加は、ほとんどなかった。賃金の高騰は、上位20%のも
のだった。
この上位20%の賃金の増加がとまり、ITバブル崩壊に続く、大
規模なM&Aや合併で、ホワイトカラーのリストラに入ったのが0
0年です。この、ホワイトカラー層は、株投資、高額品消費、ファ
ッション需要、高額の住宅需要の主役だったのです。
米国は、消費面でも、格差の国です。所得階層で購買する店舗が違
う。
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■6.世界の生産物を吸収してきた米国
以上のような、
(1)消費の、ファイナンスの構造
(2)2001年の9回に及ぶ利下げ
(3)旺盛な消費意欲、の3者のミックスで、米国消費が支えられ
てきた。
この旺盛な米国消費が、アジア、日本の輸出と企業業績を支えてた
のです。
ここで世界経済の補完関係をまとめれば、以下になる。
▼資金面
(1)日本の世帯の高い貯蓄率
(2)中国の高い貯蓄率
(3)西欧が持っていた蓄積
(4)米国の世帯の貯蓄率のマイナス
この4つが、世界の資金の循環構造の基底でした。
さらに、特に1997年からの米国の株高は、
(1)米国の株に投資された資金が、米国株価の値上がりで膨らん
で、
(2)膨らんだ株が信用(担保)の増加になって、
(3)1998年からは日本、アジアへ向かっていた。
この構造が、世界の株の総時価$10兆(1150兆円)の価値の
蒸発で、今まさに崩れようとしているのです。
▼商品面
(1)アジアの新興工業国の輸出超過
(2)日本の輸出超過
(3)米国の輸入超過
こうした、世界の輸出入のバランスがあった。
米国の輸入超過(年$4000億:46兆円レベルの商品超過購買)
は、言うまでもなく、家計貯蓄をマイナスにまでして買い物をし
てきた米国家計がもたらしたものです。
ここが、9月11日以降、消費の態度を劇的に変えたのです。
▼政府消費や公共投資は?
米国では日本のような多額の公共投資はない。政府予算で言えば、
日本の公共投資に当たるものを探すと、軍事費です。
真珠湾奇襲に始まった太平洋戦争では、米国はGDPの半分を戦費
に使った。現在のレベルで言えば、500兆円、今の日本のGDP
に匹敵する巨額です。一方で、個人貯蓄率は、真珠湾以後25%に
急上昇した。これは、家計が消費を急減させたことを意味します。
この軍事費を急激に増加させることができるか?
総力戦であり、白兵戦であった太平洋戦争の時代、現代の米国の戦
争とは違います。
米国で予定されている戦費の増加(10月9日時点)は、
(1)テロ事件直後の$100億〜150億の緊急支出
(2)近々の、$330億、合計で$430億〜$480億(4.
9兆円〜5.5兆円)に過ぎません。
最大の5.5兆円としても、米国GDPの0.55%に過ぎないの
です。太平洋戦争とは、2桁も違います。
軍事費・戦費による景気浮揚は、もう時代遅れの意識なのです。
もともと準備していた、支出済みのハイテク兵器を使うだけです。
新たな支出にはならない。
▼以上をまとめれば
米国の消費減退を、補うことは、どこの国もできない。
戦費で補うことは、毛頭できない。
そうなると焦点は、どれくらいの消費減退があるか、ということで
す。
残念なことに、ここで過去の統計は役に立たない。
まさに、現在進行形だからです。
以下の、「現代消費の質」を考慮する必要がある。
(1)OECD諸国の現代消費は、基礎生活物資の部分をはるかに
超えた部分での消費が、すくなくとも30%、多ければ40%を占
める。
(2)旅行、観光、出張のサービス支出も、すぐ50%は減らせる。
絞れば、この2点です。
つまり、<例えれば高層消費>が、OECD諸国の消費なのです。
▼ショッピングセンターでは
9月11日、ショッピングセンターでは客が消えた。
これは、世界貿易センター崩落を見た、一時的な現象です。
その後4週経った。株価も若干は戻り、落ち着きが生じたかと思わ
れたが、直近ショッピングセンターの客数・売上は、首都圏やNY
では、30%〜40%減ったままです。
ここに、私は、大きな胎動を見るのです。
米国の小売総額400兆円が、20%は減るかも知れない。
年間80兆円、月6.7兆円です。
米国家庭は、過剰小消費だった消費への態度を変えつつあります。
2か月分以上は売れる、ギフトのクリスマス商戦は、30%くらい
の減少があるかもしれない。
ハワイ、ラスベガスの観光地は、ホテルも飛行機もガラガラです。
米国が急激な消費減少になれば、アジアの輸出産業、日本の家電、
自動車産業、IT産業には、リアルタイムで甚大な影響が及ぶ。
もともと弱っている、日本の産業、金融にその影響が波及すると、
日本ももう一段底になる。
今日、その危惧を感じたのです。
(それで、緊急号です)
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■7.米国が言う長期戦の意味
米国当局が言う「長期戦」とはなにか?
ここからは、推測になります。できれば、この推測が外れることを
願います。
(1)米国の最終的な狙いは、中東の石油である。
米国の埋蔵原油は、年間消費量の10年分しか残っていない。
(2)ただし、それはイスラム圏の世論が許さない。
(3)米国としては、危うい状態にある、ファハド王家と結ぶ米国
軍駐留を続ける、国際的な名目を得たい。
サウジは、王家転覆、民主革命前夜であると見ます。
(4)米国は、参戦の名目を得るため、イラクのフセインを、戦争
に引き出したい。
(5)国家的テロ集団と言えば、イスラエルと長期紛争状態にある
アラファトのパレスチナである。
以上のような、5項の変数からなる方程式を、どう解くか、でしょ
う。
もちろん、米国の狙い通りに事が運ぶわけではない。
(6)プーチンのロシアという、別の変数もある。
アフガン侵攻の現状では、プーチンは米国支持ですが、これがどう
変わるか予断を許さないのです。
(7)ここに、イスラム連帯の、原理主義が加わる。
パキスタンでの、クーデターの可能性を含むものです。
こうした意味の、上記7項を含む戦略なら、米国は、中東地域への
軍事関与を、長期で続けることになる。
そうしたことを想定するとき、米国消費の急減を契機にする、世界
恐慌は、いよいよ可能性が高くなるのです。
ここで、一旦配信します。
SCM第2部を含む続きは、明日の夜送ります。
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著者: 吉田繁治 systems research ltd.
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