『アメリカ帝国への報復』 チャルマーズ・ジョンソン

 ★阿修羅♪

[ フォローアップ ] [ ★阿修羅♪ ] [ ★阿修羅♪ 戦争・国際情勢3 ]

投稿者 dembo 日時 2001 年 10 月 09 日 17:02:58:

チャルマーズ・ジョンソン『アメリカ帝国への報復』

2000年7月10日 『東京人』書評欄掲載記事 

http://pweb.sophia.ac.jp/~k-inoguc/tokyojin.000710.html
------------------------------------------------------------------------

上智大学法学部教授 猪口邦子氏 
------------------------------------------------------------------------

元カルフォルニア大学バークリー校教授である筆者は、戦後日本の経済発展を通産省の巧妙な役 割を軸に説明し、MITI(通産省)の名を世界に知らせた研究者で、東アジア全般に関する地域 研究の権威。本書は戦後世界における米国の帝国主義的関与の行き過ぎを戒めているが、著者も、もともとはそ の帝国の尖兵として朝鮮戦争時代の在日米海軍に属し、軍務の傍ら地域研究の素地を獲得した。帝 国的広がりとの関連で地域研究者が育ち、またその綿密な情報量が帝国の管理に還元されるという パターンは、大英帝国から戦後の米国へと引き継がれたかのようであり、米政府の海外関与の強さと、 米国の地域研究の水準の高さは車の両輪を思わせる。

そのような構造のなかで人生を生き、還暦を 過ぎた筆者が痛烈に指摘するのは、米国のあまりにも傲慢で、短絡的で、強硬な海外関与の手法で あり、ゆえに米国はテロをはじめ、さまざまな報復と離反を招き、その反発は21世紀には深刻に はねかえって帝国の終焉を早めるであろうことである。 事例は枚挙にいとまがないが、古典的は方法であったCIA(中央情報機関)の政治工作といえば、一 九七三年、チリで、アジェンデ政権を崩壊に、大統領を自殺に追い込み、西側の鉱山利権を擁護す るピノチェット将軍に政権を奪取させたことなど、かなり昔のことを連想する。

しかし1980年代にも米国支援下で、グアテマラの軍事政権は急進化するマヤ人の村落400を 破壊し,20万人の農民を大量殺戮していた。このことは、グアテマラ人の夫を持つ米国人弁護士が その消息を調べていくうちに、夫を拷問にかけて殺害した現地の軍人が夫から得た情報についてCI Aから4万ドルの報酬を受けていたことをつきとめたことなどから明らかになり、昨年、クリントン 大統領は正式に詫びている。なぜそもそも農民は急進化したのか。かつてアイゼンハワー大統領期に 米政府は、穏健な農地改革と民主化を実行しようとした政権を右派に資金提供することで失脚させ て軍事政権を擁立した。これにより改革と救済への道を絶たれた農村がゲリラ化していくことにな り、昨年、国連の歴史解明委員会はグアテマラ内戦の起源を米国の政治工作とする報告書を発表した。

この種のことすべては、米政府への全般的な懐疑と非難を広げることになり、米国の国益擁護に逆 効果であると筆者は警鐘をならす。軍事的圧力や政治工作によってではなく、外交的手段の模範を 率先して示すことでのみ、米国は報復なき影響力を確保できるであろう。そして筆者がそのように 論じる背後には、ついに米国は政治工作などに補完してもらう必要のない水準の外交力を獲得した 自信がある。地域研究の大層に支えられた揺るぎない情報力が外交力が一体化する米国外交の最前 線を知る筆者ならではの識見である。 それでは、在日米軍や沖縄の状況はどう考えるべきか。詳細な基地関連犯罪などの記述により、筆 者は現状維持は米国というより米軍のみの利益であり、米国の真の国益は、東アジア安定への高度 な外交力を確保するためにも、日本が心情的に米国から離反していくことを防ぐことにこそあると 説く。

フォローアップ:



  拍手はせず、拍手一覧を見る


★登録無しでコメント可能。今すぐ反映 通常 |動画・ツイッター等 |htmltag可(熟練者向)
タグCheck |タグに'だけを使っている場合のcheck |checkしない)(各説明

←ペンネーム新規登録ならチェック)
↓ペンネーム(2023/11/26から必須)

↓パスワード(ペンネームに必須)

(ペンネームとパスワードは初回使用で記録、次回以降にチェック。パスワードはメモすべし。)
↓画像認証
( 上画像文字を入力)
ルール確認&失敗対策
画像の URL (任意):
投稿コメント全ログ  コメント即時配信  スレ建て依頼  削除コメント確認方法
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/  since 1995
 題名には必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
掲示板,MLを含むこのサイトすべての
一切の引用、転載、リンクを許可いたします。確認メールは不要です。
引用元リンクを表示してください。