投稿者 dembo 日時 2001 年 10 月 01 日 21:58:00:
防衛庁から聞こえる不満 《同時テロ 危機と日本》
http://miiref00.asahi.com/national/ny/sp/K2001092800552.html
「これは悪乗りだ」
21日朝、米海軍横須賀基地を出港した空母キティホークに、自衛艦旗をたなびかせた海上自衛隊の護衛艦が随伴した。その様子をテレビで見た自民党の幹事長経験者は、怒っていた。
集団的自衛権の行使につながりかねない「護衛」を、防衛庁は「調査・研究」活動として実施したという。このいかにも無理のある判断は、だれが、どう下したのか。
27日の記者会見で、「護衛」の経緯を問われた福田康夫官房長官は答えた。「少なくとも私の耳には入っていなかった」。官邸からの指示ではなかったというのだ。
●海幕の案通る
防衛庁設置法5条の「調査・研究」に基づき、情報収集名目で艦船を派遣する――。このアイデアは、早くから海上幕僚監部で練られていた。
空母にとって最も危険なのは、外洋に出るまで。昨年10月のイエメンでの米イージス艦爆破事件の後、テロに極端に敏感になっている米海軍に何らかの協力ができないか。日ごろ米海軍と接触するなかで、「平時には防護できないが、間接的に警戒監視を行うやり方はある」と伝えていた。
制服組同士の議論に基づいて作られた米軍支援メニューだった。「現行法の解釈でできる」という現場の判断を事務方も認めた。その結果、首相官邸のチェックなしに自衛隊の艦船による米空母「護衛」という初めての事態が起きた。
外務省でも、対米政策担当者たちは前にのめっていた。新法の流れが固まると、17日には外務省案を作り上げた。対米支援策は輸送業務など7項目。そのトップに据えられたのは、自衛隊による医療活動だった。
●「戦場に旗を」
原案には仕掛けがあった。7項目のうち、医療活動だけは戦闘地域でも行えるようになっている。自衛隊の医療活動は「戦闘が行われている場所では問題がある」というのが内閣法制局の立場。米軍の武力行使と一体化するとの論法だ。
「医療がなぜ武力行使になるのか。法制局との神学論争に終止符を打ち、戦場で日の丸と赤十字の旗をたなびかせたい」。それが外務省の本音だった。
しかし、古川貞二郎官房副長官らの判断もあって、今回の支援策から戦闘地域での医療活動は外された。「今は新法の早期成立の方が先だ」。外務省はとりあえず、矛を収めた。
ニューヨークなどのテロ被害者救助の資金に充てる支援基金に日本政府から1000万ドル(約12億円)を拠出することも、外務省主導で決められた。与党幹部らと調整した形跡はない。
とにかく、米国に「日本」を印象づけなくてはいけない。「日本の対応は遅い」と見られたら負けだ……。そんな気持ちが強まっていた。
安倍晋三官房副長官が政府の拠出方針を自民党の山崎拓幹事長に伝えたのは発表当日の19日夕。国会内の一室で説明している最中に、テレビが「拠出決定」のテロップを流した。山崎氏は言った。「これのことか」。安倍氏は苦笑いで答えた。
●悩む自衛隊員
行け行けどんどん、と話が進む一方で、海外派遣となれば実際に危険と隣り合わせになる防衛庁・自衛隊からは、不満や不安も漏れる。ある防衛庁の課長は「外務省はとにかく自衛隊を出したくて仕方がない。危ないところでもどこにでも行けという。『それなら、おまえが行けよ』と言いたくなる」と漏らす。
政府・自民党内に「自衛隊派遣論」が強まるなかで、ある自衛隊幹部は最近、民主党の鳩山由紀夫代表に、率直な思いを伝えた。
「明確な法的根拠もないまま、安全だから行けと言われても困ります。危険と向き合うのは我々です。自衛隊員はいま悩んでいます」