投稿者 dembo 日時 2001 年 9 月 27 日 23:16:42:
反米主義の理由を読み違えている米国 『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙 2001年4月1日
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http://www.billtotten.com/japanese/ow1/00470.html
From : ビル・トッテン
Subject : 反米主義の理由を読み違えている米国
Number : OW470
Date : 2001年5月24日
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今回は、米国が反米主義の理由を間違って解釈していると指摘する、パリ在住、ウィリアム・パフの記事をお送りします。これまで私がこのOur Worldシリーズでずっと指摘してきた米国の傲慢ぶりについて、パフが見事に描写しています。是非、お読み下さい。皆様からのご意見をお待ちしております。
(ビル・トッテン)
反米主義の理由を読み違えている米国
『インターナショナル・ヘラルド・トリビューン』紙
2001年4月1日
ウィリアム・パフ
世界における米国の立場を案じる多くの米国人は、海外における反米主義を気にするが、政界はしばしばその現象を読み違える。これが反米主義の本質と原因の誤解につながっている。ジャーナリズムにもその責任の一端がある。なぜなら、米国の新聞やテレビが扱う国際問題の取り上げ方は、ほとんどの場合、米国政府主導で決められるからである。つまり、質問される外交政策の疑問はワシントンの疑問であり、国内政治と政府の立場を反映したものになる。このため情報価値のない答えが提供されたり、求められていない、または、うれしくないニュースは取り上げられない。
米国政府が注意を払わない問題はあまり重要であるはずがないという考えから、政府の関心に直接関係しない事柄は無視される傾向にある。したがって、政府で議論されていることのほとんどは、実際にはあまり評価できない。
財務長官ポール・オニールの日本についての最近のコメントがその一例である。オニールは、「日本の現在の嘆かわしい経済指標を鑑みると、日本国民の生活水準を上げるために何かしなければならない」と述べた。しかし実際は、日本で問題なのはその生活水準が高すぎることにあり、それは米国平均よりも大幅に高く、日本の消費者は買いたいものがあまり見つからないことにある。このことが世界でもっとも豊かな国の1つである日本に、消費者支出の低迷と製造業の不振をもたらしている。
米国人ビジネスマンの典型であるオニールは、当然のように世界中の誰もが米国より低い生活水準にあると思っている。彼はわけもわからず話しているのだが、ビジネス経験のない官僚にも同じような傾向が見られる。欧州連合との対立については、役人たちの間でも、米国の強力な競合相手から保護するために欧州が域内産業に支給する政府補助金が原因だと説明されている。米国製品よりも欧州製品の方が優れているかもしれない、あるいは貿易問題になるのは、競争力の低下ゆえ米国産業界が保護を必要としているからだ、というような考え方が広く共有されることはない。
それでも3月末にボーイング社が発表した新規ビジネスを模索した本社移転は、1つには海外との競争が理由だった。同社は、ボーイング社の命運が欧州ライバルに対抗した民間航空機の販売にかかっていると、投資家やウォール街にもはや思わせたくなかったのだ。
反米主義が現れる原因は、客観的なものと主観的なものとに大別される。主観的な原因には、明確に分類できないが価値観の違いから派生する反米主義も含まれる。外国人が米国の大衆文化や娯楽の水準の低さや、ファストフード、食物の遺伝子操作、銃規制、死刑などを批判することは、つきつめると価値観の相違になる。そしてそれについては、ほとんど、あるいはまったくどうすることもできない。なぜなら他人がどう思おうと米国人は自分たちのやり方が正しいと思っているからだ。
逆に客観的な反米主義の原因は、米国の政治や行動に対して外国が、それが他の国の合法的な国益または国際的な行動規範を損なう、または国際的な無法状態を奨励すると見なすからである。例えば、ブッシュ政権が地球温暖化ガス排出削減に関する1997年の京都議定書を批准しないとの意向を表明したことに対して日欧が怒っているのは、地球温暖化を防止するという国際的な利益を米国が無視しているためである。人類全体の普遍的な問題に無関心な、産業界の選挙資金提供者に対する皮肉な返報だといえる。ブッシュ政権は、地球温暖化に対して、将来、新しいアプローチをとると約束しているが、今現在の激しい反米主義の高まりは避けられない。
国際刑事裁判所設立条約に対するブッシュ政権の不支持表明、さらに対人地雷全面禁止条約の批准拒否は、他の国家が受け入れようとする標準を拒否するものだと見られている。また米国は「ならず者」国家や、米国がテロリストだとする対象に、一方的に攻撃を行うことによって、国際間の無法状態を作り出している。
そして最後に、いわゆる覇権問題といえる原因もある。反米主義と見られる、いわゆる「米国への敵対」の中には、実際には、他の主要国家が米国の力に比べ自国の脆弱さを意識し、それに対して古典的な「力の均衡」が必要だと感じるために生じているものもある。
ニクソン・センターのピーター・ロドマンは昨夏、ワシントンの季刊誌『The National Interest』に、普遍的な道義に基づいて行動しているのだから、敵対する方が間違っているという米国の思い込みは間違っていると記している。
ヨーロッパ人、日本人、そして多くの第三世界の国々は、米国が力の均衡を崩して唯一の超大国となったことに対して、手放しで喜べないでいる。しかし、これはロドマンが記すように反米主義ではなく、相対的な力の差が影響している。歴史が証明するように、誰もが求めるのは力の均衡なのである。