投稿者 考える葦へ(転載) 日時 2001 年 9 月 26 日 13:37:48:
回答先: 全く同感です 投稿者 考える葦へ(転載) 日時 2001 年 9 月 26 日 13:34:33:
■2.根底の矛盾:富者と貧者の格差の拡大の怖さ
【根底の矛盾】
世界の根底では、90年代に大きな変化が起こっていた。
それが、<富と貧の格差拡大>です。
【富国と貧国、富者と貧者】
(1)グローバル経済、グローバル金融が、富国と貧国の差を年々
大きくしていた。(東アジアのみが、工業化でこれから脱出)
(2)同時に、富国の内部、貧国の内部でも、富者と貧者の格差が
大きくなっていた。勝ち組、負け組みと言われる現象です。
【富の集中の危険性】
富の一極集中は、経済全体にとっては、危険です。
(富者も過度の富の集中があると、最後はそれを失うのです)
理由を示します。
経済全体では、〔総所得=(商品+サービス)供給・生産量=(商
品+サービス)需要・消費量〕という恒等式がマクロ経済で「長期
的には」成立する。
▼需要不足(=供給超過)と、過剰投資と投機が同時に起こる
ここで富の集中(所得の集中=購買力の集中)が起こると、富を得
た人が、生産された商品とサービスの全量を購買できなくなる。
「一部の人がその年に消費できる量」には限りがあるからです。た
とえばビル・ゲーツは、個人所得分を、その年には使いきれない。
使いきれなければ、余る。ビル・ゲーツ一人だけではなく、人口の
5%が富者になり、他は所得が伸びない状況(米国)ではどうか?
富を得た人は、消費分の残りを、多額の金融資産や株としてもつこ
とになる。その金融資産や株が、持たざる人に万遍なく融資され、
投資されれば、余剰生産物も購買されて、経済は正常に回る。
しかし、そうはならない。
金融や投資の向かう先は、「富者間でのやりとり=金融資産の増加
=裏では負債の増加」になるのです。
そうなると、「実質」金利は下がり、一部への投資集中で、株は上
がる。上がれば、他国からのマネーも庶民マネー(米国の401K)
も「儲けの機会に遅れまい」とバンド・ワゴン効果でそこに殺到
する。
これが、金融資産と株をさらに膨らませる。バブル現象です。この
極点が、米国の99年末だった。直接金融の米国のバブルは、土地
が中心だった間接金融の日本とは異なり、株中心です。
【終着点】
こうした「自己強化=ポジティブ・フィードバック(正帰還):ジ
ョージ・ソロス」の行き着くところはどこか?
正帰還では、スピーカーから出た音が、マイクに拾われてアンプで
増幅され、最後は最大出力の大音響になる。
バブル現象では以下の「3色のモザイク経済」が同時に発生する。
(1)一般消費財は、供給過剰になるから、価格は上昇せず、むし
ろ実質的に下がる。
(2)一部の株と土地は、非合理に上がる。
(3)不要不急の贅沢品消費は、増える。
そうして最後は、はじける。ギャーという正帰還の大音響でアンプ
とスピーカーが負担に耐えきれず、壊れるのです。
はじけ方を激しくさせず、ソフトランディングさせるためのボリュ
ームの調整役が、FRBのグリーンスパンでした。過去形で言うの
は、彼の神通力は、99年で消えたからです。マネーの世界は、心
理です。心理では<神話>が効果をもつ。今のグリーンスパンは抜
け殻のただのオジサンです。
グリーンスパンは、日本のバブル崩壊の過程を研究し、米国のバブ
ルが崩壊に至らないように細心の注意を払ってマネー政策を運用し
ていた。名議長、影の大統領と言われた。マネーの祭祀、ローマ法
王でした。中央銀行総裁は、<シンボリックな幻想権力>を持つの
です。
速水総裁には、まるでありませんね。
▼米国経済の2001年秋という臨界点
米国経済の2001年は、そんな時期だった。国際金融は、秋に、
毎年調整をします。夏休みのリゾートで新年度戦略を立てるのです。
今回のことが起こった根底の矛盾は、<富の過度の集中>です。
適度な集中は成功を生み、成功への意欲を活性化させる。
【ブレーク的話題】
これがアメリカンドリームです。スポーツが人気を博するのは理由
がある。単純化したルールで、優劣を競い、勝者と敗者、富者と貧
者を峻別するからです。現実世界では、ルールは複雑で、ルール破
りがあってフラストレーションを感じている。だから、人為的な仮
想世界のスポーツに人気が出る。
ルールを自分で決めれば、ゴルフで72ホールを18打であがるこ
ともできる。打った後、手で持ってホールに入れればいい。それが、
なんでもありの、コロンブスの卵の現実世界です。やっても面白
くはないけれど。敢えて言うのは、これがビジネス発想の根源だか
らです。
(重要)ビジネスは、他の人が気がつかないプロセスのルールを変
えて、結果を得ることです。現実世界では、すべてのルールが変更
できる。
しかし過度の集中は、経済全体を破壊に向かわせるのです。
別の名詞では、この破壊現象を「恐慌」と呼んでいます。
米国と西側経済の2001年秋は、他国からマネーを集めた米国一
極集中の繁栄という世界経済の矛盾が、修正されようとする時期だ
った。
▼貧者からの破壊的攻撃
【貧者からの攻撃】
まさに経済原理での、収縮が起ころうとする9月11日、「貧者か
らの攻撃=テロ」が起こった。世界貿易センターが、グローバル経
済と国際金融の「メッカ」であったことを思い起こすべきです。
テロそのものは、世界各地で毎年一回、大きなものが起こっていた
のです。しかし、9月11日のものは、世界史的なものだった。私
は、不遜にも、世界貿易センターの崩壊をTVで見て瞬間に<神の
シナリオが、あまり露骨に、できすぎている・・・>と感じたので
す。
【過激派のアルカイダ】
テロは、理由と目的が何であれ、卑劣な犯罪です。それが多発して
いた背景には、富の一極集中と、貧困の蔓延(まんえん)があるの
です。ビンラディンが関与していると言われる大規模テロだけでも、
1993年から2000年まで、8回も起こっている。
彼が率いる「アルカイダ」の組織には5000人の軍事訓練を受け
た、死を神の国、アラーにいたると信仰する過激派がいる。彼らは
現世を仮のものと教えこまれている。テロを、神の命を受け、死ん
だ気でやって本当に死ぬ。(ビンラディン個人は、300億〜50
0億円の資金をもつとされる富者であり、過激派のスポンサーです)
(参考)
イスラム原理主義の過激派は、アルカイダとの間に「ユダヤと十字
軍打倒の国際イスラム戦線」を張る組織だけでも、5つもある。
・エジプトのイスラム集団(97年のルクソール乱射事件)
・同じくエジプトのアル・ジハード(81年のサダト大統領暗殺)
・カシミールのハラカット-ウル・アンサール
・パキスタンのジャミアトゥル・ウレマ・イ・パキスタン
・バングラデッシュにハラカト・ウル・ジハード
【希望のない国】
貧困だった中国・東南アジア・東欧は、今は工業化に希望を持って
いる。アフリカ・中東・中央アジアは、工業化はできす、貧困と悲
惨に喘いでいる。将来の希望はどこにあるのか。希望がなくても、
国民は平穏に暮らせ、政治的統治ができるのか。出口のない貧は、
やはり絶望ではないか。
【怨嗟(えんさ)が生むテロ】
テロは、貧困の側からの富者への怨嗟(えんさ)から生まれます。
一時的にはテロを武力・軍事で制圧できても、原因がなくならなけ
れば、入れ替わりで続くのです。
【国家単位では】
19世紀の原始的資本主義が、資本家に富を集中させ、大多数を貧
困に追いやって、繰り返し恐慌を起こすことから、二つの思潮が生
まれた。人類の知恵です。(いまは恐慌は、波が穏やかになって、
<ビジネスサイクル>といわれます)
そのひとつがマルクス主義です。もう一つが修正資本主義(混合経
済・新古典派総合)です。西側世界は、修正資本主義の福祉国家に
よって、国内の貧困や失業は避けてきた。それによって、経済と国
家、人心の安定を保ったのです。
【西側の外部世界】
ところが、西側の外部世界では、国家単位での貧困が続いていた。
特に、中東、中央アジア、およびアフリカではこれが激しい。
いずれも、絶え間ないテロ・紛争・殺人・略奪・レイプ・餓死・病
が日常化している地域です。
【問題の本質を見据えてください】
中東、中央アジア問題の本質は、貧困です。宗教的なものは、主義
を正当化するための支えです。豊かになる方向が見えれば、宗教的
な信条は深く残っても、暴力を使い他を攻撃することはない。
エラスムスが説いた<宗教的寛容>に向かうのです。
西側世界が、「テロ組織への新しい戦争」の終結点で、そうした方
向を準備できるかどうか。迂遠(うえん)なようでも、テロ対策は、
そこにしかない。これを、明瞭に記憶しておいてください。
中東、中央アジア、アフリカの人々の生活を改善する方向を設定し
なければ、<西側世界は、大規模テロの恐怖を内在させながら、生
きる>ことになる。一方、改善の方向を設定することは、絶望を希
望に向かわせる。
▼大量殺戮兵器の拡散という新事態
ソ連崩壊後、管理のずさんさで核兵器の拡散が起こり、兵器の密売
があり、国際条約では禁止している生物兵器の開発・備蓄が行われ
ていることは知られている。ソ連軍幹部が、給与遅配で生活に困っ
て核と兵器を、無差別に売ったのです。
貧困と怨嗟、絶望を放置すれば、世界は、テロの不安から逃れるこ
とはできない。
見えない敵、テロ集団の入国は、国境で阻止はできない。外科手術
(戦争)で除去はできない。内科治療が必要なのです。
ピッツバーグのボーイング機墜落(撃墜?)では、実は原発が狙わ
れていたとの報道もある。核兵器を持たなくても、自爆をいとわな
いテロリストがいれば、原発が核兵器になるのがテロの怖さです。
事実上、今、先進国世界に安全な場所はないのです。日本人は、そ
のことを認識すべきです。今回の事件はアメリカのことだけではな
い。
【新しい戦争と防衛】
国家単位での紛争解決や、戦争を前提としてきた従来の軍備では、
街に忍び込み普通の生活をする、過激派テロ集団からの攻撃を防ぐ
ことはできない。大規模な破壊が起こった後に、犯人を処罰するだ
けです。
【危機不感症の日本人】
日本では、オーム真理教による地下鉄サリン事件という「新しい」
テロの攻撃を受けつつも、それを風俗的なものとして流し、市民生
活の内部の危機と捉える姿勢はなかった。本能を失った、知的驕慢
です。
サリンが実際に使われたことに、世界は驚愕したのに。
日本では危機の意識が、欠落していた。米国が、地下鉄サリン事件
のあと、サリン対策を準備した対応とは違いがある。(オーム真理
教問題は、教義上は、貧困からではなく歪んだ豊かさへの疑問から
来ていますが)
ロンドンのシティの金融街、パリ、フランフルトで、恐怖に駆られ
ている人が多数います。比較して東京の無防備さ、人々の危機への
不感症は、対策のなさはいかんともし難い。国会論議ののどかさ・
・・
▼アラブの閉塞を象徴する、サウジの貧困化
われわれは、アラブ諸国も、12億人(世界人口の19%)が信仰
するイスラム教も知らない。イスラム原理主義が、何であるかにつ
いても、無知です。
イスラム教の過激派、原理主義は12億人の1%、1200万人は
いると言われます。(イスラムの大多数は穏健派です)
以下、アラブ諸国では、最も豊かなサウジの状況を、簡単にまとめ
ます。
これで、アラブの90年代の状況と、人のこころがわかるはずです。
【豊かさからの転落】
(1)1973年と1980年の2回の原油高騰で、サウジ(王家)
は富者になり、世界の不動産・債権を買い占めた。NYのプラザ
ホテルはアラブが所有しています。
石油収入で福祉を充実させ、国は富んだ。サウジは日本を目標にし
た。
(1980年の一人当たりGDPは$1.5万)
(2)1986年から、原油価格が暴落した。
財政は大幅赤字になり、福祉はカットせざるを得ない。
ところが人口は、1983年の1千万にから98年には2千万人を
突破、2010年には3千万人になる。現在、失業率は20%を超
えている。一人当たりGDPは、7千ドルに低下した。
日本で、個人所得が今の半分になれば、社会はどうなるでしょう。
容易にわかります。
【暴動の閾値】
失業率の20%という数字は、社会不安や暴動が起こる閾(しきい)
値です。紛争だらけで、カントリーリスクが高いため、中国のよ
うな、外資の投資もない。原油生産と精製以外の産業はない。
90年代になって、イスラム原理主義の活動が激しくなった背景に
は、アラブ諸国の貧国化がある。アフリカとは違い、過去の豊かさ
を知っているだけに、「西側諸国、その代表の米国」から不当な搾
取を受けているとの意識が強くなるのです。
日本も、中国の工業化で給料が半分になって、失業率が20%なら、
どんなことが起こるか、想像できます。強盗、略奪、暴動そして
テロです。(東南アジアの97年に起こり、ロシアの90年に起こ
った)
【過激派】
そうして、グローバル資本主義に反対する、日本主義=国粋主義の
過激派が、活躍することになる。
これが、アラブの国粋主義であるイスラム原理主義です。
宗教的な主義には妥協点はない。しかし、神もマネーには妥協する。
昔から、マネーを最もほしがるのが神でしたね。他人には喜捨と
かお布施と言いながら、それをかき集めるのが祭司(笑)
【最終ソリューション】
最終的に、どんな解決法があるのか。
西側の豊かさの必要コストとして原油価格を上げ、徹底した経済援
助を行うことでしょう。それによって、過激派の活動は、抑えられ
ます。豊かさは、穏健派を作るのです。
日本が活躍する場面は、そこです。唯一と言ってよい。
アラブは、キリスト教でない日本人に親近感を持っている。
繰り返しますが、迂遠(うえん)でも、この方法しかない。中国が
軍事的な過激派でなくなるためにも、北朝鮮、ロシアでも同じです。
多くの人を貧困のなかに、孤立させてはいけない。
東南アジアの工業化は、モノづくりの技術で日本人が行ったのです。
日本人は、そうした、パワーを持つ。国内は若い人に任せ、団塊の
世代が、声をあげて、世界の工業化に活躍すべきでしょう。国内で
は、あまっているのですから。
もし、それができなければ、西側世界は、内在する大規模テロの恐
怖と暮らすことになる。今後は、核と生物兵器が予想される。テロ
も、同じ方法はとらないのです。
米国政府、ブッシュ大統領とそのスタッフが、早く以上のことに気
がつくことを願います。経済発展がいつも妙薬です。テロは軍で抑
えることはできないのです。日本人が貢献できる部分は大きいので
す。
NYでは、テロに負けず「日常生活と、仕事を取り戻そう」との機運
が強くなりつつあるようです。衝撃に負けることは、テロリストに
負けること。癌をかかえ、適切な危機処理をするジュリアーニ市長、
プロファッショナルの倫理をもち、自己犠牲をいとわない消防士
は、街の英雄になった。
「自分が死んだ後、子供たちが、父はこんな人だったと誇りに思え
る仕事をしたい」Iproud of you.・・・人間がもつ言葉の中で、も
っとも輝やく価値に思えます。
600万トンと言われる瓦礫と戦いながら、多くの人が、こうした
言葉をつぶやいているはずです。
人々は、信じるに足ります。不信には不信を、信には信を返す、そ
う思います。最初に信を投げるほうが、最後は勝ちです。CRM経
営、リーダシップ経営の精神の、精華の部分です。
※本マガジンの、「購読サンプル」としての、友人・知人・同僚・
部下・上司・取引先への転送は自由におこなってください。
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2001年9月25日:経営分野
著者:Systems Research Ltd. chief consultant吉田繁治
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