投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 24 日 17:04:32:
(1)第2派テロの焦点
ブッシュ政権は報復攻撃の準備を着々と進めているが、テロリストたちがその攻撃をじっと待っているとは限らない。むしろ、先手を打ってテロの第2波を仕掛けてくると考える方が自然だ。
国際関係論、比較防衛学が専門の杉山徹宗・明海大学教授は、ビンラディン氏をかくまっているとされるイスラム組織、タリバンの強硬姿勢に注目すべきだという。
「タリバンに強い影響力を持つパキスタンは、すでにアメリカへの協力を決めているが、タリバンが仮にも核保有国である同国に堂々と逆らうには、それなりの理由と自信があると見なければならない。
パキスタンの核に対抗し得る“何か”があるとすれば、考えておかなければならないのが、旧ソ連が製造していた持ち運び用の小型核爆弾だ。97年にロシアの元軍人がアメリカ人記者団に対し、その存在と、84発が行方不明であることを明かし、アメリカで大問題になったものだが、その後、米議会の調査などを経て、やはり100発近くが紛失している疑いが強いことがわかっている」
97年10月、米下院の国家安全保障委員会は、ロシアの高名な科学者で安全保障会議のメンバーでもあったアレクセイ・ヤブロコフ氏を証人として招き、同氏は小型核爆弾の詳細を語っている。
それによると、爆弾は旧ソ連が特殊部隊のテロ活動のために開発したもので、アタッシュケース型をしており、一人で携帯できる。起爆準備も30分ほどでできるようになっていて、1個の威力は≪広島級≫という恐るべき兵器だ。
杉山氏は、その流通ルートにイスラム過激派が関係していた可能性を危惧している。
「中東では闇の武器市場が発達している。通常は、各国の軍隊が機関銃や弾丸、バズーカ砲などを横流しする場だが、このルートにはさらに裏があり、テロリストなどは特別に手に入れたい武器を武器商人に依頼し、独自に入手している。また、武器商人たちは、手に入りにくい武器ほど資金力があり、かつアメリカと対決しているようなテロ組織に売りたい。小型核がビンラディン側に渡っていても何の不思議もない」
それが現実なら、貿易センタービルどころか、マンハッタン全体を瓦礫の山と化すことも不可能ではない。さらにいえば、第2波の攻撃対象はアメリカとは限らない。
(2)アメリカは既にサリン対策に動く
日本の警備・公安当局も、当然、国内での報復テロの可能性を考えている。
「イスラム過激派と関係があるとして以前からマークしていた人物には、すでに24時間の監視態勢を敷いている。不安は否定できないが、日本ではアラブ系や中央アジア系の人物は目立つから、警戒が強まる中でのハイジャックや、“凶器”が隠しにくい爆弾テロのような手法は取りにくいと見ている。むしろ、自爆テロを前提とするなら、オウムがやったような生物・化学兵器の方が怖い」(警視庁幹部)
アタッシュケース核は確かに最悪の被害をもたらすが、仮にそれが国内に持ち込まれていたとしても、イスラム過激派メンバーが持ち歩いていれば目立つには違いない。
が、もし手にしているのが無色透明の液体が入ったペットボトルだったとしたらどうだろうか。オウムの地下鉄サリン事件では、犯人たちは自分に被害が及ぶことを避けようと、サリンの入った容器に傘で穴を開けて地下鉄から逃げた。持ち込まれたサリンは車両内の全員を殺せるほどの量があったが、拡散が中途半端に終わったために、被害は最小限にとどまった。
それに対して、もし、死を厭わないテロリストが地下鉄や満員のスタジアムなどでサリンを撒き散らせば、ペットボトル程度の量で数千人を殺害することも可能だとする専門家の指摘もある。
何より、生物・化学兵器は“貧者の核兵器”といわれるように、製造が安価な上に容易で、オウム事件当時は、サリン製造には高い技術力が必要とする報道もあったが、実際には学生が研究室で簡単に作れる程度のものだ。中東では、イラン・イラク戦争でマスタードガスや青酸ガスが使われたし、サリンも、国連の調査でイラクが保有していることが確認されている。
元防衛庁事務官の石井健二氏は、生物・化学兵器の脅威をこう語る。
「それらの兵器は、コストがかからないことはもちろんだが、小型の容器で簡単に運搬できる点が怖い。今回の事件のテロリストたちは、市井に溶け込んで任務遂行の技術を習得していた。すでに世界各地に同じように潜伏している仲間がいても不思議はないのだから、凶器を発見することより、それが使われた際の対処方法を考えておく方が現実的な対応策だろう」
ちなみに、日本でオウム事件が起きた直後に、アメリカでは主要都市の消防士に対して、サリンの処理方法を教育し、解毒剤を常備させるなどの対応策を取った。が、日本ではそこまでの対策はいまだにない。テロリストにとってどちらが狙いやすいかはいうまでもないだろう。