投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 23 日 12:29:56:
【ワシントン22日=坂元隆】
反テロ軍事行動で国際的な協力を求めている米国が、1980年のテヘラン米大使館占拠・人質事件以来断交しているイランに接近する姿勢を見せ始めた。背景には、アフガニスタンと長い国境線を接するイランの戦略的重要性から、同国がアフガン実効支配勢力タリバンに対する包囲網形成に欠かせない存在との判断がある。
フライシャー米大統領補佐官は21日、同時多発テロに関連して、先にイラン政府が米政府に送った弔意を表する書簡に対し、返信を送ったことを明らかにした。パウエル国務長官は「テロとの戦いに向けた協力のためならどのような機会でも捜し求めたい」と述べるなど、第三者を通じてイラン側と接触を図っていることを認めた。
また、来週にはストロー英外相がイランを訪問する予定で、20日の米英首脳会談などを踏まえ、米国主導の対テロ行動への協力をイラン政府に促すものとみられる。
イランは、米同時多発テロが発生した際、ハタミ大統領がテロを厳しく非難。さらに、タリバン勢力とは1998年のイラン外交官虐殺事件で武力衝突直前にまで発展して以来、敵対関係が続いている。その意味で、今回のテロ事件は、米・イラン両国関係に変化をもたらす機会を与えたことは間違いない。
米国はこれまで、イランを「テロ支援国家」に指定して経済制裁を実施、孤立化政策をとってきた。しかし、97年に改革路線を提唱するハタミ政権が誕生したのを受け、米国では、対イラク戦略や対米聖戦を主張するイスラム原理主義指導者ウサマ・ビンラーディンを保護するタリバンへの戦略再構築の意味もあり、イランの戦略的価値を再認識すべきだとの意見も台頭。2000年3月、当時のオルブライト国務長官が絨毯など一部品目の禁輸解除を発表、同時に過去の米国の対イラン政策に問題があったことを認めるなど、若干の軌道修正を見せてはいた。
だが、パレスチナ騒乱が激化するなかで、ブッシュ政権は今年8月、イランに対する単独制裁(イラン・リビア制裁強化法)の延長を決定、米・イラン関係改善の糸口が見つからない状況が続いていた。
今回の同時多発テロでのイラン側との折衝によっては、米国がイランの戦略的価値を積極的に利用する方向へと政策転換、これまでのこう着状況に何らかの変化が出てくることも予想される。
ただ、両国の関係改善がどの程度進展するのかは依然不透明だ。米国は、イランが対イスラエル武装闘争を続けるレバノンのシーア派組織「ヒズボラ」などを支援していると見ており、パウエル長官も「こちらのテロは支援し、あちらのテロは阻止するというわけにはいかない」として、真の関係改善には、イラン自身のテロ支援を完全に停止することが必要としている。
(9月23日01:24)