投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 22 日 22:33:28:
【カイロ小倉孝保】
アラブ首長国連邦(UAE)のタリバン政権との断交は、タリバンがウサマ・ビンラディン氏を保護し続けることへのUAE、サウジアラビアからの「拒否メッセージ」でもある。もし、イスラムの盟主を自任するサウジまでがタリバンを捨てれば、イスラム社会の混乱は必至で、サウジはそうした事態に陥る前に、UAEの決定を通してタリバンに最後の圧力をかける狙いがある。
UAEとサウジは97年初め、タリバン政権を承認。タリバンが両国と同じイスラム教スンニ派教徒の集団であり、イスラム教シーア派のイランが、反タリバン勢力(北部同盟)を支援していた事情が背景にあった。サウジは国内シーア派の反政府運動に苦しめられていたうえ、UAEはペルシャ湾のアブムサ島などの領有権をめぐりイランと対立。両国にとってイランは安全保障上の潜在的脅威になっていた。
今回の同時テロでタリバンは21日、ビンラディン氏の身柄の米国への引渡しを拒否。サウジをはじめイスラム諸国には、ビンラディンの保護にこだわるあまり、テロを支援しているという国際社会の批判がタリバン政権や、タリバンと外交関係を持つUAEやサウジにも向くとの懸念があった。
そうした事態回避のためにも、サウジやUAEはタリバンに対し、ビンラディン氏の身柄を引き渡すよう圧力をかけ、同時に西側諸国に対して、イスラム社会としてタリバンに圧力をかけ続けている姿勢を示す必要があった。今回のUAEの決定が、タリバンのビンラディン氏身柄引渡し拒否の決定直後に出てきたことでも、そうしたメッセージが含まれていることは明らかだ。
今後、サウジ自身がタリバンに対してどう出るかが焦点になる。メッカ、メディナのイスラム2大聖地を抱えるサウジがタリバンと断交すれば、タリバン政権だけでなくアラブ諸国内のイスラム教徒は「アラブ諸国政府はイスラム教徒を裏切り、欧米社会にすり寄った」と反発する事態もありえる。
その場合、対立の構図がテロ組織対国際社会からアラブ各国政府対イスラム教徒に変化してしまう危険がある。今回の断交は、そうしたアラブ・イスラム社会内の混乱を避けるためにサウジとUAEが先手を打ったものと考えられる。
[毎日新聞9月22日] ( 2001-09-22-21:40 )