投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 9 月 19 日 14:46:38:
【カイロ小倉孝保】
エジプトのムバラク大統領政治顧問、ウサマ・エルバズ氏(70)は18日、カイロで毎日新聞と会見し、同時多発テロを受けた米国の軍事作戦について「確実な証拠に基づき犯人を特定することが前提になるべきだ」と性急な報復に懸念を表明した。米政府が事件の最重要容疑者とみなすウサマ・ビンラディン氏を標的に報復準備を急いでいることに対し、親米国である「アラブの盟主」がクギを刺したもので、他のアラブ諸国の動向にも影響を及ぼしそうだ。
同顧問は中東和平交渉など外交政策でムバラク大統領が最も信頼する相談役。会見で顧問は「米国は報復攻撃する権利がある」と攻撃自体には反対しない姿勢を示しながらも、「犯人に間違いないと一般市民でも納得できる証拠を示すことが不可欠だ」と指摘した。
また、顧問は軍事報復の行方について「米国は英国に他の欧州の同盟国を加えた布陣を編成するだろう」とした上で、湾岸戦争(91年)当時、対イラク攻撃でエジプトを含めた多数のアラブ諸国が多国籍軍に参戦した経過に触れ、「あの当時は『反イラク』の団結を示すため多国籍軍に加わる必要があったが、今回は事情が違う」と米国からの軍事協力要請に協力しない姿勢を鮮明にした。
また、テロ対策に関しては「アラブ諸国はイスラム過激派のテロの被害に遭った経験から、徹底した取り締まりを行った。だが、欧州は人権の問題から、取り締まりが緩くアラブのイスラム過激派が欧州に逃げることもできた」と指摘、国際社会の総力を挙げたテロ撲滅に向けた国際会議の開催を提言した。
米国は98年、ケニア、タンザニアで起きた米大使館同時爆破テロを受けスーダン、アフガニスタンを報復攻撃した。その際、スーダンの標的とされた工場で化学兵器を製造していたとする根拠が後になって希薄だったことが判明。95年、米オクラホマ州で起きた連邦政府ビル爆破テロでも、当初はイスラム過激派との見方が濃厚だったが、結果的に白人右翼武装組織メンバーの犯行だったこともある。
エルバズ顧問の一連の発言の背景には、これら事件捜査で明らかになった米社会に潜在するイスラム教徒への偏見から、今回の事件でも米国が十分な証拠を示さずビンラディン氏や同氏を庇護(ひご)するタリバン政権を報復攻撃すればアラブ諸国のイスラム教徒の強い反発を呼ぶとの懸念があるとみられる。
エルバズ氏は77年の故サダト前大統領のエルサレム訪問に同行するなど対イスラエル平和条約締結にも深く関与。「エジプトのキッシンジャー」と呼ばれる。
[毎日新聞9月19日] ( 2001-09-19-12:30 )