投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2001 年 8 月 29 日 21:09:27:
【エルサレム海保真人】
イスラエル軍によるヨルダン川西岸のパレスチナ自治区ベイト・ジャラへの侵攻は、パレスチナ側の猛反発を呼び、28日夜から29日にかけ、衝突は西岸、ガザの5カ所以上に拡大した。イスラエル政府はパレスチナ側からの銃撃が止むまでベイト・ジャラ侵攻を堅持する構えだ。イスラエルのシャロン政権はどこまで強硬策を進めるのか。外交による解決の展望はいっさい開けず、中東を暗雲が覆っている。
米英など国際社会からの非難にも関わらず、イスラエルのシャロン首相とベンエリエゼル国防相は28日夜、ベイト・ジャラの侵攻継続を決定した。地元メディアは、ペレス外相は同夜、パレスチナ自治政府のアラファト議長に電話し、「銃撃を止めてほしい」と要請したが、議長は「軍が撤退するのが先だ」と受け付けなかったと伝えた。侵攻後は逆に迫撃砲などの反撃を招く結果となり、銃撃戦はベイト・ジャラに隣接するベツレヘムのほか、西岸トゥルカルム、カルキリヤ、ガザ各地で再燃した。
アラファト議長が来月、シリアを訪問するとの発表の翌日に行われたパレスチナ解放人民戦線(PFLP)のムスタファ議長の暗殺は、反イスラエルで共同歩調を取るパレスチナ、シリアへの強い警告の意味を込めたものとみられる。イディオト紙の緊急世論調査によれば、27日のムスタファ議長の暗殺を支持したのは70%で、今回の侵攻を支持する人は75%、依然、強硬路線を支持する傾向が目立った。
一方、ムスタファ議長の28日の葬儀には、自治政府高官のほか、パレスチナ解放機構(PLO)主流派ファタハの武装集団「タンジーム」、精神的指導者、ヤシン師が率いるイスラム原理主義組織「ハマス」の活動家らが大勢出席した。ムスタファ氏の暗殺は、パレスチナ指導部とパレスチナ急進派グループの横の連帯を確実に強めているとみられる。
シャロン首相に自治政府の幹部をまで暗殺する意思はない。ただ首相は、アラファト自治政府議長が和平交渉の再開をにらみ優位な立場に立とうと、わざと停戦を避けている、と強く疑っている。首相は「戦火で交渉は行わない」と国民に宣言した手前、議長に可能な限り圧力を加え、テロを抑制させ、交渉前の停戦を実現したい思惑だ。
だが、力を誇示するだけの諸策は行き詰まりを見せている。今週初めに予定されたアラファト議長とペレス・イスラエル外相の会談も延期状態だ。イスラエルが唯一頭の上がらない米の積極介入なしに事態の打開は期待できない。
[毎日新聞8月29日] ( 2001-08-29-20:31 )