<学習内容の先送りと削減の具体的内容>
算数の場合
算数の小学校の授業時間が1011時間から869時間へと14%削減されるのに対し、学習内容の削減は、それよりはるかに大きく、3割以上にも及びます。他の教科に比べ、算数の「軽減」「削減」「先送り」ぶりが目に付きます。
<数と計算>
まず、けた数の多い整数や少数の計算が全学年に渡って「軽減」されています。整数の計算では、驚くことに4けたのたし算、引き算が削除され、小数の計算では、小数第一位どうしのものまでしか扱われません。また、分数の計算では、帯分数の計算が全面的に削除されています。ですから、整数、小数、分数が混ざった計算は当然できないことになります。そこでこれも削除されています。
(削除例)
728×23 、 5000―1200 、 3.14×3 、
あるレベルの計算力を身につけることは、算数が「わかる」ようになるためにも必要なことです。しかし、新指導要領の下では計算が少しでも複雑になる例を全く与えていません。これでは、円周率を3.14とした計算もできないし、百分率も求められません。日常生活におけるちょっとした買い物の計算もおぼつかなくなるでしょう。
<量と測定・図形>
1年生の算数では、現行は長さ、広さ、かさの比較を習得していますが、今後は長さだけになってしまいます。5年では、台形や多角形の面積が削除され、6年では柱体、錐体の体積、表面積が削除され、図形の合同や対称は中学校へ先送りされます。
(削除例)
四角柱、円柱、円錐の体積、表面積
<数量関係>
3、4年で学習してきた「□△を使った式」が削除され、5年でやってきた「文字を用いた式」が中学へ先送りされています。これでは、小学校で数字を文字に置き換えることの意味を考える機会が無いまま、中学校で初めて文字式に接することになります。
(削除例)
1000−□=300
また、度数分布表は削除され、反比例や場合の数も小学校から中学校へ先送りされます。「以上」「未満」などの用語など資料のさまざまな表現方法を高校以降へ先送りしてしまうことによる影響は算数、数学だけに留まらず、社会や理科などの他の教科、あるいは、日常生活における情報処理能力が大きく低下してしまうことになるでしょう。
(先送り例)
場合の数・・・A、B、C、Dの2つ選ぶ組み合わせは?
(A、B)(A、C)(A、D)(B、C)(B、D)(C、D)