地球の体積の約半分を占める「下部マントル」(地下660〜2900キロ)に、海水の5倍に上る大量の水が含まれている可能性があることを、東京工業大の大学院生、村上元彦さん(24)=地球惑星科学専攻=と広瀬敬・助教授らのグループが世界で初めて実験で証明した。8日付の米科学誌「サイエンス」に発表した。謎の多い地球内部の構造を解き明かし、地球の進化を探る上で興味深いヒントになりそうだ。
地球は約46億年前、隕石(いんせき)の集まりが冷えてできたとされる。隕石は質量の2%の水分を含んでいるのに、現在地表にある水を合わせても地球の質量の0・02%にしかならない。99%以上の水がすべて蒸発したとは考えにくく、水のありかが関心の的だった。
村上さんらは、セ氏1600度、25万気圧の高温・高圧環境をつくり出せる装置を使って、下部マントルと同じ結晶構造を持つ3種類の鉱物を人工的に合成することに成功。その鉱物の水分量を特殊な分析計で測った。
その結果、下部マントルの8割を占めるマグネシウムペロブスカイトには0・2%の水が含まれ、他の2種類の含水率も0・2〜0・4%だった。同じ割合の水が含まれるとすると、下部マントル中の水分は地球上の海水の5倍に上った。
地下400キロより浅い部分の「上部マントル」は、水を含まない石でできていることが分かっており、下部マントルが「消えた水」の主な貯蔵場所になっていると推測された。
また、地上の海水は約7億5000万年前から減り続け、約10億年後にはなくなるという説もある。研究グループは、地下に沈み込んでいくプレート(岩板)が海水を地球の内部に持ち込み、下部マントルに貯蔵されていると推定した。
広瀬助教授は「地球の進化にかかわる興味深い結果が出た。火山活動やプレート運動をつかさどるマントル対流に、この水分が影響している可能性が高い」と話している。【元村有希子】