数週間から3カ月にもわたって海面の高さが上がる「異常潮位」が近年、日本沿岸で相次いでいる。99年に続き、昨年は2回発生し、広島県や沖縄県で冠水の被害が出た。気象庁は「詳しい原因や今後の発生の見通しはわからない」という。港湾施設を抱える国土交通省は3月にも検討委員会を立ち上げ、実態調査に乗り出す。
気象庁によると、那覇市では昨年7月から9月にかけて、通常の潮位より高い状態が続き、最大で34センチ高くなった。満潮時には一部の道路が冠水する被害が出た。同市防災係の担当者は「道路は20回ほど水につかった。那覇市で異常潮位で被害が出たのは初めてのようだ」という。
同庁によると、沖縄周辺ではこの時期、直径約400キロの中規模の渦が太平洋の東海上から1カ月に約150キロの速さで西に移動していた。渦の中心付近は水温が2度ほど高く、海面がもり上がり周囲の潮位を押し上げた。この渦がなぜ起きたのかについて同庁は「わからない」という。
広島県宮島町の厳島神社では昨年9月、回廊が水につかり、参拝が何度か中止された。同庁によると、9月から10月にかけて東海地方から九州にかけての太平洋沿岸の潮位が平常値より高くなり、静岡県舞阪町で38センチ、名古屋市で35センチ、神戸市で33センチ高くなった。
異常潮位は最近では99年10月〜11月にかけて東海地方から紀伊半島の沿岸で発生し、最大45センチ潮位が上昇。三重県鳥羽市で冠水の被害が出た。90年代はそれ以前はなく、89年に西日本の太平洋側で約3週間観測されて以来だった。
同庁は「はっきりとした原因はわからないが、気象や海洋のいろんな要素が絡み合っているのではないか」とみている。
異常潮位の時に、台風や低気圧が通過すると高潮が発生し、潮位はさらに上がる。昨年8月、鹿児島県名瀬市では、30センチほど潮位が高くなっていたところへ、台風11号が接近。大潮の満潮が重なり民家が床下浸水した。
異常潮位の被害が続いたことを受けて国土交通省は、3月中にも検討委員会を発足させる。特定の期間だけ発生する現象のため、地球温暖化による海面上昇とは分けて考えている。(17:25)