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http://www.mri.co.jp/TODAY/SAITOH/2002/0610SH.html
火星の水
コメンテータ
安全科学研究本部 主席研究員 斎藤 寛
5月末、NASAの火星探査機マーズオデッセイの研究チームは2月から始めたマッピング観測に基づいて火星地表近くに大量の水が存在すると発表した(*1)。従来からグローバルサーベイヤーが撮影した火星の地形などは水の存在を示唆するものとして注目されていたが、オデッセイは表土に含まれる元素を推定するため、火星に降りそそぐ宇宙線が深さ1mくらいまでの表土に衝突して発生する中性子とγ線を周回軌道から観測している。
水素原子の希少な表土上層が水素の豊富な下層を覆っているという2層モデルを仮定して観測データを解析すると、南緯60度から南極までの広範な地域にわたり、下層には重量比で35%(±15%)の水の存在に相当する豊富な水素が含まれていると結論できる。惑星化学上からはこの地域では氷状態の水が安定であると考えられており、豊富な水素は水の存在として解釈するのが妥当だという。今後継続する観測で火星北半球が夏に近づき、分析の邪魔をするドライアイスの極冠が北極まで退いていけば北半球でも同様の分析ができると期待される。
地球の月でもルナープロスペクター探査機による中性子観測で両極に水の存在が推定されている。確証を得るため探査機そのものを月面南極に墜落させたが衝突で水蒸気は検出できなかった。低コストを誇った探査機ではあったが、水のためにはこのくらいのことはするのである。今回の観測で火星に水のレザボワがあると確定したとはいえないにしても、火星探査のプライオリティーが上がったことは間違いない。
*1:http://grs.lpl.arizona.edu/results/presscon2/#images