米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービスが日本国債の格付けを上から4番目の「Aa3」から格下げ方向で見直すと発表した。格下げされれば、上から5番目の「A1」以下になり先進7カ国(G7)で単独の最低となる。長期金利の指標である10年国債の利回りは上昇(価格下落)し、今後、さらに0・1〜0・2%上昇するとの見方が広がっている。「巨額の国債を保有する銀行財務へのダメージが大きい」などと危ぐする声も出ている。
ムーディーズは、「日本政府が直面する最大の問題はデフレで、政府債務はデフレで深刻化し、信用リスクが高まっている」と指摘。日本経済は基本的な強さを持っているため、債務を維持することは可能とする一方で、「財政と景気の悪化が続けば、格付け変更ペースの加速もありうる」と強い警告を発している。
前回の格下げから2カ月しか経過しておらず、分析もほぼ似ていることから、「1格付け会社の判断に過ぎないし、きっちり分析したのだろうか」(日銀筋)と疑問の声も強い。しかし、この日、長期金利の指標となる10年物国債の利回りは、格下げの見直し発表で、一時、前日終値比を0・05%上回る1・515%まで上昇。今後についても1・6〜1・7%まで上昇するとの見方が強い。
国債の95%は国内勢が購入しており、「金利急騰(価格急落)リスクは少ない」との見方もあるが、金融機関は国債購入の軸を、長期から短期に置き換えつつあるなど、リスク回避のための微妙な変化の兆しもうかがえる。
債券価格の下落は金融機関などの財務も直撃する。全国銀行ベースでは、現在、国債と地方債を合わせ計77兆円余りを保有している。仮に0・2%金利が上昇すると、1兆円を超す損失になる計算で、リスクは確実に拡大している。【藤好陽太郎】
◆米の2大格付け会社の主要国の国債格付け◆
ムーディーズ S&P
Aaa米国、英国、ドイツ AAA米国、英国、カナダ
フランス ドイツ、フランス
Aa1カナダ、ベルギー AA+ベルギー、アイスランド
Aa2ポルトガル AA イタリア、日本
Aa3日本、イタリア AA―イスラエル、チェコ
A1 チェコ、ハンガリー A+ ハンガリー、ポーランド
A2 ギリシャ、南アフリカ A ギリシャ、マレーシア
*自国通貨建て
[毎日新聞2月13日] ( 2002-02-13-21:02 )