ムーディーズが日本国債の格付けの見直しに着手したが、同社は前回の日本国債格下げの際も含め、日本政府は財政に対する明確な規律があるのか、規律が守られるとしてもデフレ経済の中で財政のサスティナビリティーが保たれるのか、ということに懸念を示している。これを格下げの理由のひとつと位置づけている以上は、市場も格下げは避けられない、と認識しており、その意味では、市場に大きなサプライズはないのではないか。
なぜ、このタイミングで見直しに着手したか、という点については、デフレ克服が課題になっている中で、日本政府は今週中にもデフレ対策を表明する見通しになっているが、前日の経済財政諮問会議に提出された“デフレ問題についての論点整理”の内容が、これまでの対応から抜けきれていない、と判断された可能性があるとみている。つまり、論点整理から推察されるデフレ対策の内容では、デフレ抑制の効果は限定的だ、という表明ではないか。
ただ、日本のデフレ脱却が容易でない中で、格下げの理由をこうした点に求めている限りは、今後も格下げを繰り返すしかなく、市場はシングルAへの格下げも視野に入れているだろう。
むしろ、市場が心配しているのは、格下げを受けて政府・日銀が何でもありのデフレ回避策に転じることであり、実際に、そうしたリスクを感じ始めているのではないか。債券市場は、政府が財政規律を守り、日銀も合理的な政策を続けるならば、シングルAなどに、ある程度格付けが下がっても仕方がないとみているが、格下げに背中を押されて政府・日銀が一線を越えてしまうことを警戒している。