政府・与党は11日、平成15年4月からサラリーマンの医療費自己負担を3割負担に引き上げることを決めた。中小企業のサラリーマンが加入する政府管掌健康保険の保険料率もアップ、年収ベースで8.2%(現行は7.5%)になるが、大企業のサラリーマンが加入する健保組合も追随するのは必至。果たして、負担増はどのくらいなのか。月収30万円(年収417万円。ボーナスは1.9カ月)、4人世帯のモデルケースで見てみると−。
平成11年度の国民1人当たりの医療費は24万4200円。3割負担になると、医療機関で診察を受けたときに支払う負担額は現在の1.5倍になるため、単純計算で、年にほぼ格安スーツ1着分にあたる2万4000円のアップとなる。
具体的には、サラリーマン本人がカゼで通院した場合の医療費が5000円なら、窓口負担は現行の1000円が1500円。虫垂炎(盲腸)で7日間入院した場合は現行より2万9000円増の8万7000円になる。しかし、「高額療養制度」を適用すると、負担は7万2500円に抑えられるため、実際の負担増は約1万2500円。新幹線の東京−米原間の片道運賃に相当する額となる。ただ、自営業など国民健康保険の加入者や、サラリーマンの家族はすでに3割になっているため負担は変わらない。
また、注目なのが給料から“天引き”される保険料が来年4月から月収ベースから年収ベースの総報酬制に変更されること。
現行では、給与で7.5%(労使で折半。ボーナスは特別保険料として1%徴収されるが本人負担は0.3%)が徴収されているが、新制度では年収ベースで8.2%になる。
厚労省の試算では、新制度で本人負担は年17万1000円となり、現行の15万5000円に比べ約10%もの増額になる。さらに、ボーナスにも同率に保険料がかかるため、ボーナスの支給額が多ければ多いほど保険料負担は膨らむ仕組みだ。
今回のサラリーマンの自己負担の増額は、医療保険財政の「当面の救済策」(厚労省幹部)とされる。しかし、自民党内には、「ここまでの負担を国民に押しつけるのはいかがなものか。支持率急落で、国民にリーダーシップを見せたかった小泉首相が強引に推し進めただけだ」(厚労族議員)との批判も強く、今後の火種となりそうだ。