http://www.weeklypost.com/jp/020222jp/index/index1.html
1.改革のセリフだけいう小泉首相
――時系列でいうと、小泉首相は就任間もなく打ち出した財政再建路線、国債発行枠30兆円を皮切りに、郵政3事業民営化から道路特定財源の一般財源化、日本道路公団民営化→特殊法人改革、医療制度改革。今年になって課税最低限の引き下げなどの税制見直しを掲げている。しかし、それら“小泉改革”のボキャブラリーを並べてみても、構造改革の手順が全く見えてこない。
小沢 小泉さんのいう構造改革というのは、大蔵省的な歳出の削減でしかないということがはっきりした。税制改革は何かというと、赤字を埋めるための増税の話。大蔵省流的な財政の健全化、すなわち歳出の削減、歳入の確保ということだけなんですよ、彼の改革は。
特殊法人廃止といったって、どこかと統合することによって廃止する、あるいは独立行政法人にする。そんなことをすれば、特殊法人と違って国会がそれぞれの法人の予算をチェックできなくなり、逆に補助金がつかみ金とされ、役人の聖域をどんどん増やすだけですよ。ますます官僚化が進み、その弊害が大きくなるだけです。道路財源だって、もともと重量税は一般財源なんですよ。道路公団の民営化といってもこれから審議会だかをつくって何年か先に結論を出すとか、みんな先送りなんですね。結局何も進んでない。
――小泉首相は「改革に抵抗するなら自民党を潰す」といって国民にアピールした。
小沢 小泉さんは自民党の一部の政局的なレベルで生きてきた典型的な人であり、自民党というのは政・官・業のトライアングルの、このお互いの持ちつ持たれつの権力構造の上に成り立っているんだから、その基礎的な構造部分をぶっ壊すとか、変えるなんていうことは、最初からできるはずがない。それは自民党と自分自身の自殺行為だから。
2.「日本破産」が目前に迫っている
――不良債権は一向に減らず、さらに増えている。これからも増えるかもしれない。今までの税金を注ぎ込んだ処理策を見直し、法的清算・整理を否定した住専国会までさかのぼってボタンのかけ違いを直す必要がある。
小沢 その通りなんだけど、日本の社会ではそれをやると、責任を追及せざるを得なくなるんですよ。責任を追及しない社会だから、日本は。住専であの無茶苦茶な貸し出しをしたのは、ノンバンクを通じた親会社の銀行だと、みんなわかっているわけ。そして、借りた方は、破産して大変なはずなのに、悠々たる、誰よりも豪華な生活をしている。要するに、資産を全部移しちゃっているから。それを黙認しているわけね、金融機関は。黙認せざるを得ない事情があるんですよ、癒着していたから。それを本気になって筋道を通して法的整理をしてやると、それは刑事責任までいっちゃう。長銀、日債銀も第一次資本注入のときに1兆何千億円の税金を注ぎ込んだんですよね。あのときは、政府は両方とも健全な銀行ですといったんだ。それが半年経ったら債務超過っていうんだから。そんなことは最初からわかり切っていたはずですよ。だけど、そこの責任追及をしたら、総理大臣まで全部刑事責任を問われる。銀行の経営者のみならず、政治家も役人もすべて責任があるから、それをしないようにしている。そういう社会なんだね、日本は。
――そういう意味で、時間が経てば経つほど危機はもっと構造化して深まっていくという危機感を抱かざるを得ない。
小沢 もっと悪くなっていくでしょう。どんどん悪くなっている。だから海外は、もう小泉改革なるものは、改革とは全く似て非なるものだと。今までの旧権力の政治と変わらないというのが、もうわかっちゃっているでしょう。フィナンシャル・タイムズでもエコノミストでも、ニューヨーク・タイムズもワシントンポストもが、“日本が崩壊する”“破産する”というショッキングなリポートを掲載している。日本の崩壊が間近だという。海外でそういう評価になって日本売りがかなり加速している。トリプル安が連続し、株価指数はバブル崩壊後の最安値を更新し続けている。
――株価指数は、昭和60年以来、16年ぶりという。日経平均も必死のPKO(プライス・キーピング・オペレーション)にもかかわらず、9500円を割り込んでしまった。
小沢 本当に、これが止めようもない状況に今、なりつつあるんじゃないですかね。
――3月危機、あるいはそれが6月になるのか、日一日と現実味を帯びているように思う。
小沢 僕は、3月危機というのは、決算発表後の6月株主総会を含めて、そこらまでのインタバルで考えて、年度末の危機というのは、本当に起こり得る可能性があると思いますね。
――当面の日本のクラッシュのきっかけは何か。
小沢 やっぱり金融ですよ。まだ、今、取り付け騒ぎには至っていないけど、事実はかなり取り付けが起きている金融機関があるでしょう。その行列ができているのに、マスコミは報道しない。だけど、これが本当に国債売りということになって、トリプル安がもっと急激に進行するようになったら、それはもう支えきれなくなる。
――銀行自身が自ら持っている国債を放出することになったら、これもまた大変なことになる。
小沢 評価損になっちゃうからね、国債を買っているから。ほとんどの大手の銀行も、債務超過になっちゃう。そうすると、3月期決算ができなくなってしまい、みんなバンザイになっちゃう。
――しかし、海外のそういう厳しい目をドラスチックに転換する妙案はありますか。
小沢 それは、本当の改革を断行するという意思を日本人が世界に向けて発信すればいいんです。その日のうちに株も何も全面的に……。
――じゃァ、もう少し時間をやろうかと。
小沢 日本人に潜在能力があることは彼らも認めている。本気のメッセージを日本人が送れば、その日のうちに株も何も暴騰する。
3.慎太郎さんを担いでやる?
――小泉内閣には、急激に変化していく危機の深化に対し、どうするのか、方法論なり、対策はあるのだろうか。
小沢 小泉さんはやっぱり、次に何か起きたときはもうダメでしょうね。
――投げ出しますか。
小沢 ええ。辞めざるを得ないんじゃないですか。だけど、それがイコール、多分、自民党政権の終焉だと僕は思うけどね。まァ、一時的に、じゃァ代わりに誰やれとか、何やれとかなるけど、経済のクラッシュが起きたときに、もはや自民党では絶対に対処できない。
――では、今、この危機を脱出するにはどうすべきなのかという、あなたの改革とはどういうものか。
小沢 僕らの役割は何かというと、明確な政治思想、政治理念を持って、具体策を国民に一貫して主張し続ける。そこに、混乱したとき国民が目を向けてくれればいい。そういう存在になるということが、我々は存在理由だと位置付けている。混乱したときに誰も何もない、では本当のカオスになっちゃうから。だから自由党だけは、小沢一郎だけは、一貫して明確なはっきりした主張を持っているねと。そして、いいと思うんだったら任せなさいと。そういえる存在にならなくちゃいかん。
――これからくるかもしれない危機のカオスで、小泉首相はもう辞めざるを得ない、自民党政府も潰れてしまうというときに、野党に政権交代とならないか。
小沢 ならない、今の状況じゃ。
――その先はどういう組み立てになるのか。
小沢 僕は、既存の政党というものでは、もう機能しなくなるんじゃないかと思う。新しい、どういうものが出てくるかわからないけれども、我々は我々の主張をみんなに呼びかける。そういう中で新しい集団が出てくればいい。
――単純な政界再編はあり得ない。
小沢 あり得ないね。
――そこで初めて国民と政治家は、国会議員は新しい盟約というか。
小沢 そう、新しい盟約、あるいは契約を結べるように、国民もならなきゃいけないし、政治家、政党もそうならなきゃいけない。
――それは、国の崩壊一歩手前の危機なんだけれども、同時に、それがまた再生の場になると。
小沢 それができればもう大丈夫。日本人が、やっぱりきちんとした理念とリーダーを持って、きちんとした体制ができたらね、このぐらいのことは何てことないですよ。
――既成政党の枠を越えた新しい集団、そういうものが、例えば小泉政権が総辞職なり何なりに追い込まれて、カオス状態が生まれたときにどういう状態で出てくるのかが具体的にわからない。全国の知事でも独自の考えを持つ人は多い。
小沢 それも一つ。例えば石原慎太郎さんを担いで、頭領にしてやろうとか、それはあってもいいと思う。慎太郎さんは少なくとも、自分の考えを持ってしゃべる人だよね。僕は必ずしも彼と一緒じゃないけどね。何か一緒みたいに思われているけれども(笑い)。
――“俺がやる”と、まずあなたが立ったらどうか。
小沢 僕に任せてくれるかどうかは別にして、自分の目先の利害を守っていけなくなる、そういう状況になったとき、国民は本気で決断するんだけれども、日本人というのは、非論理的、非合理的だから、それがおかしなほうへ行きがちなんだ。情緒的に、扇動する人がいると、いやぁ、アメリカがけしからんだとか、いや、中国だ、朝鮮だと、もうどうしようもなくなっちゃう。だから、そこを冷静に、論理的に、合理的に結論を出せるような、また、そういう風な判断ができるような主張を最後までしていくということが、我々自由党の存在理由だと思っています。
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小沢氏はなにか……ある気配を殺していたのではなかったか。いつもの、らしい明快な論理を包む独特の抑揚が心なしか消えていたように思えたからである。経済危機の足音に全身をそば立て、小泉=自民党政権が立ち往生し、崩壊する可能性を間近にとらえつつ、独自の改革政策をどう斬り結んでいくか。そこを読む緊迫の鼓動をいささかでも感じとられまいとするぎこちなさだったかもしれない。とすれば、≪小沢政変≫は存外の場面で、どんな異相の起こり方をするのか――と、想像力をかきたてられる。
(インタビューは2月4日午後3時より90分間、自由党本部で行なわれた)