金融庁による空売り規制の強化により売り残の多い売り込まれた銘柄の動向が注目される。相場操縦阻止に向けた動きとはいえ、本来なら実体を良くすれば売って儲けようとする行為は、損失覚悟の買い戻しにつながるわけでなんとも評価し難い対応と言えよう。銀行等保有株式買取機構の積極活用にしても、リスク許容度の大きい個人投資家が我先にと持ち合い解消玉を買いたいというインセンティブを国が付与すればそのような機構も本来なら必要なかろう。
規制・保護を縦横に張り巡らせ過保護に一部の産業を育てた結果、また、コスト意識が低く赤字を垂れ流し経営責任が問われない官主導の事業の結果が国の借金の大部分だ。この返済は結局国民が税金という形で返済して尻拭いするのだが、この返済にしても政府が景気をなんとか良くし、投資が活発に行われるように経済の黒子に徹してくれれば自然と良い結末を得られるだろう。果たして、現在の政権がそれを実行してくれるのか。市場はそれを昨年4月から評価、期待しながら待ち続けている。
筋の悪い株価対策(買取機構、空売り規制)に対して、10日に一部報道された大手銀行の引当強化は筋の良い対応と言えるだろう。まず資産査定を厳格化し額を確定した上で必要ならば公的資金を再注入する。入れる際は、経営責任、株主責任をきっちり問う。これならば、市場は不良債権問題の終焉を期待し確信すると考える。なお、経済財政諮問会議が総合的なデフレ対策を取りまとめるようだ。この対策も小手先の需給対策ではなく抜本的且つ王道の対策になることが期待される。
ブッシュ米大統領訪日を控え、わが国政策当局は、それなりの内容を伴った骨太の経済対策を打ち出す必要があろう。それに対する期待が株価を下支えすることになる。だが、期待だけでは株価の持続的な上昇は望めない。対策の見極め。見極めた上での、判断。そして、経済が良くなるという確信を市場が持ってはじめて、トレンド転換が実現される。今回出される総合デフレ対策がそれに見合うものなのか。市場は不安と期待が入り交じった状態でその時を待つことになりそうだ。
テクニカル的には、昨年9月との2点底は形成している。市場が歓喜する対策が打ち出されればトレンド転換に発展する可能性があるだけに注目しておきたい。