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あさひ銀行が外資のカラ売り攻勢により、株価を急落させたのは2001年11月8日のことだった。この日、米国証券会社ゴールドマン・サックス(GS)が売った同行株数は実に約1254万株。以下、野村証券(約630万株)、クレディ・リヨン(469万株)、メリルリンチ(約440万株)。何しろ、この日の同行株売買高は、東証1部の全売買高の約2割を占めるというものすごさだったのだ。
そのため、あさひ銀行の株価は一時、前日比37円安の76円まで急落した。これは上場以来の最安値である。
このGSによる異常な取引、市場関係者の間では2つの見方がある。一つはGSを通じての米投資ファンドの暗躍、そしてもう一つはあさひ銀と証券分野でアドバイザー契約しており、あさひの財務内容を知り得る立場にあるGS自身が同行に見切りをつけた結果というものだ。
しかし、さる事情通によると、どちらの見方も正確ではないという。
「もし、カラ売りによる儲けを狙っているのであれば、後場に買い戻しているはず。ところが、GSはほとんど買い戻していな。では、GSが見限ったということかというとそうでもない。その何よりの証拠に、あさひとGSはこの数日後、あさひの不良債権処理を進めるためのサービサー(債権回収会社)を共同で設立すると発表しているからね。見限り説が正しいとすれば、あさひはGSに完全に裏切られたわけで、その相手と共同でそんなことをするわけがないでしょう」
では、このカラ売りはいったい何だったのか?
このあさひ銀行の内部情報を知る立場にある事情通は続ける。
「いま、あさひ行内では役員同士で、頭取派と反頭取派でし烈な内紛が行われているんです。もし、そんななか株価が暴落したらどうなる。当然ながら現頭取派の汚点になり身を引くという事態にも……。そのため、GSと反頭取派が仕組んだことではないのか。
なぜ、そんなことが言えるか? だって、このカラ売りの少し前、その反頭取派の役員から一緒に売らないかと誘いがあったんだよ。その際、GSと組んでいるとまでの話はなかったが、あの日のカラ売りを見てそういうことだったのかと思ったよ。当然ながらあれだけの量のカラ売りだ、反頭取派寄りの大株主も売るための株をかなり提供していると思うよ」
何とも驚くべき証言ではないか。
むろん、仕掛けたとされる役員もバカではないから、これで自身も一儲けなんていうことはないだろう。しかし、この暴落の後、このカラ売りで一部役員が儲けたらしいという噂が兜町関係者の間で流れたのは事実。
事実とすれば、株価操作だけでなくインサイダー取引という不法行為にも抵触する可能性大。金融監督庁は役員と関係者の間にそうした事実がなかったのか調査してみる価値があるのではないか。