<第一生命経済研究所主任研究員 熊野英生氏>
各国が景気回復方向に見通しを変え、世界的な危機感は消え、明るい方向に向かっていることが示された。取り残された日本は、今後も問題視され、宿題を背負わされた形になった。
17日のブッシュ米大統領の来日の際、不良債権問題などのジャパン・プロブレムがあらためて問題視される。7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で行われると予想された日本の具体的な対応は、ブッシュ米大統領の来日まで、1週間先延ばしされた。
オニール米財務長官がG7での日本側の説明に対して、「真新しいアイデアは何も出なかった」と述べたのは、さらに踏み込んだ対策を求める、というメッセージだろう。日本が取りまとめているデフレ対策のパッケージを海外がどのように評価するか、注目される。
米国は昨年10−12月期の実質GDPがプラスになり、米国発の景気悲観論は払しょくできた。今回のG7では、為替について、「引き続き為替市場をよく注視し、適切に協力していく」としたが、これは円安追認より、ドル高追認の面が大きい。週明けの海外市場では、ドル高/円安が進むだろう。不良債権処理に関して、具体策が出なければ、トリプル安の傾向は続き、為替も3月末時点で140円に向かって円安になるだろう。
不良債権処理に関しては、リスク管理債権か破たん懸念先以下か、2〜3年とは具体的にいつなのかなど、何を基準に、いつまでに何をしようとしているのかが、分かりにくい。公的資金を投入するだけでなく、企業の過剰債務にまで目を向け、不良債権をいつまでに減らすか等を明示しなければ、日本発の危機は免れない。昨年3月にブッシュ・森(前首相)会談で日本の不良債権処理は公約になっており、それ以来の宿題だ。
日銀の大きな役割は、危機にどう臨むかという姿勢を示し、アナウンスメント効果をあげることだ。公的資金を投入し、危機を事前に回避するというメッセージを、オピニオンリーダーとして言っていくべきだ。さらには、金融危機対応勘定の15兆円枠には政府保証が付いているが、ここに日銀特融を出さざるを得ない。
さらには、昨年9月末に2000億円あった銀行の保有有価証券評価益は、長期金利が1.6%に上昇することで枯渇する。こうなれば、不良債権処理の原資がなく、資本不足に陥りかねない。長期金利の上昇に歯止めが必要であり、日銀は、インフレターゲットや土地購入などの回避に目を向けず、銀行の収益目減りをいかに補てんするかを地道に考えるべきだ。
銀行への対応を決め、ここで株価を反転させれば、円安で利益が上がっている自動車や電気機械などにつなぐことができる。景気がさらに下落するか、底を打つか、重要なポイントだ。