【オタワ9日=新保裕介】
G7が共同声明の中で、最近の円安・ドル高水準を事実上容認したことで、当面、外国為替相場は、円安傾向が続き、日本経済回復に向けた下支えになると期待される。
昨年末から急激に進んだ円安・ドル高を巡っては、米国の製造業者やアジア地域から「輸出競争力を高めるための人為的な誘導だ」との強い反発がある。
それにもかかわらず、声明で円安が特に問題視されなかったのは、景気浮揚への政策対応が手詰まり状態の日本にとって、円安による輸出促進が“最後の砦(とりで)”であるとの認識を、G7各国が暗黙のうちに受け入れたためとみられる。
また、円安がやり玉に挙がれば、ドル安を誘発することにもなりかねない。その場合、「強いドル」をテコに世界からの投資資金の流入を維持し、株価回復などを通じて景気復調につなげようという米国の経済再生シナリオの一つが狂う可能性もある。
米ブッシュ政権にとって、為替問題は「ちょっとでも触りたくないテーマ」(国際金融筋)であったため、緩やかな円安が好都合で為替論議の深入りを避けたかった日本側と利害が一致したと言える。
◆週明け、公的資金再注入が焦点◆
G7を受けた週明けの東京株式市場について、みずほインベスターズ証券の佐藤政俊シニアストラテジストは「G7各国はとりあえず、日本が株価・デフレ対策をどう実行するか見守ろうという姿勢だ。市場でも、政府が何らかの政策を打ち出すのではないかとの期待感は残りそうだ」と話す。
大和総研の中野充弘・投資調査部長は「投資家の関心は、持ち合い株の買い取りの前倒しなどより、銀行への公的資金の再注入がいつ決まるかに移っている」と指摘する。不良債権の抜本処理など懸案解決への道筋が見えて来なければ、投資家の日本株への「失望売り」を招く恐れも残る。
その意味で、17日からの「ブッシュ大統領来日を挟んだ向こう一、二週間が、株価にとって正念場」(佐藤シニアストラテジスト)と、市場は政府の具体策を注目している。
(2月10日22:03)