【オタワ川俣友宏】
塩川正十郎財務相が8日からの先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)で、株安・債券安対策などを表明するのは、日本に対する欧米の批判を和らげたいためだ。ただ、株式取得機構による銀行保有株の早期買い取りや、個人の長期国債保有への優遇税制は抜本的な対策とはいえず、「政府の焦りを露呈した」(民間エコノミスト)との厳しい見方も出ている。
塩川財務相は8日の会見で、株安・債券安対策として(1)株式取得機構による早期買い取り(2)空売り規制の強化(3)個人の長期国債保有に税制面での対応を検討(4)日銀に一段の金融緩和要請ーーの4項目をあげた。
株式取得機構は、政府保証付きの借り入れを限度額(2兆円)まで行い、週明けから買い取りを始めるよう促す。当初、2兆円枠は緊急手段として用意していたもので、初めから“奥の手”を使わざるを得ない事態になった。また、日銀には、現在月間8000億円の長期国債の買い入れ額を1兆円に増やすよう要請する考えだ。
金融庁や日銀の守備範囲に立ち入ることについて、塩川財務相は「各国は日本経済、不良債権処理をどうするか、去年と違って相当な迫力で迫ってくる。ある程度答えざるを得ない」と指摘し、「国際会議で『改革を進めて成長を期する』とか言っても、誰も聞いとらん。具体的に何をするかが問題だ」と述べた。
ただ、これらの政策は従来の延長線上であり、長期国債保有の税制問題も早期には結論が出ない。株安・債券安に対して、ブレーキをかける効果は期待できても、反転させるには力不足だ。
内閣府を中心にデフレ総合対策を取りまとめる動きもあるが、各省庁や日銀などの利害対立で調整難航は確実だ。だから、塩川財務相もG7出発直前に「独断専行」との批判を覚悟で、“泥縄的”に対策を見つくろったと言える。17日からのブッシュ米大統領訪日までに、政府がどこまで中身のある対策をまとめることができるかが重要だ。