(2/5)欧米企業、監査中立性アピール・委託分離へ動く
エンロン問題、広がる波紋
【ロンドン5日=小平龍四郎】米エンロン問題をきっかけに、欧米企業に会計監査を見直す機運が高まってきた。監査の中立性を対外的に示すため、監査とコンサルティングの担当会計事務所を分ける動きが出ており、米国ではウォルト・ディズニーが分離を決め、英国でも保険最大手CGNUなどが検討を始めた。英国では市場を監督する金融サービス機構(FSA)が上場基準に「監査の独立性」を盛り込む方針で、同種事件の再発防止を急ぐ。
エンロン破たんを巡っては、同社の会計監査を担当した大手会計事務所のアンダーセンが、監査以外のコンサルティングなどの報酬も受けていたことが問題となり、会計事務所が企業の監査とコンサルティングの両方を担当する慣行に批判が集まった。
こうした状況に対応し、ディズニーは先月末の四半期決算の説明会の際、米主要企業としては初めて、監査を担当している世界最大の会計事務所のプライスウォーターハウス・クーパース(PwC)に対し、コンサルティング業務を依頼しない方針を明らかにした。米企業ではコーニングやニューヨーク・タイムズなども、同様の措置を検討する可能性があると報道されている。
英国でもCGNUは近く「監査担当の会計事務所には高額のコンサルティング業務を委託しない」などの方針を決める見通し。同社はコンサルティングの発注を複数の事務所に分けてきたが、税務など高額な分野は監査と同じ会計事務所に任せる場合が多かった。
食品大手のユニリーバも監査担当の会計事務所の見直しを進めている。PwC、アーンスト・アンド・ヤング、KPMGの三事務所のなかから入札方式で選ぶ。従来と同じPwCに決まった場合は、同事務所に依頼していたコンサルティング業務を大幅に減らす可能性が高い。
英紙によればフィナンシャル・タイムズ百種総合指数に採用されている企業の9割以上が会計事務所との関係を見直している。エンロン問題の渦中にあるアンダーセンが監査している飲料・菓子大手のキャドベリー・シュウェップスは「入札方式で監査法人を決め直す」(日曜紙サンデー・タイムズ)と報じられた。
ハワード・デービスFSA理事長はニューヨークで開かれた世界経済フォーラム年次総会の講演で「エンロンと同様の事件が英国でも発生する可能性がある」と述べ、監査法人の交代制を含めた新たな規制の導入を強く示唆した。英企業の今回の措置は、FSAの問題意識に呼応している。
米国ではエンロン問題後も企業の不透明な会計処理が発覚し「会計・監査への不信」が株価下落の遠因になっている。発行済み株式数の約3割を米機関投資家が保有する英大企業は、株価の下落を防ぐため監査の中立性を自ら訴える必要に迫られた。
一方、大手会計事務所の間でも、コンサルティング部門を分離独立させる動きが出ている。PwCが先月末、コンサルティング部門を別会社として株式公開し分離独立させる計画を発表。KPMGはすでに昨年2月、KPMGコンサルティングを株式公開させ分離した。