(2/5)不正会計疑惑、米市場揺れる・Kマートでも
【ワシントン5日=三反園哲治】米市場で企業の不正会計疑惑が広がっている。4日には情報開示への不信感から、米大手複合企業のタイコ・インターナショナルの株価が急落、相場全体に波及した。エンロン破たんをきっかけに表面化した不正会計疑惑は、株価上昇を優先してきた米企業文化の「負の側面」を浮かび上がらせている。
Kマートでも
1月末から米株式市場で会計への不信が相場の懸念材料になっている。それを先導しているタイコは、4日も大きく売り込まれ、株価は年初から5割近く下げた。医療用品や防火、警備までを手がけるタイコは、相次ぐ買収で決算内容が分析しにくいことも、要因の一つになっている。ゼネラル・エレクトリック(GE)のような大型優良株にも波及した。
ここへきて、1月後半に破たんしたKマート(小売り)、グローバル・クロッシング(通信)でも不正疑惑が発覚、両社とも独自の調査委員会を設置した。米証券取引委員会(SEC)もすでに主要500社の決算資料を精査する作業に入っている。
不要な損失計上
米国で不正会計の手口として取りざたされるのは、損失の前倒し計上で将来の利益成長を底上げする手法だ。市場は大胆なリストラを実施して赤字が拡大しても、リストラを前向きに評価する傾向がある。このため、経営者はリストラで損失を計上するのに便乗し、計上する必要のない在庫の評価損や貸倒引当金をまとめて計上する。これによって、期間利益を操作する余地ができる。
買収を繰り返す企業は、買収と同時に実施する人員削減などのリストラで、こうした手法を使っていると疑われやすい。1999年のタイコに対する不正会計疑惑もこうした憶測が根底にあった。
予想達成へ必死
エンロン破たん後、簿外取引の相手となる特別目的会社に対する疑惑も高まった。会計基準では、特別目的会社をつくる会社と利害関係のない投資家が一定の水準以上を投じていれば、連結対象外として扱える。迂回(うかい)融資で巧妙に仕組めば実質的に子会社であっても連結対象から外せることになる。
一連の会計疑惑の背景には、株価上昇を至上命題とする米企業文化があるとの見方がある。米国では証券アナリストによる業績予想が重視され、実際の業績と予想とのかい離によって株価が反応する。経営者は業績予想を達成するよう必死になる。経営者自身がストックオプション(自社株購入権)を保有していることも、自分の利益のために株価を上げる会計処理に駆り立てる要因になっている。