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「ガメラ」が目を覚ましたようである(…と言っても意味不明で??の方は後ほど本サイトの2001年6月12日配信号をお読み下さい)。つまり内外で金価格の上昇が目立ってきた。
先週のNY時間の火曜日1月29日から31日の「前日比変わらず」をはさみ6連騰で合計20ドル強(NYでの中心取引ベース)の上昇である。国内価格の方も小売価格がついに1300円台(税抜き)に乗せてきた。この間、為替市場のドル円相場は、値動きは粗いものの基本的には132〜134円のレンジ相場となっているので、もっぱらドル建て価格の上昇を映した格好である。
このところ国内メディアで「金」が取り上げられる機会が増えているのはご存知の通りである。昨年末12月26日配信の国内動向で指摘したように、金への関心の高まりは、「ペイオフ解禁」というイベントよりもむしろ、投資家の間で高まる国内経済または金融への不安を映し出したものとなっている。
ここ最近の国内の出来事と、それに対するメディアの報道と投資家動向を見ていて思うのは、ひと言で表すと「信頼性の剥落」ということにつきる。
足元で指摘される「金融危機の可能性」あるいは「金融への不安」は、筆者には一連の「狂牛病問題」と根は同じように映る。狂牛病問題は担当大臣がTVカメラの前でおいしそうに牛肉を食べようがお役所が安全宣言をしようが、国民の多くがそれを信用しなくなってしまった。金融の問題も同じである。過去何度か聞かされた「不良債権問題は峠を越えた」という発表が、その後の経過からそうではないことが分かるということが続くにつれ、やはり担当大臣が「問題ない」と発言しても受け止める側の姿勢は変わってしまっている。卑近な例では連日報道されている食肉ラベルの偽造問題や有名ブランド米の流通量が生産量の10倍を上回っているとの話などなど、言われてみれば「やはり」とは思うものの、「いちおう信用していたのに・…」との思いは残る。
これらも結局回りまわって金融の問題に跳ね返る。なぜなら倫理観を欠いた行動により引き起こされる疑心暗鬼が、ビジネスに影響を及ぼすことは必至で、手形決済などもっとも信用を重んずる金融面に波及するためだ。事実、景気が悪いと言う背景もあるが、全国の手形取引は急減していると伝えられている。
そして飛び出した国会の場に持ち込まれた「言った言わない」問題である。この難しい時期の対応如何で日本の方向性が大きく変わる可能性のある、(大袈裟に表現すると)いわば“国家存亡の危機”に起きた水掛け“論争(?)”は、(言うまでもなく)「政治を身近な存在にした」などと笑ってはいられない出来事だった。「おやじの権威喪失」など言われて久しいが、結果的に政治への信頼性がさらに薄まる事態は、リーダーシップの低落という形でやはり金融経済の問題へと転化する可能性がある。ことほど左様に「ここまでは」あるいは「ここだけは」大丈夫と思っていた多くの対象に対する信頼性が、時間の経過とともにはらはらと剥がれ落ちている。「権威の失墜」というと世相というレベルの話だが、「信頼性の低下」は一線で踏みとどまっているあらゆる状況を突き崩す危うさを感じさせる点で異質のものと言えるのではないか。
ただし、循環論的に言うとこうした事態の発生局面は、「総悲観」を経て全体の「底打ち」につながる過程とも捉えられ、最終局面入りしているという見方もできる。いずれにしても、こうした環境下、実物資産ゆえに確かな投資対象とされる「金」に注目
する投資家が増えるのは必然と捉えている。
さて冒頭でNY市場の価格上昇をまず取り上げたが、その背景はNY株式の下落である。特筆すべきは、その株価下落の背景が「エンロン」に端を発する米国企業の「決算」内容、つまりは会計監査に対する不信から起きていることである。多額の債務を簿外に隠し、利益を水増ししたと指摘されている「エンロン」と、それをチェックできなかった監査法人。問題が表面化した際の監査法人の担当者による書類破棄問題など、事件の詳細は調査中である。足元の問題は、類似行為を行なっていた企業の存在が指摘され始めていることである。すでに数社名前が挙がっているが、さらに拡大する可能性も指摘されている。こうした事態の発生の可能性については、2001年12月28日配信号で指摘済み(「第2第3のエンロンの登場」)であるので、“やはり”という感じであるが、「信頼性の剥落」が米国でも起きているのである。もっとも透明性が高く、フェアであるとされ、そしてその通り厳しく管理もされていると見られてきた米国市場を舞台とする出来事は、運用担当者に改めてリスク管理の重要性を認識させるだろう。決算内容への疑義は、投資の前提を根底から覆すものであり、事態の進展如何によってはさらなる株式市場の波乱につながりかねない問題である。こうした中で、金価格は「同時多発テロ」発生後の高値を昨晩クリアしてきた。これから心理的抵抗ラインとなっている300ドルへの挑戦となるが、大きな抵抗ラインだけにどうなるか。突破すると上値が大きくなる可能性がある。
件の2001年6月12日号の最後をもう一度掲載させていただくと、「ガメラは死なず傷を癒し、しかる後にまた登場し、少年たちは熱狂するのである」いま予想以上の動きにオジさん(筆者)も熱狂しそうである。
(2月6日記)
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎