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http://www.mof.go.jp/singikai/kokusai/gijiyosi/a140205.htm
国債市場懇談会(第15回)議事要旨
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.日時 平成14年2月5日(火)15:30〜17:00
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.場所 財務省 第1特別会議室
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.内容
(1)
まず、理財局から、14年度国債発行計画及び、国債関連の14年度税制改正についての報告が行われた(資料@、資料A)。
また、一部報道において財務省が国債シ団制度の廃止を検討している旨報じられたことについて、その事実関係の説明が行われた。
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理財局からの説明の概要は以下のとおり。
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国債シ団制度については、これまで国債の消化に大きな役割を果たしてきているが、国債市場懇談会においても、市場関係者から、見直しを含めてその在り方について、様々な意見が出されているところであり、財務省としても、国債の安定消化及び国債市場の整備という観点から、中長期的な課題として検討を行っているところである。
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一方、シ団制度の見直しに当たっては、シ団制度に代わる安定消化のスキームの構築などの課題があると認識しており、現時点において、具体的なスケジュールを念頭に置いて検討を進めているものではない。
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いずれにしても、国債の安定消化を図ることは重要であり、市場の動向・ニーズも十分踏まえつつ、引き続き、幅広い観点から議論を深めてまいりたいと考えている。
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以上の報告・説明に対し、メンバーから出された質問の概要は以下のとおり。
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14年度国債発行予定額の公的部門における日銀乗換額3兆3,704億円は、日銀が前年度に乗換えにより取得するTBの2分の1も含むのか。(これに対して事務局からは、平成14年度においては、日銀が保有する国債のうち、満期の到来する利付債のみを計上しており、TB分は含まれていない、旨応答した。)
(2)
次に、1月25日より東京証券取引所がアンケートを実施している長期国債先物の商品性見直しについてメンバー間でディスカッションが行われた。
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議論の参考として、東京証券取引所から、アンケート実施に当たっての背景説明が行われた(資料B)。東京証券取引所からの説明の概要は以下のとおり。
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長期国債先物取引の商品性については、12年2月に実施したアンケートでは、受渡適格銘柄の年限や標準物利率を変更すべきという意見もあったが、日銀ネットのRTGS化及び時価会計の導入を控えていたことや、表面利率が他の銘柄に比べ極めて低い銘柄が複数限月にわたって最割安銘柄となった場合の影響が懸念されたこともあり、商品性見直しの必要はない又はその当時において見直しを行うことは適当ではないとする意見が多く、そのような状況を総合的に勘案し、商品性の見直しに関する検討への着手は見送ることとした。
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しかし、現在ではRTGSや時価会計の導入などの環境整備が図られたほか、引き続き低金利が継続する中にあって、長期国債先物取引の使い勝手の向上のため、同取引の商品性見直しを求める声はこれまで以上に見受けられる。そこで、長期国債先物取引の商品性に関し、受渡適格銘柄の年限、標準物比率等につき幅広い方々の意見を頂き、それを踏まえて今後の検討を行ってまいりたいと考えている。
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これに対し、メンバーから出された意見等の概要は以下のとおり。
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1月に、前日比で235回10年債はほとんど動かなかったにもかかわらず、先物は45銭安と大きく乖離した日があった。過去にどのくらいの頻度でこういった値動きがあったか調べると、700分の1程度の確率でしかなかったが、直近では、700分の1どころか何十分の一位の確率といっていいほど頻度が多くなっている。それだけ先物の値動きが荒っぽいというべきなのか現物債が崩れにくかったのか、いずれにしても過去が正しいとすれば直近は異常な状態となっている。一方で、先物オプションのボラティリティについてはそれほど上昇していない。先物取引自体にはヘッジや投機的な売り買い等当然いろいろあるが、より投機的な性格の取引が増えているのではないか。そもそも業者の立場からは、先物は、入札時のヘッジ手段に利用したいというのが本音である。7年の新発債が発行されるのであれば現状で問題はないが、実際に発行されるのは5年や10年の新発債であり、いずれにしても、早急に長期国債先物の見直し、中期国債先物の活性化について、東証と協力して進めなければ市場に歪みがでてくるのではないかと懸念している。
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足元では7〜10年のイールドカーブが歪み、日々大きな変動があることは事実である。社内でもディーラーとセールス含めこの問題を議論しているが、前回の東証のアンケート結果を見ても明らかなように多様な意見がある。どちらかといえば、今後5年債と10年債を中心に発行されることを考えると、現状は長期国債先物は7年債になっているので、5年債と10年債のどちらのヘッジにも使えるということや、慣れているということもあり、足元のいびつな動きを別にすれば、使い勝手がよいという意見が多い。一方で、10年債は 10年の先物、5年債は5年の先物でそれぞれヘッジしたいという意見もあるが、その前提としては、中期国債先物をいかに活性化し、取引量も長期国債先物並みにすることができるかというところが重要であり、これができない限り、5年債、10年債のどちらにも対応できる現状の方が使い勝手がよいと考える。
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新発債のヘッジ等に関しては、今後WI取引が導入されるのであれば十分対応は可能と思われる。
以前に比べると、建玉残高が低水準になっているが、これについては時価会計の導入の影響が大きいと考える。本来、先物の価格形成が円滑に行われるためには、ヘッジャー、アビトラージャー、スペキュレーターが渾然一体となってマーケットに参加している必要がある。従来は、主に投資家は現物債のヘッジで先物を売り、業者はアビトラージャーとして現物売り・先物買いのポジションをとることで先物の買い方となり、スペキュレーターは両方のポジションを持つことで、価格形成がなされていた。しかし、投資家は保有する現物債を先物でヘッジせず、直接現物で売り買いするようになったことが、建玉残高の減少要因ではないか。
こうした構造変化を踏まえると、果たして受渡適格銘柄の年限や標準物利率の変更だけで売買が盛り上がり、建玉残高が増加したり、先物市場で円滑に売買されるのか、少々疑問である。まさに最近の状況は投資家のヘッジ取引が減少し、流動性が細ったところに、ヘッジファンド等投機的な売りが一斉に出たことにより、マーケットのボラティリティが一気に高まったとの認識を持つ必要があるのではないか。
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現在の長期国債先物は、5年債、10年債両方のヘッジとして使われている。もちろんそれぞれの年限について別々の先物があればよいのだろうが、現実的には今の中期国債先物を見てもそこまでは難しい。今後の発行は中期債が厚めになってくることを考えると、中期債への目配りも相当必要になってくると思われ、この点からすると、現在の長期国債先物は中期にも長期にも目配りができるため、そこそこ使い勝手がよいと思われる。
また、標準物利率の見直しも、受渡適格銘柄が頻繁に変化することを考えると、限界があると思われる。
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現在の長期国債先物の受渡適格銘柄の7年という年限は非常に使い勝手はよい。ただ最近は現物債との連動性が薄れている。仮に受渡適格銘柄の年限を見直すのであれば、中期国債先物の活性化が絶対条件である。
また、標準物利率を引き下げると、デリバリーオプションが発生するため国債現物のアスクビットが広がり、逆に流動性の低下につながる恐れがある。商品性を見直すとしても、標準物利率はそのままがよいと考える。
(3)
続いて、みずほ証券(高田投資戦略部チーフストラテジスト)から、「国債市場を巡る諸説」についてのプレゼンテーションが行われた(資料C)。
これに対し、メンバーから出された意見等の概要は以下のとおり。
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国債発行の裏側として、財政がどのように使われているかという財政規律の問題が重要である。
金利と経済成長率の関係で、名目経済成長率が高ければ国債を増発した結果として、金利が上昇しても問題はない。
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名目成長率が持続的に上昇するのであれば、国債をある程度発行しても問題はないが、名目成長率が上昇するという期待がない中で、国債発行が増えていくと、金利のみを上昇させるリスクがあり、名目経済成長率と金利とのバランスを崩すものとなる。
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どんな商品にもリスクは存在する。銀行などの金融機関が国債を保有している場合、保有している金融機関は金利リスクにさらされている反面、預金をしている個人はリスクにさらされていないが、個人が直接国債を保有することで、個人に金利リスクが移る。現状の金融システムの中で、リスクを誰が担うべきなのかという問題と、誰が保有することでリスクを最小化できるかという問題があり、完全にリスクを転換するのであれば、最終投資家がリスクを負うような形にすべきである。
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直接金融だけではなく市場型間接金融として、個人や投資信託など保有者が広がれば、リスクがバランスする。しかし、貯蓄金融機関に個人資産が集中してしまっている構造の中で、どのように対応していくかという難しさがある。今後、その構造がアメリカ的な方向に変わればよいが、まずは現状で、個人の資金が貯蓄金融機関に集中している状況を出発点として考えるべきである。
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銀行等の仲介金融機関が国債を保有し金利リスクを負っているが、それを個人が預金ではなく直接国債を保有することによって、仲介金融機関のリスクを軽減することができる。一方で、国債の商品性の設計によって財政当局が、さまざまな金融環境の変化に対するリスクを負うことができる。また、1940年代の米国では、銀行の保有する長期債のリスクを軽減するために、新たに変動金利国債を出し、ボンド・コンバーションを行ったこともある。
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市場リスクと信用リスクを明確に分けた議論が必要である。国債は北極星であり、最も安全性と信用度が高い金融商品である。リスクを市場リスクと信用リスクで分けて金利決定のメカニズムを考えると、金利は期待インフレ率と期待成長率、及びリスクプレミアムで決定される。
我が国については、期待インフレ率と長期的な成長率が高くないが、格付けは、ボツワナ、チリ、スロベニアの水準まで下がっており、金利決定のメカニズムからは、直ちに暴落はしないが、極めて不安定な状況にあると言える。
最近、金利が上昇しているが、インフレ率が高くなったわけでも、人口減少が予想される中で成長率が上がったわけでもなく、これは国債で日本人が試されているということではないか。
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リスクプレミアムをどうコントロールしていけるかが問題になる。日本において期待インフレ率や成長率が低いというのは、日本経済の生産性が低い状態にあるということであり、生産性を向上させることにより、金利も上がっていき、そうした金利上昇にも耐え得る状況になると考える。しかし、そうした兆しがない中で、リスクプレミアムだけが上昇していくと、健全なセクターまでもが成り立たない状態になってしまう。
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アルゼンチン危機は、民間貯蓄で債務をファイナンスできず、最終的には中央銀行がマネーサプライを増やすことにより返済したことが危機となったものである。これに対し、日本については、民間貯蓄が財政赤字を持ち支えており、対外債務は今のところないことから、アルゼンチンの危機とは状況が異なる。
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最近、マーケットでは、キャピタル・フライトということが海外投資家を中心に言われているが、国内の市場参加者からみれば、針小棒大に映る。世界最大の対外債権国であること、デフレ下で流動性選好が高まっていること等の日本が置かれたマクロ的な状況を考えると、キャピタル・フライトが起こるということは、ほとんど想定できない。キャピタル・フライトが起こることは、逆にいえば、円安になったり、リスクをとろうとする投資行動が出てきた証左であり、ポジティブな評価をしてもいいのではないかとさえ思う。むしろ、資料Cの9ページで指摘されているような「本源的な不安定な構造」を持っていても破綻はしないという状況が延々と続いてしまうことこそが問題である。
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日本の投資家の外債投資が増えると、すぐにキャピタル・フライトと言われるが、外債保有額はこれまで非常に低い水準にあり、ある程度の水準まで増えるのは当然とみることもできる。
また、70年代、80年代に行われた景気対策と現在の状況が異なっているのは、財政支出の効率性がかなり落ちていることである。同じ量の国債を発行しても、景気を刺激するような支出先があまりなくなっている。国債の発行面に限らず、支出先のことまでを考えた構造改革が必要である。
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海外投資家と議論していると、キャピタル・フライトと常に背中合わせになっていた海外と我が国とでは、キャピタル・フライトに対する認識がかなり異なっているというのが実感である。海外では、常にそうした状況に置かれていたことから、日本でも直にキャピタル・フライトが起こると認識しているようだが、我が国では、個人の外貨預金等が増えるにしても、極端なことは起こりえない。ただし、中長期的に見た場合、キャピタル・フライトが未来永劫本当に起こりえないのかということついては、ある程度慎重に見ないといけないのではないか。
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あえて国債暴落論者の見解を代弁すると、確かにフィッシャー方程式やリスクプレミアム仮説等に基づくと、現時点で国債暴落は起こり得ないと言えるが、動態的に考えた場合、果たして今のISバランスというものは維持できるのかということとなる。将来的には、貯蓄超過が解消されることを見込んで、長期債のリスクプレミアムが現状以上に発生していく可能性もあるのではないか。1%台の低金利下では、10年債のクーポンが0.1%上がったり、長期金利が2%になったりしただけで暴落と言われるが、今の金利水準を踏まえて、リスクプレミアムが適正な水準にあるのかという議論をしていく必要があるのではないか。
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プレゼンテーションで指摘された通り、国債市場の需給について、供給サイドのみがクローズアップされているのは問題である。また、海外勢が日本からのキャピタル・フライトについてどこまで本気で信じているかは疑問であり、それ以上に、漫然とした「日本売り」が喧伝されている点が問題ではないか。つまり、海外勢の興味は、不良債権問題や金融システム不安を抱えた銀行のALMがどうなっているのかという点に集中していると感じている。ALMの観点からは、運用手段がなければ預金を集める必要はないのに、実態は、大手の銀行は、民間金融機関の中で最も余資を抱えた中、十分リターンを上げていないことに海外勢は不安を感じているようである。そのような金融システム不安がデフォルメされて、「日本売り」の材料になっているのではないか。
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国債暴落の可能性は現時点で低いと思うが、マーケットは財政が発散するリスクに注目しており、そうした状況下でリスクプレミアムが徐々に大きくなることを不安視しているのではないか。市場を分析する立場からは、信用不安が顕在化するリスクを無視できない状況である。銀行については、一金融機関としてはともかく、マクロ的に見た全体の預金量はコントロールし難い。資金がある以上、その運用効率を上げていく責任を負っている一方で、体力の低下からクレジットリスクはもとより金利リスクさえ取れない、信用収縮の状況に陥りつつある。現在は、金融機関全体のあり方が問われている状況ではないか。
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個別には預金量を落とそうとしている金融機関もあるが、マクロ的な預金量はそれ程変わっていない中、ペイオフ解禁を控え、預金は大手の金融機関へ集まる傾向にある。各金融機関は、コストとリターンを勘案しつつ、短期国債で運用したり、貸出についてリスクに見合ったスプレッドの確保に努めるなど、ALM上の適切な運用に努めている。ただ、時価会計の影響もあり、株が売られると国債もなかなか買いづらい。3月末にかけて、投資家は株価を睨みつつ国債市場の動向を注視している状況である。
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マクロ的な資金循環について、問題の立て方にやや誤解があるのではないか。つまり、世の中の経済主体を法人・個人・海外・公共部門に分けた場合、海外と公共部門を除けば、マクロの資金循環は、個人と法人の中で回り、その帳尻が金融部門にくる。マーケットから資金が流出するには、国債の発行により資金が公共部門に流れて再びマーケットに出ないとか、海外に流出するというような、国内民間部門全体としての資金のインフローやアウトフローを考えなくては、意味のない議論になるのではないか。結局は、基本的にリスクをどの部門が取るかという問題であり、個人も法人もリスクを取れずに預金が流入するとすれば、金融部門がリスクを取らざるを得ないし、実際にも金融機関はリスクを取って収益を上げてきた。個々の金融機関のALMと、マーケット全体として資金がどう動いているかというのは、全く別の次元の話ではないか。
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直近の相場の動きからは、銀行の売りに対して、生保や公的資金など多様な投資家の買いがあるなど、投資家層はこの一年間で相当広がり多様化してきていると感じている。
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海外投資家が国債をあまり買わないことの根底には、日本の金利が自国の短期金利よりも低いことにある。これは、日本人が金利の高い外債に投資することと逆の動きである。外国人の保有を増やすためには、税制の見直しや規制緩和は勿論必要であるが、増えないことの主因は絶対金利が低いことにある。
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償還時には額面で返ってきても、それまでの間にインフレが進むと、素人は大変な暴落と感じるのではないか。個人保有が進まない背景には、戦争後、紙切れになった国債のことがお年寄りの頭にあるのかもしれない。
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そうした不安感を解除するために、政府がインフレ連動債を発行することで、インフレリスクを負うという形でのコミットメントができるのではないか。
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発行体と投資家との二元論で議論されているが、国債消化にはそれらの間に仲介として証券会社が入っていることに留意する必要がある。不良債権問題や、日銀の低金利政策でなぜ産業は活性化しないのかという議論について、仲介者としての銀行の機能が抜け落ちており、銀行が業として成り立つのに何がなくてはならないのかといった議論がなされていない。同じように、証券会社も一回どこかでダウンサイジングするという可能性を持っており、その点も踏まえて、今後の国債大量発行も含めて議論があった方がよいのではないか。
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財投債にかかる情報公開をなるべく早いタイミングかつ幅広い範囲で行なって欲しい。国債発行額がますます増えていくことになろう現状において、マーケットの関心は、財投債の動きにも向けられてきている。財投債についての情報公開を更に徹底すれば、マーケット全体の不安心理などが払拭され、かつ、全体的な資金の流れが読めるため、国債の安定消化にもつながるのではないか。