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年明けから殖産住宅など上場企業4社が早くも倒産し、不気味な大倒産・失業時代の到来を予告する。そこで、帝国データバンク情報部長の熊谷勝行氏=写真右=と東京商工リサーチ情報事業統括本部長補佐の荒谷紘毅氏=同左=に対談で企業業績を分析してもらった。達人たちの言葉からは、深刻な見通しがあぶり出されてきた。
−−昨年の倒産件数は帝国データバンク集計で1万9441件、東京商工リサーチ集計で1万9161件とバブル崩壊後で最悪となり、1984年の2万8041件に次ぐ史上2番目でした。
29日に総務省が発表した昨年12月の完全失業率も5.6%と過去最悪を更新し、昨年の年間平均では5.0%と3年連続で米国の失業率(昨年平均4.8%)を上回る悲惨な状況です。今年の見通しは?
熊谷 「今までにない倒産件数になることは間違いないですね。年が明けて1カ月もたたないのに、4社の上場企業が倒産するなど昨年にもなかったことですから、嫌な1年のスタートですね」
荒谷 「過去最悪超えるでしょうね。2万件かそれ以上なのかはわかりませんが。上場企業倒産も昨年の14を超えてワースト記録になると思う。増える材料はあっても、減る材料は見当たらない。実質的には昨年の段階で、倒産件数も負債総額も過去最悪を更新しているといえる」
−−といいますと?
荒谷 「特別保証などの金融政策で件数が倒産件数が力ずくで抑えられているからです。実質的に2万件は超えているでしょうし、しかも、98年からずっとそうです」
−−急増した原因は?
荒谷 「規制緩和、少子・高齢化などの構造的要因、国際会計基準の導入などの制度的要因、シリコンサイクルによるIT不況など循環的要因が3大要因です。テロや狂牛病など突発要因、財政難も複雑骨折のように絡み合っている。債権放棄に道を開く特定調停法が2000年2月に施行されてから2年ですが、これで救われた企業が4000から5000件あると私はみています。債権放棄を受けても、その後の環境は好転していませんから、放棄によって得られる効果はなくなってしまうんです」
−−危ないといわれている企業は再建に力を入れているようですが
熊谷 「ダイエーも再建計画を発表して持ち直したようにみられるが、正確にはこの時点での倒産を回避した、ということ。この先はわかりません。関連会社にとっては、再建の間も店舗閉鎖の影響を受けるわけです。債権放棄を受けたゼネコンもギリギリのところで倒産を免れていますが、下受け企業に回される仕事は採算割れの工事ばかり。それじゃあ傷を大きくするだけでしょう」
−−倒産の傾向は?
熊谷 「具体名は言えないが、老舗の倒産が増える状況です。経済の仕組みが根本から変わり、戦後からやってきたことが全部帳消しになってしまう。一生懸命働いて蓄えた資産も価値が目減りし、含み損が出て、時価会計で表面化して債務超過になる。一体何のために働いてきたのか、ということになる」
−−日本企業は強かったはずなのに
熊谷 「それが反対。戦後の日本企業、日本経済は結局、大した実力は持っていなかった。銀行の護送船団方式に象徴されるように、大半が温室育ち。責任の取り方も知らずに経営してきた。あらゆる産業が親方日の丸。輸出力があると思われてきた電機、自動車も結局、米国の技術を導入して米国市場の成長に依存してきただけ。実力もなく、荒谷さんが言うように、競争力を損なうような高コスト構造になっちゃったから、中国の追い上げにあっという間に飲み込まれちゃうわけです」
荒谷 「私はソ連崩壊が日本経済に決定的なダメージを与えたと考えています。熊谷さんの話にもありましたが、日本経済はこれまで霞が関(中央官庁)が企画、立案、実行のすべてを仕切り、保護と規制を使って企業間の競争を和らげて運営してきました。これは米ソの冷戦下で米国が日本を味方につけたいがために、いじめきれなかったからできたこと。いわば“谷間の灯火”。でもソ連崩壊後の米国にとっては、日本は戦後ひとりの戦死者も出さずにカネを蓄えてきた国、としか映らない」
熊谷 「温室育ちの企業ばかりだから、どこが倒産してもおかしくない。いま強がっている企業も。ダイエーの再建計画もゼネコンの債権放棄も、つぶせる範囲にまで有利子負債を縮小してから、という流れですから」
−−倒産させるための再建計画?
熊谷 「再建計画も一部をのぞいて、大部分はうまくいっていない。計画立案者が自分の責任回避のために計画を作っているようなもので、動機が不純。本気で再建させるためのものじゃない。『結果はダメだったけど、あのときは正しいと思った』という論法。結局問題を拡大して終わっちゃう」
−−倒産は激増する?
荒谷 「続くでしょう。それも1年や2年じゃない。しかも政策としては金融も財政も打つ手がない。残念だけれども、唯一あるのが日本人の価値観をアメリカンスタンダードに乗せることですね。それには価値観を柔軟に変えられる若者への世代交代が不可欠です。特に上場企業は誰が社長になっても同じ。パソコンや英語なら50歳代でも60歳代でもできるけど、価値観を変えることは難しい。ぼくらの理解しがたいような茶パツ、ピアスのおニイちゃんや、厚底サンダルのおネエちゃん達の方が新しい時代に適応できるかもしれません」
−−倒産の負債総額では、昨年は前年を下回っていますが
熊谷 「前年と比べて減っている、ととらえるのは間違い。一昨年は千代田生命、協栄生命という2件で7兆円もの倒産があって、飛び抜けて大きかっただけ。傾向としてはずっと増え続け、大型倒産が出る傾向になってきた。流通ではヤオハンジャパンに始まり、長崎屋、そごう、マイカルときて、ダイエーかというところまできた。バブル崩壊当初は、倒産の上限は3000億円程度だったが、97年4月に旧日本債券信用銀行の子会社が3社で2兆円だった。今後は5兆円、10兆円倒産もあるかなと考えなくちゃいけない」
−−いま不安なのは?
荒谷 「上場企業なら株価100円割れ企業。50円割れならいつ倒産しても不思議じゃない」
熊谷 「バブル崩壊後、メーンバンク主導で再建計画を作っている企業やメーンバンクの支援を受けている企業は要注意。銀行が企業を再建する力を失っているから。マイカルの倒産ではっきりしたが、メーンバンクがいくら『支援する』と言っても下位行がどんどん手を引いてしまう。昔は銀行が乗り込めば再建に希望が持てたが、今はない。ダイエーもメーン3行の足並みが乱れていて、UFJにどんどん負担がかかってくるでしょうね」