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巨額の有利子負債に苦しむダイエーの再建策が17日、固まった。主力3行による4200億円の金融支援を受け、同社は抜本的な経営改革を急ぐ。ダイエー発の「金融不安」を回避するため、早期決着に動いた政府や主力銀行の事情を追った。
◇銀行の事情
金融支援は、UFJ、富士、三井住友の主力3行とダイエーが再建計画取りまとめに向け本格的な交渉を始めてから、10日余りでスピード合意した。「ダイエーが破たんしたら、影響が3行の財務にとどまらず、日本経済がデフレスパイラルに陥るきっかけになりかねない」との共通の危機感があったからだ。しかし、具体的な支援方法を巡っては、銀行間の激しい対立があった。交渉は銀行とダイエーの間というより、銀行間のやり取りが主舞台だった。
主力3行は当初、ダイエーの抜本的な金融支援について、「ゼネコン(総合建設会社)が再編・整理された後、3月までに取りまとめる」という考えだった。しかし、昨年9月以降、ダイエーの株価が下落し、一部の納入業者が現金払いを要請するなど動揺が拡大した。昨年12月には株価が100円を大きく割り込み、3行からも「前倒ししないと、大変なことになりかねない」との声が出始めた。
協議の当初、債権放棄と、銀行の債権を株式に代えるデット・エクイティ・スワップにする案が有力だった。交渉筋によると、富士は責任問題がクローズアップされる債権放棄をやめ、デット・エクイティだけの支援を主張した。
デット・エクイティなら、銀行はダイエーの将来性に投資したという理屈がつく。銀行の台所事情も厳しく、債権を放棄するより、将来値上がりの可能性がある株を保有したいというわけだ。また債権放棄の場合には、昨年のゼネコンの例をみても、減資で株主負担が求められる。
三井住友とUFJ側は、「3000億円の債権をすべて株式に転換すれば自己資本のほとんどが優先株という異常事態になり、ダイエーの配当負担が増える。世間に通用するはずがない」と反対した。激しい議論の応酬が続いたが、結局、綱引きの末、「問題の先送り」と市場の厳しい評価を受ける可能性の高いデット・エクイティだけでなく、あえて減資を伴う債権放棄が取り入れられた。「透明性を強調することができる」(関係者)計画にもなった。
◇政府の危機感
銀行間の対立を抑え込み、決着が急がれた背景には「政府の強い意向」(主力行首脳)も働いたとされる。
ダイエー問題は場合によっては金融危機の引き金を引きかねない――首相官邸や金融庁は昨年末に金融危機が現実味を帯び始めたことに危機感を募らせていた。
小泉純一郎首相は「あらゆる手段を講じて金融危機を回避する」と宣言、柳沢伯夫金融担当相も銀行への公的資金再投入に柔軟な姿勢を見せ始めた。これに並行して金融庁は主力行の間で意見の分かれていたダイエーの再建策の早期取りまとめを迫っていた。再建策の大枠が明らかになった先週以降も、市場の評価に神経をとがらせ、銀行側から連日協議の報告を受けていた。早期決着を促し続けた。
巨額負債を抱えるダイエーだが、金融庁の分類では銀行が融資の回収に注意を要する要注意先債権にとどまり、不良債権には位置付けられていない。ダイエーが破たんし、主力行に追加負担が重くのしかかれば、4月からのペイオフ(破たん金融機関の預金払戻保証額を元本1000万円とその利息とする措置)凍結解除を控え、金融システムに対する信用不安を招く。ささやかれる「2、3月危機」が現実のものとなりかねなかった。
政治、行政、さらに金融界まで一体となって初めて懸案処理の道筋が見えた。17日午後、柳沢金融担当相は首相官邸に出向いた。「再建計画はうまく進んでいる」。21日の国会召集前にダイエー問題が一段落したという柳沢氏の報告を首相も評価した。
ただ、ダイエーの再建策がまとまっても株式市場が本格的に上向く気配はない。不良債権問題のもう一つの焦点のゼネコンなどの処理も控えている。年度末に向け、2月危機、3月危機の火種はまだ残ったままだ。
◇今後の焦点
ダイエーの新再建3カ年計画は、グループで抱える有利子負債のうち、ダイエーOMC分を除く1兆7500億円を、今後3年間で1兆円以下に減らすことが柱だ。主力3行の4200億円の金融支援のうち、債務の株式化と債権放棄の合計額は、そっくりそのまま負債削減につながる。
さらに、リクルート株などの資産売却やマルコー、イチケンなど数多い子会社の事業売却を進め、売却益で負債を返済する。
また、赤字を垂れ流している大型ディスカウント店のハイパーマート、コウズを中心に、不採算店を数十店閉店し、本業の小売業を中心にグループで年間400億円前後の経常利益をあげる体質にし、負債の圧縮を加速させる。閉店で、家主への違約金など1000億円規模の損失が生じるが、主力行の優先株の減資などで穴埋めする。