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私たちとお金のかかわりは、この先どうなるのか。欧州で国境を超えた単一通貨
ユーロの現金流通が始まる一方、世界ではアルゼンチンのように通貨危機が
間欠泉のように噴き出す。地球規模の新しい基準通貨と市民による地域通貨の
創造を提唱し、欧州で注目の著作「マネーの将来」で知られるベルナルド・リエター
氏にインタビューした。 (ミュンヘン=和気靖)
−− ユーロの現金流通開始で、世界を取り巻く通貨の環境はどう変わるでしょうか。
「ユーロなしで今日の欧州は存在しないと言っても過言でない。通貨統合の歩
みがなければ、多くの国が自国通貨の切り下げを迫られ、危機に直面したはずだ。
今後10年を見れば、ドルのちょう落がいつあってもおかしくない中で、ユーロは国際
的にも重みを増すだろう。しかし、通貨史的に重要なのは、たとえユーロでも、従来
型の国家通貨の限界は超えられないのが明白になることではないか」
ユーロにもいずれ限界
「欧州中央銀行はインフレ抑制を政策の最優先に置き、ユーロは次第に強い通
貨となるだろう。しかしその陰で、中央銀行が顧みることのない失業といった社会的
な問題は深刻化する。国境を超えたユーロだけでは、身近な地域の持続的な繁栄は
保てないことに人々は気付く。コミュニティーの内部で相互扶助的に利用される『地域
通貨』の補完的な役割に光があたるわけだ」
−−人とお金の関係自体に、変化が起きるということですが。
「通貨の長い歴史の中で、最初の節目は紙幣の誕生だった。1万円札はモノとしては
紙切れにすぎないのに、『みんなが1万円の価値があると信じる』ことで通用している。
この仕組みを使って、国家は紙幣の印刷代を差し引いて、大きな通貨発行益(シニョレッジ)を
手にしてきた。人々は国家通貨が唯一の 『本当の』お金であるという考えに慣れ過ぎ、
希少であるお金を手に入れるために競争するのが当たり前と思ってきた。
しかし、そのシステムがほころびを見せ、2度目の節目を迎えている」
−−そこで、地域通貨の出番ですが。
「仕事の能力も意思もあるのに、雇い主にお金がなくて働けないのは、国家通貨が
不足しているからだ。ならば、身近な地域でそれを補う仕組みを創造しよう。これが地域
通貨の原型だ。参加者が提供できるモノやサービスを公開し、キップや通帳を仲介役に
コミユニティーの中で取引の輪を広げる。インフレとは無縁で、通貨危機のアルゼンチン
でも、生活防衛的に地域通貨の試みが続いている」
地球規模の基準通貨を
−−ただ、巨額の資金が瞬時に世界を駆けめぐる今の国際金融システムの負の側面は
消せないのでは。
「外国為替取引額が、モノとサービスの総貿易額の100倍近い現実を見れば、通貨が
投機の道具になっているのが分がる。安定し、信頼できる地球規模の基準通貨が必要だ。
私は、国際貿易で重要な1次産品やサービスで構成するバスケット価格『テラ』を提唱し
ている。貿易実態をきちんと反映させれば、インフレ防止機能も内蔵できる。
机上の空論ではない。ネット取引の発達に伴い、貴金属を裏付けにした仮想通貨による
電子決済はすでに始まっている」
−−20年後の「マネーの将来」は。
「国家通貨だで成り立っていないのは確かだろう。
@『テラ』のような国際基準通貨Aドル、ユーロ、そしてアジア代表の3大通貨
Bその他の国家通貨C地域通貨、の4種が多層的な環境を作っていると見る。
コミュニティーのレベルで、地域通貨は人々の自発的な経済活動を促すエンジン役になる
だろう」
エコマネー 日本も貢献
−−円は3大通貨に入りませんが。
「ユーロの歩みから見ても、通貨統合は政治と表裏一体だ。アジアでは円や中国元では
なく、ASEAN諸国を核にしたユーロ型の新通貨が発展する可能性が高い。が、落胆する
ことはない。日本では加藤敏春氏が唱える『エコマネー』や堀田力氏が進める『ふれあい
切符』を始め、地域通貨の先駆的な取り組みが各地で広がっている。その経験を世界に
発信できるではないか。通貨覇権の争いより、よほど人類に貢献する」
「マネーの将来」著者 ベルナルド・リエター氏
1942年生まれ。ベルギー中央銀行でシステム部門幹部として欧州通貨単位
ECU(ユーロの前身)の立案にかかわった。現在は米カリフォルニア大バークレー
校の持続可能資源センター研究員。主著「マネーの将来」 (邦訳は「マネー崩壊」)
に続き、近著「マネー」ではお金と人間心理の関係を分析している。