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約4200億円の金融支援を柱に、難産の末にダイエーの再建策が決まったが、ダイエーグループに約1000億円の融資残高をもつのが新生銀行(八城政基社長)。そごう破たんの際も問題になったように、融資に損失が発生した場合に国が買い取る「瑕疵(かし)担保条項」を持つ。期限は来年3月までで、それ以降は新生銀自身が被らなくてはいけない。ドライな新生銀では「非情の金融ビジネス」の色合いを一段と強めており、リスク回避で「貸し剥(はが)し」の荒業に出ると、一気にダイエー再建の波乱要因になりそうだ。
「株主資本主義との折り合いがつかないので辞めました」
2002年の年賀状にこう添え書きした新生銀行の元幹部は、新年から株主資本と対極に位置する協同組合組織で第2の人生をスタートさせた。審査部門の幹部であったこの社員にとって瑕疵担保を逆手に取った新生銀の融資回収は耐えられなかったという。50歳を過ぎた年配銀行員に転職を決意させた新生銀の「株主資本主義」には、利益のためには手段を選ばない冷徹な資本家の論理が潜んでいる。
「外部には知られていないが、昨年11月から45歳以上の社員を対象にした早期退職制度が導入された。外部の出向者を含め旧長銀時代を引きずった年配者は基本的にはいらないということでしょう。特に、国内畑が長く英語がしゃべれない者は実質的にリストラ対象ですね」
新生銀の中堅社員はこうつぶやく。英語ができるかどうかによって、職とポストが決まってくる現実がそこにある。本店10階の集中応接室で取引先を対象としたプレゼンテーションやミーティングが行われることも少なくないが、説明は英語、好むと好まざるとにかかわらず英語は必須になる。高学歴で優秀といわれた旧長銀の社員もフルについていける人は数少ない。
八城社長は、旧長銀のビジネスモデルを全面的に転換。これと合わせて、人材の構成も大きく変えた。45歳以上の旧長銀社員を対象としたリストラが行われる半面、毎月、外国人を中心とした採用が続いているのだ。各分野に精通したスペシャリストとして採用される外国人の多くは、任期付きで、「特命」扱い。高額の報酬で迎えられる。
実際、新生銀の役員報酬は、2000年3月期の総額1億8700万円から、2001年3月期には4億9900万円と3倍近くに膨れ上がった。「外部から役員を採用した際、マーケットの水準で採用したため」(新生銀行)という。同行の外国人比率は確実に高まっており、「もはや新生銀は邦銀ではない」(大手銀行役員)との声さえ聞かれ始めた。「英語ができなければ外部から来る外国人の上司に取り入ることもできない。競争は激しい」(中堅社員)という。
「旧長銀時代から新生銀に勤めている社員で、転職を考えていない人は皆無だろう」と指摘する新生銀OBは少なくない。事実、昨年11月の早期退職制度導入以前より、人材の流出は続いている。外国人の採用はその穴を埋める意味合いもあるとされる。人材流出の最大の理由は「もはや旧長銀時代の良さがすべて失われつつあること」(新生銀OB)で、お客とじかに接する営業の現場ではこの思いはいっそう強い。
「瑕疵担保条項が切れる2003年3月以降、新生銀は収益的にやっていけるのか。果たしては再上場できるのか」という不安。新生銀はビジネスモデルを転換し、従来の邦銀から一線を画しつつある。しかし、顧客はそれほど早く変わることはできない。
ダイエー再建支援という銀行団の大プロジェクトのなかで、ひとり「貸し剥し」といった荒業に出てくるのではないかといった見方すらあり、今後の新生銀の動向に関心が高まりそうだ。