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長期円高予想が崩壊すると何が生じるか?・河野龍太郎氏 (nikkei net マネー&マーケット 相場を読む 景気・業績)

投稿者 sanetomi 日時 2002 年 1 月 24 日 00:04:02:


 日米の長期金利を見ると、1980年前後から日本の長期金利が米国に比べて3―4%程度低い状態が続いている。日本の長期金利が米国の長期金利よりも恒常的に低い状態を維持している最大の理由は「長期の円高予想」にあると考えている。つまり、長期の円高トレンドとその継続の予想があったから、日本の長期金利が低位で安定していたということである。円安が進展しているが、仮に「長期の円高予想」が崩れると長期金利は上昇するのだろうか。(河野龍太郎・BNPパリバ証券チーフエコノミスト)
「いずれは円高に」が外貨建て投資を抑制


 外貨建て資産を保有するリスクプレミアムを考慮すると、日米間で以下のような金利裁定が生じる(金利はいずれも名目である)。

 日本の長期金利=米国の長期金利+ドルの予想上昇率(円の予想減価率)―リスクプレミアム

 これを書き換えると、次のようになる。

 米国の長期金利―日本の長期金利―リスクプレミアム=円の予想上昇率(ドルの予想減価率)

 この金利裁定式そのものは因果関係を示すものではないが、長期でみると、為替レートの長期予想が先決変数であると考えている。そう考えると、日本の投資家の行動がうまく説明できる。例えば、「日銀のゼロ金利政策が数年続くとの見通しが大勢であるにもかかわらず、なぜ、これまで日本の機関投資家が外貨建て資産の購入に積極的になれないのか」。この問いに対する最も納得の得られる回答は「機関投資家の間に長期の円高予想が存在するため」というものであろう。実際に多くの日本の投資家は過去30年間にわたる円高トレンドで、外債投資では常に為替差損を被っており、円高懸念を理由に掲げる機関投資家が多い。結局、利回りの高い外債投資を行っても、円高で、日本の低い金利と同じになるケースが多かった。

米国は不況期には円高・ドル安政策を採用


 こうした、マーケットの「長期円高予想」の背景にはこれまでのリポートでも何度か説明したとおり、米国政府の円高・ドル安政策がある(1971年のニクソンショック以降、78年のカーター政権のブルーメンソール財務長官のドル安政策、85年の第2期レーガン政権のベーカー財務長官のプラザ合意、93年の第1期クリントン政権のベンツェン財務長官のドル安政策など、歴代政権は円高・ドル安政策を採用してきた)。そして、日本政府も円高を容認してきた。このため為替市場参加者の多くは、「米国の製造業が苦況に陥ると、ホワイトハウスが円安を容認しない、あるいは円高・ドル安政策に転換する」といった考え方を持ってきた。日本経済の動向にかかわらず、数年に一度生じる米国の景気後退で円高が生じるといった「長期の円高予想」がマーケット参加者にビルトインされているのである。

 これまで実現した「長期円高トレンド」は、日本にディスインフレやデフレをもたらし日本の低い長期金利の原因となってきた。一方で米国のインフレ率があまり上昇しなかったのは、米国の物価が日本ほど為替レートに影響されないことがある。それでも金利裁定式と整合的な形で、米国の長期金利は恒常的に日本の長期金利よりも高い状態が続いている。

今回はドル安政策採用せず・日本の長期金利は上昇へ


 今回、米国は製造業部門の大幅な業況悪化にもかかわらず、ドル安政策を採用していない。米景気が早期に回復に向かえば、過去30年で初めてドル安政策を採用することなく米国の製造業が回復することになる。これによって、市場参加者の「長期の円高予想」を覆す可能性がある。「長期の円高予想」が崩れると何が生じるか。金利裁定式の因果関係が「為替レートの長期予想が原因で、日米の長期金利差が結果」だとすると、「長期の円高予想」が崩れた時、日米間の長期金利差の縮小が始まる。先に述べたように、米国の物価はあまり為替レートに影響されないため、米国の長期金利には大きな影響はない。一方で、円安によって日本のデフレ予想が和らぐ形で、日本の極端に低い長期金利水準が上昇する。

実質金利の低下で総需要が刺激


 仮に、1ドル=150円や160円を超えるような円安が進み、長期の円安予想が支配的になれば、インフレ予想の醸成によって、日本の長期金利は2%どころか、さらに上昇する。日本では長期金利は上昇するが、この場合、デフレ予想の緩和あるいはインフレ予想の醸成で実質金利は低下するため、総需要が刺激され、日本経済は「流動性の罠(わな)」から脱出することができる。もちろん、円安が進んでも、1ドル=145円程度にとどまり、円安が持続しなければ、「長期の円高予想」が崩れることはないかもしれない。例えば、98年当時も1ドル=147円まで円安が進展したが、結果的に見ると、「長期の円高予想」を覆すほどではなかった。長期の円高予想が持続する場合は、低水準の長期金利が続くと同時に、デフレも続くことになるだろう。いずれにせよ、長期金利の大きなトレンドは、「長期の為替予想」に大きく依存しているのである。


http://markets.nikkei.co.jp/column/quoteboom/quoteboomCh.cfm?id=s351n000_23&date=20020123&ref=1

# いろんな意見がありますね。さすが「強気」の河野さん。




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