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金融パニック寸前
小泉官邸はあの銀行の動向をマーク まもなく預金保険法102条に基づき緊急会議
危ない! 「預金が切り捨てられる」銀行
不良債権に押しつぶされ、株価下落にもてあそばれ、ペイオフの影に震え上がってボロボロになった日本の銀行。経済オンチの首相がまもなく断行する公的資金再注入は、有効なのか。それとも日本そのものが破綻して、第二のアルゼンチンになってしまうのか。国の存亡をかけたドラマが、もうすぐ始まる。
重大なことが起きつつある
処理しても処理しても減らない不良債権と、1年間で半分、3分の1と下落し続ける銀行株に挟まれて、2002年、ついに“金融大激震”が目前に迫ってきた。
自民党ベテラン代議士が語る。
「実は昨年暮れも押しつまった頃、政府首脳が、メガバンクのトップの一人を極秘で呼び出した。で、挨拶もそこそこにある企業名を挙げ、『あそこへの債権放棄を考えてもらえないか』と、単刀直入に要請した。誰もが名前を知っている超有名企業です。銀行トップはびっくりした様子で、『(その会社に融資している)まず他行の方々とも相談させていただきます』と答えるのが精一杯でした」
また、別のメガバンクの幹部もこう明かす。
「この年末年始には、自民党の建設族の先生方に何人も会いましたよ。とにかく『ゼネコンの○○を潰さないでくれ。そのかわりに公的資金は必ず入れるよう努力するから』という話ばかり。こちらが“陳情”を受けたという感じで、私も長いこと銀行員やってますが、あんなことは初めてでしたね」
いずれも、いましかあり得ないエピソードである。
昨年10月から行われていた金融庁による銀行への特別検査が、現在、ほぼ終わりつつある。本当の問題企業はどこなのか、銀行はきちんと貸倒引当金を積んでいるのか、大企業が破綻したらどの銀行がどれだけダメージを受けるのか――と、これまでベールに覆われていた実態が、次第に明らかになりつつある。
4大メガバンクすべてが国有化されてもおかしくない銀行の現状とあわせて、「これは大変なことになる」と、政界は金融パニック寸前の事態に陥っているのだ。
慌てているのは首相官邸も同じ。全国紙政治部デスクが証言する。
「先日など、福田康夫官房長官と記者団とのオフレコ懇談で、極度の経営不振と言われるある都銀の話が出たのですが、福田さんはしきりと『あの銀行は絶対に潰しません』と繰り返していました。しかし、言えば言うほど不自然な感じで、記者たちはみんな『これは何かあるな』『何か裏で重大なことが起こっているのかもしれない』と勘ぐり始めた。福田さんは打ち消すのに必死になっていましたね。
一人の記者が『株価があんなに額面近くまで落ちても大丈夫なんでしょうか、あの銀行』と聞きましたが、福田さんは答えませんでした」
ところが、日本の金融システムが絶体絶命のところまで追いつめられているのに、ひとり呑気なのは小泉純一郎首相だ。
首相はここまで国家的大問題になっている経済や金融にさほど興味がないばかりか、自分から積極的に勉強しようという意思もないようだ。
「小泉内閣の閣僚たちの間で、ときどき不良債権処理の話や金融機関の再編の話が出て、議論になることもあるんです。ところが首相はニヤニヤしながら、『まあ、閣内にいろんな意見があっていいんじゃないか』と言うばかりで、自分の意見はけっして言わない。関心がなさそうなんです」(前出・政治部デスク)
前出の自民党ベテラン代議士によると、12月中旬、国会終了後の与党党首との会談で、首相はこう発言している。
「日本の景気が悪い悪いというけれども、けっして悪くない。ディズニーシーや大阪のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)は客で満員じゃないか。それに、失業率が増加しているといっても、有効求人はバブル期並みの700万人もある」
ディズニーシーの客だけを見て景気がいいと語るなど、あまりにも単純でとても一国の首相のセリフとは思えない。求人もたしかに増えてはいるものの、その大半は条件が劣悪すぎて、職を決めようにも決められないというのが実状だろう。
「この首相の発言を聞いた保守党の野田党首は『そうじゃないだろう。現実をよく見ろ』と反論しようとしたが、その程度の“景気判断”をまともに相手にするのもバカバカしいと思ってやめたそうです」(前出・政治部デスク)
今月末までに破綻の可能性
民主党の上田清司代議士はこう明かす。
「小泉総理は、金融庁の特別検査の報告書を持って来いとさえ言わないそうです。見方がわからなければ、ブレーンの木村剛さん(KPMGフィナンシャル社長)か誰かに聞くべきです。そして、株価が100円を割ったような企業に対して、『なぜここに引当金を積んでいないのか』と指摘すればいい。われわれにはできなくても、総理がその気になればできることです」
ほかにも、
「小泉首相は、不良債権処理に危機感を持っているのかどうか、さっぱりわからない。失業者対策も、ぜんぜん首相の口から聞いたことがありません」(民主党企画委員長の仙谷由人代議士)
「いまは、資金繰りがつかなくなった企業が“突然死”する、信用リスク危機の状況にあります。僕はそれに対応すべく、倒産管理政策や産業再生委員会の設置を提言してきたのですが、官僚の反対などもあって議論さえ封じられた。小泉政権は、この大問題への対策がまったくできていません」(自民党の渡辺喜美代議士)
と、首相の経済無策ぶりに批判の声は多い。
「ディズニーシーが満員だったから景気はいい」という首相の珍説を聞いた都市銀行の役員は、
「小泉さんが金融も景気も市場も、ろくにわかっていないというのは本当だったんだな。その程度の認識では本当に危ない。もはや“時間の問題”なのに……」
と、ため息まじりに漏らしている。いったい何が“時間の問題”なのか――。
帝国データバンク情報部・中森貴和課長は言う。
「もはや金融クラッシュは避けられない。このまま事態が進めば、早くて今月の末か2月に、株価の暴落からどこかの大手金融機関が破綻に至るシナリオは十分考えられます。かねてから、経営状況が厳しいといわれていたあさひ銀行や大和銀行だけではなく、みずほやUFJが大打撃を受ける可能性もある」
大手銀行は、「30社リスト」まで出回った“問題大手企業”に莫大な融資を行っている。ゼネコンの熊谷組、フジタ、ハザマ、佐藤工業、飛島建設、長谷工コーポレーション、流通のダイエー、商社の日商岩井や丸紅などが、これまで何度も「ポスト青木建設はどこだ?」と、経営不振を取り沙汰されてきた。
これらの会社は、もちろんどこも生き残りに必死だ。焦りまくるある社の広報担当者などはマスコミに“危機”の記事が掲載されるや抗議。
ところが最初は、「経営状態はどんどん回復している」と主張するのだが、そのうち「いまは会社が坂道から転げ落ちようとしているのを必死に踏ん張って止めている状態なのに、なぜこんな記事を書くのか」などと言い出すありさま。何のことはない、みずから「坂道を転げ落ちそうな状態」だと認めているのである。
小泉首相が緊急会議を開く日
銀行も企業もここまで切羽詰まった状況で、いま政府首脳たちは、これまで封印していた「公的資金の再注入」を公言し始めている。
小泉首相が年頭の会見で、
「金融危機を起こさないためにあらゆる手段を講じる」
と言って公的資金の注入を事実上宣言すれば、安倍晋三官房副長官や神崎武法公明党代表もこれに同調。訪米中だった竹中平蔵経済財政担当相も1月7日、オニール米財務長官らに「必要ならば金融機関に税金を注入する」と“公約”した。
小泉首相は昨年まで、注入の必要はないと言っていたから、年明けから急に百八十度姿勢を変えたことになる。
「首相とその周辺が公的資金再注入をこれだけ口にするのは、裏を返せば、金融危機の可能性が近づいていると自分から言っているようなものです。放っておけば2月危機、3月危機が来ると、事態を相当深刻に見ているはず。とりあえず公的資金注入によって、弱った銀行と金融システムを落ち着かせ、一時的に危機をしのごうというのです」(経済評論家・奥村宏氏)
実際、大手銀行が危機に陥ったとき、どのように公的資金を入れてしのぐか、その“手続き”もすでに確認されている。順を追って説明しよう。
(1)金融危機に陥るおそれがあるとき、首相はまず、預金保険法102条に基づく「金融危機対応会議」を招集する。会議のメンバーは、議長を務める首相のほか、官房長官、金融担当相、財務相、日銀総裁、金融庁長官といった面々。
(2)この会議で、ある銀行が経営難に陥り、それが金融システム全体に波及すると判断されれば、その銀行に対して資本注入や資金援助、一時国有化などの措置を取る。これが公的資金の注入である。
(3)そのための原資として、預金保険機構に「危機対応勘定」として確保されている15兆円を用いる。
――というのが概要。つまり小泉首相は、この15兆円で、瀕死の銀行や金融システムを救おうとしているのだ。
ある金融庁関係者が言う。
「実はいま、小泉首相の『早めに注入しよう』という指示を受けた金融庁幹部は、どのタイミングで緊急の金融危機対応会議を開くか、様子をうかがっているんです。金融庁内では『早ければ1月21日の通常国会召集前に開かれるかもしれない』という話も飛び交っています」
また、経済問題に詳しいある自民党代議士によると、小泉首相は、2月8日からカナダのオタワで開かれるG7(先進7ヵ国財務相・中央銀行総裁会議)までに、金融危機対応会議を開いて、公的資金注入による処理策を具体化しておこうという意向だという。
だが、この会議が開かれることを事前に察知され報道されれば、その銀行に取り付け騒ぎが起きかねない。
では、いったいどんなタイミングで首相は会議を開き、公的資金注入を決断するつもりなのか。前出の自民党代議士は言う。
「一つの指標は、銀行の株価。ただでさえどんどん下がっている銀行株ですが、もし額面に近づくようなことがあれば、ただちにその銀行に公的資金を入れる用意をする」
ちなみに1月8日の終値で、あさひの株価は84円、大和銀ホールディングスは82円と、ともに100円割れの状態だった。
三井住友は565円、三菱東京グループは865円(額面50円に換算・以下同)だが、「みずほの290円、UFJの311円という株価も低すぎる。異常事態と言っていい数字」(経済ジャーナリスト・須田慎一郎氏)なのだという。公的資金注入のきっかけになるのは、どの銀行の株価下落になるのか――。
本当は200兆円が必要だ!
こうしてまもなく、金融界はこれまでとまったく違った大混乱に見舞われることになる。4月からのペイオフ解禁による預金の大移動に、不良債権処理による銀行の体力消耗がミックスされ、さらに保有している国債の暴落に脅えなければならない、非常に危険な状態だ。
かりに公的資金が注入され、金融システムが一息ついても、けっして問題が解決したわけではない。
「ペイオフ解禁になって、どこの銀行が危ないという話があっという間に広がれば、預金者はすぐ銀行に並んで取り付け騒ぎが起こる。取り付けが起これば、どんなに業態がいい銀行でも潰れます。経営状態が厳しいと囁かれていたところではなく、まさか、と思うような銀行が取り付けで潰れ、金融システム全体に波及するかもしれません。
また、もし公的資金で一時的にしのいでも、日本の銀行は海外でも国内でも、まったく信頼されなくなる。銀行株はさらに叩き売られ、預金封鎖をするしかなくなるケースも出てくるかもしれません」(前出・奥村氏)
ある金融アナリストはこう語る。
「いま進んでいる円安が、今後ますます加速するのではないかという見方が、専門家の間では有力です。そうなったら、1年後の為替レートが1ドル=180〜200円になると想定しておく必要も出てくるでしょう。そうなれば円は信用を失って売られ、海外への資本逃避(キャピタル・フライト)が進むことも十分あり得ます」
もちろん銀行は、いくら公的資金を注入されても、信用がなければ預金は流出してしまう。その場合、とても危機対応勘定の15兆円ではカバーできない。
「15兆円はあくまでソルベンシー・リスク(資本勘定危機)に対応できる規模のカネで、いったん預金の流出が起きれば、リクイディティ・リスク(流動性リスク)が発生します。その場合、15兆円どころかその10倍以上、200兆円程度の資金がないと、預金流出の分はカバーしきれません」(前出・金融アナリスト)
つまり、このまま金融危機を避けるため、公的資金15兆円という“対症療法”で処理しようとすれば、このカネをまたずるずるドブに捨てるだけ、という結果になりかねない。おまけにさらに新しい混乱が続発し、最後にはデフォルト(債務不履行)に陥って預金の切り捨てをせざるを得なくなったアルゼンチンの二の舞だ。銀行といえども、預金がなければ、払い戻しには応じられない。社会的に暴動も含めた大混乱が起こりかねないだろう。
民主党幹事長代理の熊谷弘代議士は言う。
「公的資金を再注入するのならば、前回、'99年3月に7兆5000億円を注入したときの政治的責任を問いたい。当時の責任者は柳沢金融相でしたが、彼は『これで不良債権はきれいになった。金融システムに問題はない』と語っていました。ところがその査定が甘く、不良債権問題はさらに深刻化して現在に至っている。彼の言葉は何だったのか。再び国民の税金を注ぎ込むのなら、柳沢氏にはその責任をとっていただきたい。もちろん、銀行経営者の経営責任も追及します」
戦慄の金融パニックは、はたして避けられるのか。