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大手スーパー、ダイエー<8263>の経営再建を巡る混乱は、主力3行による金融支援策が決定したほか、産業再生法の適用が確実視されるなど、ひとまず収束の方向に動き出した。ダイエーの経営破たんが金融システム不安の引き金を引く最悪の事態は、回避されたと言えよう。ただ金融・資本市場では、過剰債務に苦しむ企業の先行きを不安視する信用リスク懸念が続き、ダイエーの危機回避が市場マインドを好転させるには至っていない。そして早くも“次なるダイエー問題”が、焙りだされようとしている。
●資金決済が迫る某ゼネコン
ダイエー危機回避後の金融界で話題となっているのは、あるゼネコンの資金決済を巡る交渉の行方だ。このゼネコンは昨年末、数百億円分の支払い不全が視野に入り、完全に窮地に立たされていた。主力取引行は、金融庁による特別検査で同社向け債権の引当不足を厳しく指摘されていたうえ、同社の株価は30円以下の著しい低水準に張り付いたまま。株式市場では破たんが不可避とみて一部国内投機筋が仕掛け売りに出ようとしていた。土壇場で取引行が短期の資金を融通したことから、「年末年始の大型倒産はひとまず回避された」(関係筋)格好だ。
ただ、この資金は、あくまでつなぎ的な性格の強いもので、今月末までには「足」が到来する。「ダイエー支援が決まった直後だけに取引行の対応が注目を集めている」(先の大手行筋)という。つまり、「債権放棄など安易な金融支援を実行しにくい環境にある」(同)ため、再度つなぎ融資が出るか、あるいは破たんに追い込まれるか熱い視線を集めている訳だ。
このゼネコンが経営破たんに追い込まれれば、市場全体が一時的にショック安に見舞われる可能性は十分ある。他方で、同社がダイエーと同様に救済されれば、「日本の不良債権問題はまたもや丸ごと先送りされる」(米系運用会社幹部)との思惑が高まるのも必至だ。
●「日本売り」につながるリスクも
つまり、このゼネコンの扱いが、年度末に向けての試金石とみなされている側面もあるのだ。この主力取引行は、ダイエーとは関係が薄く問題を同列に語るのは気の毒な面もある。たが市場では「政府や銀行の今後のスタンスを図るリトマス試験紙と、とらえ始めている」(銀行系証券)のも事実だ。
予兆はすでに出ている。ダイエー支援策がほぼ固まりかけた前後から、金融・資本市場ではヘッジファンドなど海外投機筋の動きが顕在化していた。ダイエーが破たんの危機を回避し、取引行も資本不足に陥る事態を免れたことで、「経済の合理性に歪みが生じた」(ファンド筋)として売り仕掛けに出ようと準備を始めたのだ。「ファンド勢が一見して売り仕掛けとわかるやり方で参入を始めた」(米系投信ファンドマネージャー)ことが、市場心理に暗い影を落としている。
今回の官民あげてのダイエー救済劇は、「ツー・ビック・ツー・フェイル」(大きすぎて潰せない)という問題先送り的な要素が大きいのは否めない。今後、金融庁と銀行が特別検査を通じて進める「再生させる企業」と「淘汰される企業」の選別作業の過程で、延命色だけの濃い“再生劇”が繰り返されれば、日本市場は再度海外投機筋の売りを浴び、金融システム不安、資本逃避の恐怖にさらされる可能性がある。
(相場 英雄)