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(回答先: 預金凍結法(週刊ポスト2月1日号の中吊り) 投稿者 FP親衛隊国家保安本部 日時 2002 年 1 月 20 日 19:03:57)
(1)日本版SECが銀行株保護で市場管理
昨年末、米国ヘッジファンドに売りを浴びせられて銀行株が一斉に急落し、金融危機が高まった。年が変わっても、株価はほとんど動かず、いつつるべ落としにされるかわからない緊張状態にある。
その背景には証券取引等監視委員会(日本版SEC)の徹底した市場管理がある。
日本版SECは今年1月4日の大発会以来、毎日、銀行株の売買状況を監視し、少しでも下がりそうになると、外資系証券会社に電話を入れ、
「○○銀行の株価の動きがおかしい。妙な取引はないでしょうね」――と、文字通り、取引を監視し、売りを防いでいるのである。
「今の状況で大手銀行の株価がさらに下がると、それをきっかけに取り付け騒ぎに発展しかねない。そんなことになればダイエーの再建計画づくりをはじめ各行が進めている不良債権処理に大きな狂いが生じるから、金融庁もSECも臨戦態勢で売り浴びせ防戦の指揮をとらざるをえない」
金融庁幹部はそう打ち明けるが、外からは、日本の株式市場は国の統制下にあって、市場原理の手足が縛られていると、一段と冷たい視線を浴びている。
その一方で小泉内閣は市場活性化対策として株取引の優遇税制を打ち出しているのだから、いかにもチグハグに映る。
金融庁は市場管理によって銀行の危機を取りつくろいながら、その間、UFJ銀行の発足に合わせるように、旧三和、東海両行を主力行にしているダイエーに事実上の解体に近い大リストラを迫り、殖産住宅を破綻させるなど不良債権処理を急がせている。
そうした一連の金融対策は2月にもメガバンクや大銀行に軒並み税金を再投入し、金融危機を一挙に解消するというシナリオに基づいている。
小泉純一郎首相は昨年末に自民党3役と会談して税金投入の基本方針を固め、年頭会見では、「金融危機を起こさないためにあらゆる手段を取る」と表明したし、1月中旬に訪米した竹中平蔵経済財政相に至っては米国政府に税金再投入を事実上約束している。
(2)税金を押しつける政府・金融庁と拒む銀行
いま、メガバンク側が税金投入に難色を示し始めており、金融庁との間で深刻な対立が生じている。
UFJ銀行の寺西正司(てらにし・まさし)新頭取は就任会見で、ダイエー処理のために税金投入を要請するかを問われると、
「公的資金の要請は必要ないし、ありえない」――そう気色ばんで否定した。
大手銀行幹部が語る。
「実は、金融庁側からはすでに2月中旬にも大手行に3回目の公的資金を入れるから準備をするようにという意向が伝えられている。前回(99年3月)は柳沢伯夫・金融相が経営責任を問わないと約束したが、今回はその柳沢氏自身、『税金再投入はする必要がない』といってきたことの政治責任があるから、金融庁は国民の手前、銀行経営陣の責任を厳しく追及する姿勢でいる。ほとんどの大手銀行は、税金投入で逆に危機説が広がったり、改めて経営責任を問おうという柳沢氏のやり方に反発して申請しない構えだ」
とりわけ前回の税金投入では最後まで反対して受け入れなかった東京三菱銀行は、今回も絶対に申請しない方針を決めたが、そうすると、金融庁は突然、同行に検査通告を行なった。銀行関係者の間では、“税金再投入にまた反対すれば徹底的に不良債権を検査する”という金融庁の露骨な見せしめ検査、恫喝とみられている。
金融危機の真っ只中、この期に至ってはもう一度税金で金融システムを立て直すしかないというから、そんなもんかと見ていると、金融庁と銀行が“やる”“いらない”と、押しつけ、押し戻しを演じている。
(3)塩川財務大臣の密命「金融パニックに備えよ」
塩川財務大臣の密命「金融パニックに備えよ」
≪預金凍結法≫の制定。塩川正十郎財務大臣の≪密命≫は、あくまでもさりげない会話の中で財務省内に伝えられたという。
昨年12月初め、塩川財務相は大臣室で同省幹部を前に思い出話でもするように切り出した。
「日本は戦後、奇跡といわれる高度成長をした。最近、自分なりに近代日本の経済史をまとめたりしているんだが、かつて金融危機が起きた時には預金を凍結したりと大変だった。それに比べればペイオフ解禁なんてどうってことないんだよ」
雑談の中とはいえ、幹部たちは大臣がペイオフと預金凍結を引き比べて語ったことが気にかかっていた。
それから数日後、財務省では予算編成が大詰めにさしかかり、主計局幹部が数人のスタッフをつれて予算案を報告するために大臣室を訪ねた。塩川財務相は報告と説明がひと区切りしたとみると、若い職員たちに語りかけた。
「俺が大学を出た翌年、日本は戦争に負けたんだ。当時は本当に苦労した。ものすごいインフレが起きて、混乱を防ぐために銀行預金が3日くらい封鎖されたこともあった。今では考えられない時代だったんだな」
塩川氏が指摘したのは1946年2月、時の幣原喜重郎(しではら・きじゅうろう)内閣が戦後インフレを抑制するため、5円以上の紙幣を強制的に預金させ、そのうえで預金を封鎖した『金融緊急措置令』のことだった。
財務官僚たちは大臣室を退室した後、主計局に戻りながら、「大臣は3日くらいといったが、あの時は1週間以上預金を凍結したはずだ」などと話し合ったというが、首脳部は老練な塩川氏がいわんとするところを的確に受けとっていた。
伏線があった。
7年前、折しも阪神・淡路大震災に襲われ、日本の金融システムは大混乱に陥った。
「それを教訓に、当時の大蔵省内では、不測の金融システム危機に備えた“戒厳令”が必要だという議論が高まり、その研究が盛んに行なわれた。その後、金融危機が高まる中で、一時的な預金の凍結などの強制措置が可能かどうかという議論も出たことはある。が、大蔵接待疑惑で省内がガタガタになり、金融庁が分離されるに至って議論は立ち消えになった」(財務省幹部)
いったんは消えた危機対応策づくりが財務省内で再び息を吹き返したのが昨年3月だった。
旧日本長期信用銀行の危機をきっかけに制定された破綻銀行を一時国有化する金融再生法が4月から廃止(2年間の時限立法だった)され、ペイオフ解禁を1年後にひかえて新しい制度で危機をどう乗りきるか、財務省内で≪演習≫と呼ばれるシミュレーションが計画された。
実は、それが≪預金凍結法≫の出発点だった。
(4)財務省の極秘作業「金融危機演習」
現在の預金保険法では、大銀行の破綻で金融システムが危機に陥ったり、有力地銀に連鎖的な取り付けが発生して地域経済に重大な影響を及ぼすことが予測される場合、首相を議長とする『金融危機対応会議』を招集しなければならない。
預金保険機構には総額70兆円の資金枠があり、すでに破綻処理や税金投入によって半分の35兆円ほどが使われているが、2001年度から新設された『危機対応勘定』の15兆円はそのまま残っている。
金融庁が計画している税金再投入にはこの15兆円が使われる。
しかし、金融危機対応会議はこれまで開かれたことがなく、昨年末になって、首相官邸が財務省と金融庁にひそかに会議招集の手続きを定めるように指示したばかりだ(1月11・18日号既報)。
ただし、財務省は新制度での≪演習≫に取り組んできた。その内容の一端を関係筋が初めて明かす。
「まず仮の金融危機対応室を設置し、職員の中から、“首相役”や“金融相役”“日銀総裁役”を決め、実際に“○○銀行で取り付け騒ぎが始まった”という連絡が入るところから対応作業を始める。それぞれの役の職員が、例えば首相官邸や、日銀から駆けつけるのにどれだけの時間がかかるか。その間に起きる事態、関係方面からの問い合わせの想定。状況に応じた発表の仕方。会議での状況説明と内容、必要措置の内容――など、時間を追ってシミュレーションを進めながら、何が必要で、そのためにはどんな法的、組織的な裏付けがなければならないかを洗い出す。その≪演習≫を基にして、実際に対応室が機能するための法令や省令を検討していく」
そうした演習は昨年3月にいったん準備されながら、森内閣から小泉内閣への政権交代で一時中断され、最近になってまた復活した。その中から浮かんだ問題点などは塩川氏にも報告されている。
それにしても、いざ預金凍結が実施された場合の国民の損失ははかりしれない。
預金凍結は日本では戦後の混乱期、アメリカでは1930年代の金融危機の際、連邦政府が全米の銀行を一定期間休業させた『バンクホリデー』までさかのぼる。
最近では、97年に通貨危機に見舞われたタイのケースがある。
タイ政府は庶民向け金融機関(ノンバンク)の半数以上を強制的に業務停止にし、再開後も、それらが発行する金融債は100万バーツ(当時のレートで約350万円)未満は6か月間、1000万バーツまでは3年間、それ以上は5年間は現金化できなくする措置をとった。金融機関は取り付け騒ぎで資金流出するのをさけられたものの、資産を凍結された国民が失ったものは大きい。
(5)金融再編は乱脈経営隠し
金融庁の税金投入計画も、財務省の≪預金凍結法≫にしても、小泉内閣の金融再生とは、つまりは国民の金をアテにする発想でしかない。
そればかりか、目下、金融庁が金融再編を大義名分に掲げて進めている信用組合、信用金庫、第2地銀の相次ぐ“破綻処理”の裏には、この際、国民の税金を湯水のように使って乱脈経営と監督責任を覆い隠してしまおうという狙いが透けて見える。
柳沢金融相は金融庁内に「地方は1県2行体制でいく」という方針を示し、この10か月間で信金、信組、第2地銀の46の中小金融機関を破綻処理した。戦後最高の銀行倒産である。
破綻した信金、信組は県ごとに統合していくというのが金融庁の方針だが、不思議なことに、地域密着型の信金、信組がこれだけつぶれても、地域経済への影響はそれほど大きくない。なぜか。
自民党金融族議員が重要な指摘をする。
「例えば信用組合の場合、預金しているのも、融資を受けているのも組合員で、理事長以下の経営陣もそうだ。いわば借り手と貸し手が同じだから本来なら巨額の焦げつきなど容易には出るはずがない。それが破綻するのはよほどの乱脈経営だろう。しかも、中小金融機関には地元の資産家が1000万円以上の大口預金をしているケースが非常に多い。役員も出資金とは別に大口預金をしている。経営内容を知っている彼らにすれば、4月のペイオフ解禁後に破綻すれば預金が戻らないから、たとえ出資金はなくなっても預金が全額保護される今のうちにつぶした方がいい。金融庁もそうした事情を知りながら、駆け込み倒産を認めている。だから、地域経済への影響は小さい」
これでは金融庁と金融機関の出来レースというより、“損しないうちにつぶしてしまえ”という計画倒産に近い。
預金の全額保護とは、実質的には乱脈融資の尻ぬぐいにしかなっていない。
財務省有力OBの話を聞くと気が遠くなる。
「メガバンクといえども経営基盤はまだ極めて弱い。体力を回復させるには、危機対応勘定の15兆円をすべて使っても足りない。財務省の現役とOBの協議でも、おそらく新たに60兆〜70兆円を投入しないと金融機能を完全回復させることはできないという試算もある。大手行だけでも30兆円は必要だ。国民の理解を得るにはどうすればいいか。塩川大臣のいう預金凍結を可能にするには、国会で法案を成立させなければならないが、その検討を始めたことが国民に知られるだけでも、金融危機がいかに深刻かをアピールできる。塩川氏はペイオフ解禁後をにらんで預金凍結という戒厳令を準備すると同時に、いずれそれを大々的にぶちあげて、預金凍結という事態を招かないために税金投入に道を拓くつもりかもしれない」
国民に対し、銀行救済にあと60兆〜70兆円を負担するか、それとも≪預金凍結≫を選ぶかという二者択一を迫るつもりなのか。
(6)地方銀行を覆う実力政治家の影
昨年12月28日に破綻した石川銀行の場合、金融庁は1年半前の2000年9月の中間決算の時点で同行が債務超過に陥っていたことを認めている。
その間、石川銀行は地元企業などを対象に2回の増資を行ない、222億円を集めたが、破綻によってドブに捨てたも同然となった。
金融庁はなぜ、1年半もの間、石川銀行を延命させてきたのか。その背景には、森内閣から小泉内閣にまたがる政権中枢の関与があった疑いが浮上した。
石川銀行は地元選出の森喜朗前首相の有力後援企業として知られる。政治資金収支報告書によると、同行は95〜99年までの5年間に森氏の資金管理団体に192万円を献金している。2000年3月期には大幅な赤字を出しているから、経営難の中でも森氏への献金を続けていたことがわかる。また、昨年辞任した高木茂前頭取が設立当初から取締役に就任していた関連会社『白山ゴルフ』(はくさんゴルフ)に、森氏が取締役として就任していたこともある。森氏自身、事務所を通じて、「石川銀行は選挙区の有力な企業で、高木前頭取の先代からの長いお付き合いがあります」と認めている。
疑惑の発端は、その森氏が首相に就任した直後の2000年7月、石川銀行を舞台に起きた≪不正融資仲介事件≫だ。
これは同行の元行員らが北九州のホテル経営者に融資話を持ちかけ、巨額の違法仲介料を得ていたもので、警視庁は元行員ら3人を出資法違反容疑で逮捕した。
ちなみに、事件で逮捕、有罪判決を受けた主犯格の男性は、叔父が福田派(現在の森派)の元国会議員であり、男性の長男の結婚式には小泉首相も出席していた。小泉氏も金融庁も、なぜ森→小泉内閣を通して石川銀行を延命させ、今度は突如破綻させたのか、改革というなら、まず自分の足下から情報公開すべきだろう。