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政府は19日の閣議で来年度の政府経済見通しでの実質国内総生産(GDP)の成長率を0%と決めるが、民間シンクタンクなどがマイナス成長を確実視する中での「マイナス回避」は、新規国債30兆円枠の堅持など、経済政策運営上の都合を優先させたものと言える。その結果、“見通し”は“目標”の色彩が濃くなり、今後、形がい化が進むおそれもある。
今回の策定作業は、予想されるマイナスをどの程度プラスに近づけるかが焦点だった。米国をはじめ世界経済が急減速し、日本の景気も後退色を強めていることから、内閣府は当初見通しで初めてマイナスに設定する方針を固めていた。
しかし、マイナスとした場合、30兆円枠を堅持する財政再建路線が原因とみなされ、与党が反発するのは必至だった。大詰めを迎える来年度予算案編成で、財政拡大を求める声が広がれば来年度の税収見通しも大きく左右される。このため財務省もマイナス成長には反対した。
内閣府ではプラス成長を視野に入れた時期もあった。「史上初めて、当初見通しの時点からマイナスにすることにちゅうちょした」(幹部)ためだが、「財政再建を進めてもプラスにできるなら今後も財政縮小を迫られる」と懸念した与党と、「年度途中で達成困難となった場合には補正予算編成の圧力がかかる」と心配した財務省が、それぞれ別の理由で異論を唱えた。
こうした迷走をみて、経済財政諮問会議の民間メンバーは「政府見通しは政府目標の意味合いがある」との意見書を作成したほど。今回の作業が関係者の政局や政策を巡る思惑に振り回されたことを浮き彫りにした。
結局、日本経済に大きな影響を及ぼす米国経済について、楽観論が広がる米国内の民間予測を後ろ盾とする異例の手法を採用。米経済の底入れを今年10〜12月ごろに設定し、日本経済も来年1〜3月ごろに追随するシナリオを描いた。
最後に「マイナス0・1%」か「0%」とする案が残った。結局、「誤差を考えれば2案ともプラスもマイナスも容認される数字であり、無理にマイナスにする必要はない」(経済産業省幹部)との判断が政府内で大勢を占めた。
政府見通しは米国経済が来年早々に回復しない限り達成困難とみられている。現実味が薄い数値と判断されれば、今後、見通しの信認低下は避けられない。最近は、無理をして数字のかさ上げをする必要はないという方針に転換したはずだが、政府事情を優先し、実体経済を軽視することになれば、内閣府の分析能力自体が弱体化する。政府見通しは岐路に立たされている。 【白戸秀和】
[毎日新聞12月15日] ( 2001-12-15-23:41 )