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米エネルギー大手エンロンの破たんを巡って、新たな問題がクローズアップされている。同社の監査を担当した会計事務所が、巨額の簿外債務や、不明朗な会計処理を見抜けなかった点に投資家や債権者の不満が高まっている。日本でも、企業破たんの際に会計監査の甘さが指摘されるケースが目立つが、全米7位の売上高を誇った優良企業の崩壊は、世界で最も厳格とされるアメリカの会計制度のほころびも露呈させる結果となった。(シリコンバレー 京屋 哲郎、ニューヨーク 坂本 裕寿)
「エンロン及び関連会社の資産、財務状況の開示は適切だ」。今年2月末、エンロンの会計監査を行った米大手会計事務所「アーサー・アンダーセン」は監査資料にコメントを付けた。だが、その後、エンロンの巨額の簿外債務や不正な会計処理が相次いで発覚、コメントから9か月後にエンロンは破たんした。
見通しが甘かったのは、アンダーセン側が、エンロンが資金調達に利用していた特別目的会社(SPE)の経営実態を十分に把握していなかったためだ。このSPEが連結決算の対象外だったことから、十分な指摘ができなかった。
エンロンは93年、カリフォルニア州の年金基金と折半でSPE「ジェダイ」を設立、資金をデリバティブ(金融派生商品)などに投資するシステムを作った。だが、その後、株価下落などを背景にジェダイは巨額損失を抱えた。
当初は、出資比率が50%だったため、ジェダイは連結の対象外だったが、97年以降、年金基金に代わって、エンロンが実質支配する別のSPEが、ジェダイに出資した。この結果、ジェダイへの出資は実質的に50%超となり、連結対象にする必要が出ていたのだ。
この新たなSPEがエンロンの支配会社であることを知らなかったとするアンダーセンは、後になって、ジェダイを連結対象とするよう指示したが、後の祭りだった。エンロンは今年11月、97年以降の利益について、総額5億8600万ドル(約740億円)を減額修正、信用不安の引き金となったが、その大部分がジェダイなどの損失だった。
12日の米下院公聴会で、アンダーセンのジョセフ・ベラルディーノ最高経営責任者(CEO)は「エンロンが重要な情報を開示せず、(連結対象に加える)判断ができなかった」と述べ、監査が不適当との批判に反論した。
だが、会計事務所側の責任は重い。会計基準を検討する米財務会計基準委員会は80年代に、SPEに関する情報開示の強化を検討したが、「顧客からの反発が強い」と会計事務所側が主張、改定が見送られた。エンロン破たんを契機に、SPE対策を放置してきた監査側の責任が問われることになる。
さらに、監査法人が監査とコンサルタント業務を同時に行うことの是非も問われている。会計事務所は会計監査から、金融取引、情報技術などのコンサルタント業務に軸を移しているが、アンダーセンが昨年、エンロンから受け取った費用は、コンサルタント業務などのサービスが2700万ドルで、監査関連の2500万ドルを上回った。この現状をニューヨーク大のエリー・バートフ教授は「コンサルタント業務を行うことで監査にバイアスがかかりかねない」と批判する。
(12月16日01:47)