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昨年12月から続いた政府・財務省の「円安容認」発言のトーンが弱まりつつある。わずか1カ月で5%以上も円安に向かった満足感からか。11日の東京外国為替市場には、財務省の溝口善兵衛国際局長の「どんどん円安が進む状況ではない」という発言が、しばらく続くと思われた「円安容認」というコーラスに不協和音が入ったように聞こえたのではないだろうか。
「このところ下げ足がちょっと速いような気がしている」――。円がドルに対して39カ月ぶりの安値を更新したばかりの1月9日午前、福田康夫官房長官の円安相場についてのコメントは、為替市場に不穏な空気を広げるきっかけとなった。もとから東京市場では、国内金融機関のリパトリエーション(本国への資金還流)観測で円買い・ドル売りが警戒されていたが、官房長官の発言報道は円相場の上昇に拍車をかけた。結局、その日の円はドルに対して同日の安値から1円近くも値を上げた。
外国為替市場では昨年12月以降、政府・財務省が円安を誘導しているとの観測が広がり、円独歩安の展開が連日続いた。年明け後は一段と円安基調が強まり、1月9日の東京市場では1ドル=133円37銭と昨年12月初めの終値と比べ、7%を超える円安・ドル高を記録した。
「ファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)からみて強すぎたのが修正されている。自然なことだ」(黒田東彦財務官)、「相対的なファンダメンタルズからみて円は高過ぎた」(溝口善兵衛国際局長)、「124、125円台の時は円が高いと思っていた。もう少し安くなっても日本の評価は適正だ」(塩川正十郎財務相) ――。昨年12月の為替市場には、円安進行を促すような政府・財務省の要人発言が、通信社の端末を通じてコーラスのように流れた。
こうした要人の発言を支えにドル買い・円売りが一段と強まるとみられた為替市場が、1月9日の福田官房長官の円安に対するコメントを契機に雰囲気を変えたのは興味深い。というのも、円のドルに対する過去の動きをたどってみると、98年10月以来の円安水準1ドル=135円台割れまで円安が進んでいた場合、その次の節目として円は140円台を一気に下回ることも想定できたためだ。
円安は輸出依存型の企業が多く上場している東京株式相場にとって基本的には株高要因として働く。ただ、外国人投資家の立場からすると円安は保有する日本株へのマイナス要因にもなる。 11日現在の日経平均株価は1万円台。だが、ドルベースでみた日経平均株価は80ドル台割れとなっており、円ベースで17年ぶりに1万円の大台を割った昨年9月の水準よりも一段と低くなっているのが現状だ。母国通貨で評価しなければならない海外投資家にとって、円安は保有する日本株の目減りを意味する。外国人投資家が昨年1月の時点で仮に日経平均株価の採用全銘柄を購入していた場合。円相場が1ドル=140円台へと現在の水準から10%円安に進むことを想定して単純に計算すると、外国人投資家の保有株の評価損は円ベースで 23%近くのマイナス、またドルベースでは10%のマイナスとなり、まさにダブルパンチを浴びることになるほど深刻化する。
外国人投資家は日本の株式相場の動向を見極めるうえで大きな存在。為替差損を相殺することができるほどの上昇を見込めないと日本株が判断された場合、すべての市場関係者が心配する「外国人による日本売り」が起きる公算がある。 こうした切羽詰まった状況に近づいているという認識なのか。あれほど声高々に聞こえていた政府や財務省からの「円安容認」コーラスはトーンを弱め始めている。