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香西氏 「金融」が波乱要因
賀来氏 米の早期回復疑問
植草氏 株と円さらに下落
吉川氏 財政再建と両立を
日本経済新聞社と日本経済研究センターは10日、東京・大手町の日経ホールで新春景気討論会を開いた。出席者は米国景気の後退や国内金融システムへの懸念などから、今年前半の日本経済は厳しさが増すとの見方で一致した。ただ金融機関の不良債権処理のスピードや、財政再建の進め方をめぐっては、「改革優先」か「まず景気回復」かで、意見が分かれた。(文中敬称略)
――景気の現状と今年度末(3月末)までの動きをどうみるか。
植草 現状が厳しいということに異論はないだろう。1番の要因はマクロ政策運営だ。2000年に日銀がゼロ金利政策を解除し、財政も緊縮路線を続けている。財政・金融の両面で景気にブレーキをかけた。
賀来 年度末までに景気が底を打つ可能性は極めて小さい。政策要因よりも、前回の景気回復局面で設備投資の伸びが情報技術(IT)関連に偏るなどぜい弱さを抱え続けていたことを重視している。
吉川 景気が「悪化を続けている」という政府の見方は大変正直だ。ただ政策が現在の不況を引き起こしたとは考えていない。日本経済の足腰が弱いという基本的な問題がある。
香西 昨年は輸出の減少という外的な要因が大きかった。輸出主導で年後半に小幅の回復も見込まれるが、国内で信用不安の恐れが高まるなど金融面の波乱要因は大きくなっている。
――米国や世界経済の見通しは。
吉川 米経済は長期的にみると安定した構造。10年間の平均成長率は70年代から90年代にかけて年3%台を維持している。これが本来の姿だ。テロの影響もあって昨年後半はマイナス成長に陥ったが、今年後半から年率4%程度の成長に回復することもあり得る。
賀来 米経済が今年後半に3-4%成長に回復するという見方もあるが疑問だ。2000年までの行き過ぎの是正には時間を要する。欧州が米国に代わって世界経済のけん引役となることも期待しにくい。
植草 米当局は財政・金融の両面で迅速で大胆な政策を打ち出し、テロの影響を遮断した。今年の成長率は1-1.5%が見込まれ、(景気後退局面から)緩やかな調整局面に戻る可能性が高い。米株価も横ばい圏が予想される。
――日本で財政などの構造改革と景気回復が両立すると考えるか。
吉川 財政再建は避けて通れないが、景気の状況も悪い。経済財政諮問会議では、政府の支出が民間投資や消費の呼び水となるよう工夫すべきだと主張している。財政支出の中身を見直し、景気と財政再建の二兎(と)を追う。
植草 中長期的に財政を立て直すことは国民的な課題だ。しかし財政再建を急ぐあまり景気が一段と悪化すれば財政赤字は結局膨らんでしまう。2-3%の成長軌道に誘導することが先決だ。
賀来 財政再建を目指すなら、納得できる長期の見通しを示すことが重要。諮問会議の中期経済財政展望の素案がそうした形になっているか疑問だ。
香西 政府が何をすべきかを考えなければならない。必要だと判断すれば国民に負担増を求めてもいい。雇用のセーフティーネット(安全網)は税金を徴収してでも手厚くすべきだ。
――不良債権処理の進め方や金融政策はどうあるべきか。
植草 不良債権処理はルールを明確に定めることが重要だ。処理の過程で存続不能な企業は整理しないといけないが、その企業の事業は存続・再生させるようにすべきだ。
香西 日銀の金融政策はやるべきことをやっている。しかし日本経済はデフレ圧力にさらされており、これが簡単に取り除けるという幻想を持つのは危険だ。コスト高を修正する過程では、多少円安が進行してもデフレ解消は難しい。
――2002年度の日本経済の見通しは。
吉川 実質成長率は良くてゼロ%だろう。年度後半には持ち直し、中期的に2.5-3%成長につなげる第一歩としたい。
賀来 輸出頼みに変わりはない。来年度中に構造改革による前向きの動きが出てくるとは見込みにくい。
植草 マイナス1%程度の実質成長になるのではないか。企業収益も減益が続く。株価は今年半ばに向けて下落圧力が強まり、円相場は1ドル=140円台に向かうとみている。
香西 成長率は若干持ち直す可能性もあるが、1%程度のマイナス成長もあり得る。厳しさが増す4-6月期までをどう乗り切るかが焦点だ。