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【ワシントン逸見義行】
アルゼンチンのデフォルト(債務不履行)懸念がくすぶり続け、同時不況に向かいつつある世界経済に暗い影を落としている。年内の国債償還のめどはついたと見られるものの、3年以上にわたる景気後退、赤字体質の財政構造が危機を深刻化させ、一触即発の状態は変わっていない。
市場では「(通貨をドルに切り替える)ドル化か、通貨ペソの切り下げしか選択肢はない」との見方が大勢で、アルゼンチン政府はドル化を視野に入れ始めた。
カバロ経済財政相は14日夜の会見で、週末が期限の7億2000万ドル(約920億円)の国債償還を実施したと発表した。年金基金に国債を引き受けさせるなど窮余の策を取った結果だ。週明けには5億ドル超の償還を控え、危機の越年は確実になった。来年の1、2月も、12月と同規模の償還が必要で「薄氷を踏む」ような政策運営が続く。
アルゼンチン政府が抱える公的債務は1320億ドル(約16兆8000億円)。国内総生産(GDP)の約半分を占める。政府はデフォルト回避のため、財政赤字ゼロ法を成立させるとともに、現在の国債を低利回りの国債に借り換えることを促進し、利払いを抑制する方針を打ち出した。
国際通貨基金(IMF)などからの融資で資金繰りを賄う作戦だったが、国内の政治情勢から財政赤字の抑制は予定通り進んでいない。今月1日には、銀行の預金流出を防ぐため、国債の借り換えが終わるまでの約90日間、銀行預金からの現金の引き出しを週250ドルに制限した。
IMFは、赤字ゼロ計画が進んでいないことを理由に13億ドルの追加融資を認めず、融資交渉は来年に先送りされた。
アルゼンチンは1ドル=1ペソという完全な固定相場制を91年に採用し、それまでのハイパーインフレから脱却した。現在の国家経済の破たんを防ぐには「変動相場制移行による通貨切り下げの実施が必要」との声がIMF内からも出ている。
しかし、政府の公的債務の8割がドル建てで「ペソを切り下げると、利払いが巨額になり、経済は壊滅する」(米投資銀行)。カバロ経済財政相も「切り下げは考えられない」と明言しており、「ドル化しか生き残りの道はない」(国際金融筋)との見方が広がっている。
実現すれば、アルゼンチンのような規模の大きな国がドルを正式に採用するのは初めて。簡単な道のりではない。
[毎日新聞12月15日] ( 2001-12-15-18:50 )