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公的資金を受けている大手銀行は、経営健全化計画で義務付けられている中小企業向け貸し出しの増額方針を転換し、無理な貸し出しは避け、リスクに見合った金利を取ることを最優先させる検討に入った。結果的に減額となる可能性が高い。中小企業向け融資は大手行だけで100兆円を超えているが、適正な金利が取れていないケースが多い。不良債権の新規発生につながっているほか、「構造改革が進まない要因」との指摘も出ている。
中小企業向け融資は、99年3月に大手行が公的資金の注入を受けた際に金融当局に提出した経営健全化計画で、政治の要請もあり、増額を義務付けられた。当時は、銀行の「貸し渋り」批判への対応の意味もあった。
大手行(現在、公的資金の入っていない東京三菱、三菱信託を除く)01年9月末の残高は、みずほグループの33兆円を筆頭に全体で105兆6000億円に上る。みずほを除いて、3月末比で軒並み減った。しかし、02年3月末に向けては全体で3兆6000億円の増額計画を金融庁に提出している。
中小企業向け融資をめぐっては、有利子負債の圧縮を急ぐ大企業の子会社(中小企業)などが返済を急ぐ一方で、問題先企業からの回収も必要。また、複数の大手行では、リスクに見合った金利の一斉適用を検討しており、増額は極めて困難だ。計画達成を絶対視すると、無理な融資を行い、新たな不良債権を築きかねない。
問題は、優良企業は別として、それ以外の企業から「適正金利が取れていない」(大手行首脳)ことだ。例えば、要注意先債権では、年3%程度の破たんリスクがあるにもかかわらず、「0・5〜1%程度の金利しか取れていない」(大手行役員)という。リスクに見合った金利が取れなければ、仮に今後、公的資金が再注入されても、銀行の資産内容の劣化が止まらず、さらに新たな支援策が必要になるという悪循環に陥る懸念がある。
大手行の中小企業向け貸し出しの無理な増額が、金融システムを揺さぶりかねない危険性は、公的資金が本格投入された99年3月当時から、一部有識者に指摘され続けてきた。だが、経営健全化計画に縛られ、大手行はリスクを度外視した低利の融資を維持し、「事業価値を持たない企業まで延命させてきた」のは否定しようがない。
大手行に加え、政府系金融機関も、市場金利を下回る低利融資を実施してきた。こうした低利融資は、右肩上がりの高度成長期にはプラスに働いたが、結果として、国内サービス業など非効率な企業の温存につながったといえる。
一方で、「政治サイドからの要請は、収益が出せないような企業の延命要請ばかり」(大手行役員)というように、政治家の圧力も無視できない。こうした企業への利益誘導を許してきたことが、銀行の資産内容の劣化をまねき、金融システム自体を揺るがしかねないところまできている。
公的資金注入行の中小企業向け融資については、金融再生委員会の告示で「原則として、融資残高を増加させること」と明記されている。ただ金融庁は、これまでも、銀行の最終利益確保義務などについて、経営健全化計画の運用では柔軟な姿勢をとっており、学者などからは「中小企業向け融資の義務づけ自体を見直すべきだ」との声が強い。 【藤好陽太郎】