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【日米独でマイナス成長】
新年を迎えた世界経済には、米同時テロの後遺症、先行きへの不安で、暗雲が立ち込めている。
年末にIMF(国際通貨基金)が発表した最新の経済予測によると、今年の世界の実質成長率は2・4%だ。
最近20年間の世界の平均成長率で比べれば、1982年の1・1%、91年の1・4%などよりも高い。
だが今回の場合、深刻なのは米国、日本とドイツなど、主要国がそろって景気を後退させていることだ。
昨年秋以降、米国では、巨大総合エネルギー会社のエンロンが、日本でも大手スーパーのマイカルや中堅ゼネコンの青木建設などが相次いで破綻(はたん)した。
民間企業ばかりか、中南米の大国、アルゼンチンが政治・経済混乱で巨額の公的債務の返済停止に追い込まれ、世界経済の先行き不安を増幅している。
世界経済が脆弱(ぜいじゃく)さを増す中で、同時テロの再発、特定国・地域の紛争激化、政治・社会の動揺、あるいは経済危機が引き金になって、世界同時恐慌に発展する事態は、絶対に防がねばならない。
同時テロ直後、日米欧の金融当局は各国市場に潤沢な資金を供給し、動揺を抑えるのに成功した。この経験を踏まえ政策協調を強化すべきだ。
もっとも、危機克服の有効打となり得る材料は少なくない。
まず、世界経済の急速な悪化と先行きへの大きな不安の原因になってきた、米同時テロに関連した情勢だ。
米軍などの軍事行動は予想以上のテンポで進展し、タリバン政権を崩壊させ、首謀者とされるウサマ・ビンラーディンを追い詰めつつある。
先行き不安が収まっていけば、米国経済は、昨年の初めから11回にわたる利下げの累積効果や、議会で審議中の総合経済対策の実施で、今年後半には、立ち直り始める、との見方も出ている。
米国の景気が底を打ち、輸入が回復していけば、アジアや中南米諸国などの経済にもプラス効果が及ぶだろう。
今月始まるWTO(世界貿易機関)の新ラウンド(新多角的貿易交渉)も順調に立ち上がれば、自由貿易促進を通じて世界経済の活性化につながる。
欧州でも、元日から始まったユーロ紙幣、硬貨の流通で、ユーロ圏を中心とした経済一体化が加速し、構造改革を促し景気回復につながる機会となりうる。
ただし、これらは、まだ可能性の段階だ。危機克服に生かすために、関係する国々の一段の努力が求められている。
問題は、米欧とともに回復を先導すべき立場にある日本経済が、最大のリスク要因となっていることだ。
【最大のリスクは「日本」】
日本経済の先行き不安を強める市場の見方は、円の対ドル、対ユーロ相場の続落傾向や、国際的な民間格付け機関による日本国債格付けの先進7か国中最低水準への引き下げなどに表れている。
経済協力開発機構(OECD)は対日審査報告で、金融機関の不良債権処理の遅れなどから「日本経済はデフレの連鎖に陥る恐れがある」と警告した。
IMFも日本に対して、一段の金融の量的緩和の拡大などデフレ収束への対応が必要、と異例の注文を付けている。
これらの背景には、「日本発の世界恐慌」への懸念の高まりがある。
危機克服の展望が見えない日本経済は、中長期的にみても、世界経済の流れから脱落していく危険を抱えていると言えるだろう。
世界経済は、WTOやIMFなど全世界を包含する多国間レベルとともに、欧州連合(EU)や北米自由貿易協定(NAFTA)など地域レベルの国境を超えた動きがますます活発になっている。
その中で顕著なのは、中国の台頭だ。昨年暮れにWTOに加盟し、世界の自由貿易国の仲間入りを果たした。7%台の高い経済成長、安く質の高い労働力、巨大な消費市場が世界各国の直接投資を引きつけている。
【不況克服し地盤沈下防げ】
日本企業も工場を続々と移転させ、産業空洞化をもたらしている。ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国が自由貿易協定(FTA)締結交渉の最初の相手に、日本でなく、中国を選んだ。
このままの状態が続けば、日本経済は世界、東アジアで地盤を沈下させ、長期衰退の道を歩むことになりかねない。
日本が全力を挙げて不況を克服し、景気を回復軌道に戻し、産業空洞化を食い止める努力を重ねることは当然だ。
並行して、東アジア地域の再生・発展の枠組み作りを率先して進めるべきだ。小泉首相は9日からASEANを歴訪しFTAを含む包括経済連携協定へ行動計画策定を提案するという。貿易、通貨など広範な連携強化の第一歩としたい。
(1月3日22:46)