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<NEWYEAR特報>日本経済は非常事態 都銀、大手流通、総合商社に経営破綻、そして2月政変の可能性(Weekly Post)

投稿者 sanetomi 日時 2002 年 1 月 04 日 14:54:19:

昨年末、日本は緊張した。領海内に北朝鮮籍と見られる不審船がまたもや出現し、海上保安庁が追跡した。結末は不審船が自爆と見られる沈没をして、乗組員が海上保安庁の救助を事実上拒否して行方不明となった。沈没する直前、不審船は巡視船をめがけてロケット弾を発射した。かつてない衝撃的な攻撃に日本は震撼したのである。しかも、海上保安庁の巡視船と不審船が武力衝突した海域は中国の排他的経済水域内にあり、新たな日中摩擦を呼び込む要因もはらんでいる。対米依存の安全保障の中で戦後暮らしてきた日本は、自前の判断による武力行使を初めて行ったが、政治的にも、外交的にも、軍事的にも不安な要素がいくつも重なっていた。
 緊張と危機はそれだけではない。実は政府中枢部は大手都市銀行1行の経営破綻情報を得て、極秘のうちに救済措置をとっていた。さらに、年明けとともに新たに大手流通会社と総合商社1社の経営破綻が間近と見られている。首相官邸は密かに非常事態宣言を発する準備をしている。日本経済は倒壊の危機に瀕しているといっても過言ではないが、自民党の主要派閥は政権交代の準備を始め、それを察知した小泉首相は解散総選挙で政権延命を図ろうとしている。経済危機下の政治の混乱が予期される。

(1) 官邸、財務省、金融庁がスクランブル体制 閣僚が都銀破綻に言及

 首相官邸は厳戒態勢のまま年を越した。
 銀行株が一斉に売りを浴びせられて急落した昨年12月中旬からの半月あまり、官邸と財務省、金融庁は小泉純一郎首相を議長とする『金融危機対応会議』をいつでも招集し、≪非常事態宣言≫を出せるようにスクランブル態勢を敷いている。
 日銀は昨年12月19日に緊急の金融緩和策を発表し、銀行の年越しの資金繰りを全面的にバックアップしたが、速水優総裁は記者会見で≪金融の番人≫らしからぬ異例の発言をして驚かせた。
「市場が金融機関に信頼を示していない。銀行に対する信任がなくなったら経済取引が止まってしまう。1〜3月は金融システムにとって非常に課題を抱えた時で、何が起きるかわからない」
 足元で広がりつつある金融不安に、日銀総裁があからさまに動揺している。
 同じ頃、重要経済閣僚の一人が記者団に非公式にある都市銀行の名を口にしたことが危機に拍車をかけた。
「P銀行の年内処理もありうる」
≪年内処理≫が即ち破綻を意味するのは明らかだった。市場はいよいよ混乱した。

(2) 焦点は金融危機対応会議の開催

 金融危機対応会議――これは昨年1月の中央省庁再編を機に内閣府に置かれることになったもので、これまでに一度も開かれたことがない。事務局はなく、株価暴落や大手銀行破綻による金融危機が表面化した場合に首相の指示で招集される。銀行の一時国有化や税金投入、さらに4月のペイオフ解禁後も特定の銀行の預金全額保護を決めることができる強い権限を与えられている。メンバーは首相の他に、官房長官、財務大臣、金融担当大臣、金融庁長官、そして日銀総裁の6人だ。
 ところが、経済閣僚が口にしたP銀行の破綻危機を受け、小泉首相が会議招集の準備を指示したところで、重大な問題に直面した。
 金融庁幹部が明かす。
「招集の事実が漏れただけで、市場が過剰反応して逆に危機を深める危険性がある。破綻する前に株を売ろうというインサイダー取引まで誘発しかねない」
 会議の招集それ自体がP銀行破綻を認証することになってしまう。金融パニックを誘う恐れが増大するだけに開くに開けない。
 小泉首相はあらためてこう念を押した。
「年内はなんとしても大手銀行を潰すわけにはいかない」
 柳沢伯夫金融担当相も記者団に再三、強調した。
「P銀行は絶対に潰さない」
 鍵を握るのは東京市場の動きだった。銀行株急落の背景には、米国ヘッジファンドによる空売り攻勢があることは市場関係者の常識となっている。
 そこで金融庁は≪市場封鎖≫ともいえる強硬策を発動したのである。12月21日、米国ゴールドマン・サックス証券に対し、無届けの空売りを繰り返していたとして証券取引法違反で1月11日までの業務停止処分を下した。
 その狙いが、他のヘッジファンドに、“これ以上、銀行株を売るな”という無言の圧力をかけることにあったことは歴然としている。
 そして厳戒態勢のまま新年を迎えたが、決して危機を乗り切ったわけではない。それどころか、速水総裁がはからずも口にしたように、1月から3月にかけて、日本経済はまさに何が起きるかわからない状況が続いている。

(3) 大手流通A社解体が新たな金融危機を招く

 戒厳令下の新年早々、大手流通A社から目が離せない。
 昨年末、メーンバンクの大手銀行とA社経営陣が債権問題について協議した。その際、銀行側は思い切った提案を突きつけた。
 銀行団が債権放棄するかわりに、A社は営業店舗の半数以上を占める赤字店を閉鎖、あるいは売却し、黒字店だけを運営する新会社を設立する――という内容だ。事実上の企業解体といっていい。
 A社には多くの銀行が融資しており、その処理がどうなるかは金融システムにかかわるだけに、交渉の経緯は逐一金融庁に報告されている。
「A社経営陣の返事は『年末商戦に賭けたい。それまで結論を待ってほしい』というものだった。年末商戦の数字は1月下旬までにははっきりする。売り上げが伸びていればいいのだが、そうでなければ最終的な処理に進まざるをえない」(金融庁中枢筋)
 A社の処理については融資銀行団の間でも意見の対立がある。メーンバンク提案の“解体”方式をとれば、銀行団は債権放棄によって巨額の損失を迫られるためだ。やり方次第では、複数の大銀行が大きなダメージを受けるだけではなく、数万社ともいわれる取引先にも深刻な影響が及ぶ。

(4) 総合商社「10兆円倒産」の危機

 日本経済が抱えるもう一つの爆弾が総合商社である。
 かつて日本経済の花形だった総合商社だが、今や大手の中にも大幅な赤字決算に追い込まれ、社債の格付けが投資不適格の直前まで引き下げられているケースもある。
 大手銀行の海外投資部門の部長は、商社の経営破綻が起きた場合、その深刻さは銀行以上だとみる。
「総合商社は社債やCPを発行して資本市場から独自に資金を調達し、コンビニや外食チェーン、IT関連のベンチャー企業などあらゆる分野に投資してプロジェクトを進めてきた。債権の格付けが下げられるほどコストがかさんで経営を圧迫し、万が一にも投資不適格級となると、資金がストップし、倒産に追い込まれかねない。そうなれば商社に資金を頼っている企業はたちまち連鎖倒産の危機に陥る。負債総額は甚大だろう。海外事業で商社と組んでプロジェクトを行なっている銀行も例外ではない。現実に、大手商社の中には資金繰りが相当苦しくなっているところがあるが、メーンバンクにも支援する余力がなくなっているだけに不安だ」
 総合商社大手ともなれば年商10兆円を超える。その倒産など悪夢以外の何ものでもないが、大手銀行の経営実態は今や前出のA社や総合商社という日本経済の屋台骨を支えてきた企業さえ見離さざるを得ないところに至っていることを物語っている。

(5) 政策転換求め「2月政変」の動き

 警鐘乱打の経済悪化に、自民党内では≪2月政変説≫が流れ始めた。
 小泉首相は依然として70%台の高支持率を保っているものの、目前に迫った危機への対応力を欠いている。
 たとえ金融危機対応会議を開いて非常事態を宣言したところで、その先の抜本的な経済再生の処方箋もなく、次々に押し寄せる大型倒産を乗り切れるのか。不安を募らせている国民に小泉首相が語った“対策”といえば、
「ペイオフ再延期はしない」
 そのひと言にすぎない。
 そうした小泉首相の姿勢を真っ向から批判しているのが亀井静香前政調会長と野中広務元幹事長だ。亀井氏は一貫してペイオフ延期と積極財政を主張してきたが、野中氏も最近にわかに金融危機に警鐘を鳴らしている。
 野中氏は銀行株が急落するといち早く、首相官邸や日銀総裁に先駆けて12月中旬の段階で、
「深刻なのは金融だ。来週あたり大きな動きが起きなければいいと思っている」
 ――と、大手銀行の危機を示唆する発言をしたかと思うと、続いて小泉首相に政策転換を迫った。
「日本経済が破綻したら再び立ち上がるのは困難だ。小泉改革もアナウンスなき政策転換をやってもらわなくてはならない」
 アナウンスなき転換とはいかにも野中氏らしい言い回しで、“景気重視の政策をとれば改革のポーズはそのままでも経済政策失敗の責任は問わない”――という意味に受け取られている。
≪2月政変説≫とは、野中氏や亀井氏をはじめとする橋本派と江藤・亀井派、堀内派らいわゆる“抵抗勢力”の中枢部が、経済危機の表面化を機に一挙に政権交代をはかるという見方に基づいている。
 江藤・亀井派の中枢幹部はこういってはばからない。
「いくら支持率が高くても小泉首相には経済立て直しはできない。政策転換の進言も聞く耳を持たない。このままでは2月には経済はどん底になる。もはや小泉総裁のリコールは秒読みに入った」
≪総裁リコール≫とは政変を意味する。すでにそのための伏線は張られている。

(6) 自民党総裁選規程改正案に張られた伏線

 日銀が金融緩和を発表した12月19日、自民党は総裁選規程の改正案をまとめ、1月の党大会で正式に決定する。
 ちょうど銀行株が売られて金融危機が進むのと同時進行で、自民党政治制度改革本部では総裁選規程改正をめぐって小泉支持派と橋本派、江藤・亀井派がぶつかった。
 焦点は昨年4月の総裁選で小泉総裁誕生の原動力となった党員投票のルール。森派の細田博之(ほそだ ひろゆき)総務局長がつくった執行部案では、党員投票は都道府県ごとに開票し、1位の候補者がその県の代議員数を全部得るという前回同様の≪総取り方式≫とされ、新たに国会議員の3分の2の議決で任期途中でも総裁選を行なうことができる≪リコール条項≫が盛り込まれた。
 この案は事前に山崎拓幹事長と橋本派の村岡兼造(むらおか かねぞう)元総務局長の間で合意され、同じ橋本派の青木幹雄参院幹事長も同意して11月29日にいったん決定された。
 総取り方式は来年の総裁選で再選を狙う小泉首相に有利とみられていた。
 ところが、翌日から野中氏サイドが巻き返しに出た。その先頭に立ったのが野中氏側近の鈴木宗男(すずき むねお)氏と亀井氏の腹心、松岡利勝(まつおか としかつ)氏だった。

(7)「小泉リコール条項」が盛られた

 政治制度改革本部の総会を舞台に、総裁選規程のつくり直しを求める鈴木・松岡連合軍が原田昇左右(はらだ しょうぞう)本部長ら小泉支持派を攻め立てた。
 鈴木・松岡連合軍は執行部案の≪総取り方式≫から≪ドント方式≫(注)にひっくり返し、さらに総裁リコールの条件を≪議員の3分の2≫から≪2分の1≫へと変えた。
『2分の1条項』が、これから起きるかもしれない政変の鍵を握っていることを小泉首相も執行部も見抜けなかった。自民党の派閥勢力からみて、橋本派を中心とした“抵抗勢力”が国会議員の3分の2を確保するのは難しいが、過半数であれば現時点でリコールが可能だ。抵抗勢力は小泉首相が金融危機に気をとられている間に、それを利用して政権交代を仕掛ける状況を整えた。
(注・ドント方式/前回総裁選では、地方票は自民党の各都道府県本部に一律3票与えられた。各都道府県はそれぞれ党員投票を行なったが、党員投票1位の候補が3票を総取りする方式だった。派閥の論理で動く国会議員と比べると一般の自民党員には派閥の意向は届きにくく、こうした地方票が小泉氏に集中したことが、総裁選の勝利につながったと見られている。これに対し、比例選挙に用いられる計算式であるドント方式では、党員数に応じて各都道府県に与えられる持ち票に差をつけた上、投票結果も候補者に比例配分されるため、一般党員の意志より、国会議員票の影響が強くなるとされている)

(8) 小泉首相の中央突破戦略は解散総選挙

 そこで小泉首相はどう対抗していくのか。
「抵抗勢力が本気で総裁リコールに動くつもりなら、野中や亀井、青木など主だった幹部を逆に除名し、解散・総選挙に打って出るしかない」
 小泉周辺はようやく総裁選規程改正の背後に見え隠れしている橋本派や江藤・亀井派の意図に気付いたらしく気負った言い方をした。
 解散・総選挙――。
 単なるブラフとはいい切れない。小泉首相は1月21日に召集される通常国会では、道路公団の民営化問題や政府系金融機関の統廃合にいよいよ決断を下さなければならない。それぞれ自民党道路族と橋本龍太郎元首相との交渉で妥協を重ねて改革を先送りしてきた問題だ。
 与党内では、公明党との間で合意した中選挙区制を含む選挙制度の抜本改革をやるのか、それとも小選挙区制下の定数是正にとどめるかの決断も必要になる。
 改革政治家を演じてきた小泉首相だが、未だ何一つ改革できていない。それだけに、支持率が高いうちに、解散・総選挙に踏み切れば閉塞状況を突破することができる。
 自民党行革推進本部長の太田誠一氏は首相と自民党との対立が深まれば解散の可能性はあるとみている。
「小泉首相は妥協の幅が非常に狭い。特殊法人改革の法案をまとめる段階になって、与党側が政府系金融機関などでどうしても首相の方針を認めない場合、最終的には“反対されてもかまわない”と割りきる。そうなると自民党と法案審議で対立し、エスカレートすれば何が起きてもおかしくない」
 小泉首相支持派のYKKもひそかに≪2月政変≫を想定して動き出した。
 加藤紘一元幹事長は12月に入って熊谷弘民主党国対委員長と会談を重ね、経済危機に直面した場合の政治的対応について突っ込んだ話し合いが持たれている。熊谷氏側近。
「2月から4月の間に小泉首相は経済問題で解散・総選挙の決断を迫られる。橋本派や江藤・亀井派が政権交代を仕掛けてきたら、排除に動くだろう。自民党が分裂すれば民主党も割れる」
 どうやら、自民党も民主党も経済クラッシュが確実に近付いていることに気付いていても、危機をどう脱出して国民生活を守るかではなく、いかに政争の具にするかしか考えていない。
 肝心の小泉首相も、そうなった時は改革のメッキが剥がれる前に、破れかぶれの解散を考えている――。


http://www.weeklypost.com/jp/020111jp/index/index1.html




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