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預金全額保護の特例措置(ペイオフ凍結)解除まであと3カ月余りに迫った。金融当局者が予定通りのペイオフ解禁を断言する中、2001年の年の瀬の28日、森喜朗・前首相のお膝元である石川県の第2地方銀行、石川銀行が破たんした。同じ日、2つの信用金庫と2つの信用組合も、金融庁によって破たん認定された。
これにより、今年1年間に破たんした金融機関の数は、第2地銀で1件、信用金庫で9件、信用組合で36件となり、計46件となった。金融庁の調べによると、91年以降、この10年間に破たんした金融機関の数は累計169件に達している(下記の一覧表を参照)。
特に、今年は経営基盤の弱い信組の破たんが急増した。来年4月のペイオフ解禁を控え、金融機関の淘汰はいっそう進む見通し。だが、経済環境が厳しさを増す中、果たして解禁は実行されるのか。
預金者完全保護の時代が終了
預金などの払戻保証額を一定までとするペイオフは、来年4月に解禁される。現在は、金融機関が破たんしても預金は全額保護されるが、解禁後、預金者に払い戻されるのは、原則として元本1000万円とその利息まで。これにより、預金者が税金で完全に保護される時代は終わりを迎える。
公的資金による預金の全額保護という「歴史的に見ても臨時異例の措置」(森昭治金融庁長官)は打ち切られる。“預金者保護”という大義名分のもと、何兆円という多額の税金を金融機関の破たん処理に使う異常事態は解消され、国民は自分の財産は自分で守るという、自己責任原則の時代に入る。
高まる再々延期論
しかし、不良債権問題の先行きに不透明感が強まる一方で、景気の悪化が鮮明になるなど、解禁に向けた環境は厳しい。柳沢伯夫金融相は「2002年4月1日に窓口を開く金融機関は、すべて健全でなければならない。そのために、金融業界も金融庁も万全を期していく」と強調するが、与党内や市場関係者などの間では、2001年秋口以降、ペイオフ再々延期論が高まっている。
当初、2001年4月に解禁されるはずだったペイオフを、99年末のどんでん返しで解禁時期を1年延長した張本人たちが、またもやボルテージを上げてきた。
自民党の相沢英之税制調査会長は10月末、「まだ解禁しないほうがいい」と慎重論を唱えた。亀井静香前政調会長も12月下旬、「戦後最悪の中小・零細企業の倒産がさらに大変な事態になる。焼け野原になる」と強い懸念を示すなど、与党の一部で、じわじわと再々延期論のムードができつつある。
信金・信組の淘汰進む
自民党などが神経質になっているのは、信金・信組の破たんが、この2カ月間で急増しているため。信組だけを見ても、今年1−10月までの破たん件数は12件だったが、11月に入ると単月で13件、12月も10件となった。中小零細企業の倒産が増え、地方経済が悪化している中、地域金融の担い手である信金・信組の経営も深刻な打撃を受けている。
しかし、信金・信組の破たん急増は、景気の悪化だけが原因ではない。信金・信組の検査・監督権限が、2000年4月に都道府県から国へ移管されたことも背景にある。
金融庁が金融検査マニュアルに基づく検査を開始し、信金・信組に対しても従来より厳格な資産査定と引き当てを要求した結果、経営体質そのものや資産に問題のあった金融機関が一気に増えたからだ。
ペイオフ前夜まで続く綱渡り
信金・信組への公的資金注入は、来年3月末まで認められている。つまり、ペイオフ前夜までは可能ということだ。このため、金融庁は、それまでに検査で財務基盤の悪い信金・信組を洗い出し、必要なら公的資金による破たん処理を済ませ、可能な限り信金・信組の経営の健全化を急ぐ方針。
「ペイオフの時代が来るのを切望している」。こう力説する金融相は、「再々延期はしない」と繰り返す。小泉純一郎首相も「予定どおり解禁する」と公約した。
だが、一寸先は闇。27日には、小泉首相が自民党3役との会談で、金融危機回避に向けた方針を確認するなど、金融システム不安への対応策も現実味を帯びてきた。
小泉内閣は年初にも、経済・金融政策の具体的なビジョンを発表する。しかし、株式市場や景気動向次第で、政府・与党内の空気が一変する可能性は十分にある。今後3カ月間は、永田町・霞が関・金融界を中心に、ペイオフ再々延期をめぐる攻防が激しくなるのは必至。4月1日の解禁まで、政府は綱渡りの政策運営を余儀なくされそうだ。