★阿修羅♪ 国家破産5 ★阿修羅♪ |
日本経済は継続的な物価下落という「デフレ」の真っただ中で苦しんでいるが、前方に視線を向けると、ヒタヒタと忍び寄る「インフレの影」がおぼろげながら浮かんでくる。政府や与党幹部の一 部に「調整インフレ」待望論が依然根強いだけでなく、産業界からは、現実に 日本経済は程なくインフレに転換するとの見方も出始めている。
インフレに債務負担軽減への期待
2002年度予算政府案が決まり、日本の長期債務残高は、国と地方を合わせると2003年3月末に693兆円という天文学的な数字に膨らむ見通しになった。竹中平蔵・経済財政政策担当相は6月と12月の国会答弁で、「国債を(すべて) 返済した国はない」と繰り返し、完済には「巨額の財政黒字を場合によっては 100年くらい出し続ける必要がある」と述べ、借金をゼロにするのは事実上、困難との見解を示した。
そのうえで同相は、国債残高をこれ以上増加させないことが重要と指摘。 その一方で、国内総生産(GDP)で2−3%程度の成長を続けていけば債務負担が軽減されると説明。これは、経済成長に伴って発生するインフレによって債務負担を軽減する方向に政策を導きたい、との姿勢を示唆したものと言える。
竹中経済財政相や与党幹部は日本銀行に対し、デフレ対策として物価目標 を設定してあらゆる政策を総動員するよう求めている。こうした考え方の行き着く先は、事実上の「調整インフレ策」だ。インフレターゲット導入の急先鋒である山本幸三衆院議員(自民党)は、物価目標値として、消費者物価指数(CPI)の年間上昇率2−4%を主張している。
「円安放置なら必ず物価上昇」
これに対して、日銀の速水優総裁は一貫して慎重な姿勢を崩していない。 国会答弁や記者会見でも、「高めのインフレ率を設定する調整インフレ策は取ることができない」と繰り返している。ただ、日銀も外部からの声にじりじりと 押し込まれ、次々に政策カードを切り続けているのが現実だ。19日の金融政策決定会合では、一段の量的金融緩和を決定。竹中経済財政相は、日銀は「未知の領域に入る覚悟を示した」と、今後の決断に強い期待を表明した。
日銀が実際に「調整インフレ」的なインフレターゲットを導入するかどう かは別にして、現実問題として、物価が上昇に転じる可能性を指摘する声も出始めた。その大きな要因は、12月に入って急速に進んでいる円安だ。日本の通貨当局の円安容認姿勢もあって、25日は98年10月以来の1ドル=130円台まで円安が進んだ。
「政府が円安を放任するならば、必ずインフレが起きてくる。デフレもそろそろ終わりになるのではないか」−−。日本マクドナルドの藤田田会長はすでに今年8月の段階(当時は社長)で、こうした見通しを示した。藤田氏は95 年当時、少子高齢化社会の到来を根拠に日本経済のデフレ化を予想。その後、積極的な値下げ販売で日本マクドナルドの売り上げ規模を拡大した経緯がある。
また藤田氏は、12月20日の会長就任発表の席でも、「私はインフレ論者として異端児扱いされているが」と前置きしたうえで、現在の円安基調は2、3年後に消費者物価に反映するとの見方を示し、「早ければ2年後、遅くても3年後にはかなりのインフレが起きてくると思う」との見方を示した。
早ければ1、2年後には…
経済財政諮問会議の14日の会合の議事要旨によると、諮問会議が1月にまとめる「構造改革と経済財政の中期展望(仮称)」には、構造改革の「集中調整期間中」に物価上昇率がプラスに転じると見込まれるとの表現が盛り込まれる方向となっている。これに対して、日銀の速水総裁は、「構造改革と不良債権処理はどちらも短期的にはデフレ要因」と指摘、「その間ある程度の物価下落は不可避だと思う」と反論している。
速水総裁は13日の衆院財務金融委員会でも、「物価上昇が1−2年遅れるのは当然だ」と答弁し、集中調整期間中の物価上昇には否定的な考えを繰り返している。しかし、こうした総裁発言も裏を返せば、早ければ1−2年後には物価上昇、つまりインフレに転じる可能性を示しているとも受け取れる。その時期が早まるのかどうか。内外価格差を左右する円相場の動向が1つのカギになるのは間違いなさそうだ。