★阿修羅♪ 国家破産5 ★阿修羅♪ |
今年も残すところ後3日となった。NYなど欧米市場は年始1月1日のみ休場で12月31日、2002年1月2、3日と日本国内が正月休みの間も取引が続けられる。足元では急激な円安が進んだこともあり、国内市場が閉まっている間の値動きが気になる市場関係者も多いことだろう。今回はキーワードを挙げることで来年を展望するにあたりポイントとなりそうな項目を要約してみよう。
○ 金融主導型経済の終焉(「金融清算の時代」と「ポスト・マネー時代」)
当欄では、20世紀最後の10年を“独り勝ち”と形容されるほどに経済拡大に成功した米国の繁栄を株高、ドル高という金融を梃子(てこ)にした経済運営によりもたらされたものとして位置付けてきた。言葉を代えると「資産効果(株、不動産価格の上昇)」に後押しされた経済拡大であり、不良債権処理に追われ金融機能が麻痺状態にあった日本に住む身にはピンとこない話だが、過去10年はまさに世界的な「金融の時代」だった。
この間(91年〜2000年)のウォール街の就業者数(NY証券取引所会員会社)が21万人から36万人に急増していることが、その状況を端的に物語る(特に97年以降に急増)。ただしそれは、最終局面でやはりバブル化した。結局株価はダウ工業株30種はじめ各指標とも2000年1−3月期にピークを打ち、その後下げトレンドに転換している。現状は“宴の後”であり、もちろん「戻り」はあれ、もう当分あの“お祭り騒ぎ”には戻れないということだと思う。米エネルギー大手にして金融会社の色彩の濃かった「エンロン」社の破綻は、それを象徴する事件だった。「超」がつく優良
企業が“金融のつまずき”により瞬く間に破綻する構図は、「信用リスク」に対する関心を米国内外で高めた。“行き過ぎた金融の時代の巻き戻し現象”とでも表現すべきこうした問題が表面化するところが、「金融清算の時代」を象徴しているように思われる。いまは「ポスト・マネー時代」の始りに位置しているのではないだろうか。
○ 背水の陣を敷くFRB
2001年の米国経済を見る上での最大イベントは、「同時多発テロ」ではなく一貫して採られた金融緩和策であったと思う。バブルは発生過程より収縮過程のコントロールが難しいと思われるのだが、従来の記録を塗り替えた都合11回、幅にして4.75%に及ぶ異例の利下げ実施は、この戦いが容易でないことを表す。明らかな政策効果が見えないなか名目金利が1%割れに近づいている現状は、さすがのFRBも打つ手が限られつつあるということだろう。2002年1月29、30日に予定されている金融政策決定会合であるFOMC(連邦公開市場委員会)にてさらなる利下げに進むと思われるが、それはFRBが事態を楽観していない現れでもある。大統領や財務長官という政権担当者が明るい展望を述べ勝ちであるのは「政治」であって、こちらとは別の次元の話なのである。
バブル化した金融経済をいかにしてソフトランディングさせるか。残された政策余力を駆使するFRBの戦いは、2002年正念場を迎える。今は期待先行で効果が現れている株式市場の戻りと金利低下効果で健闘している住宅部門が元気なうちに企業部門がどこまで立ち直るかがポイントとなる。回復にこれ以上手間取るようだと、期待が剥げ、資産デフレが足元の消費デフレ(景気後退にともなう物価の値下がり)にかぶさる形でデフレを深化させることになる。
それはゼロ金利に追い込まれた日本銀行の姿と重なるものであり、そこへの落ち込みは、金融政策の“負け”を意味するわけで、築き上げられてきたグリーンスパン神話の崩壊を意味するのではないか。その際の株価の下落は、第2、第3のエンロン(株高を前提としたビジネスモデルの破綻)を生みかねず、そうなれば信用リスクは高まるだろう。FRBはいうなれば「背水の陣」を敷いて戦いに挑んでいるということである。
○ 緊迫する中東情勢と米中間選挙
長期化が想定されていたアフガン情勢は一区切りついたというのが一般的な受け止め方である。ただし、これで終わったという見方はさすがに少ない。従来の戦いに比較して結果が見え難いのである。相手がテロ組織(いわばネットワーク)ということもあるだろう。そこで湾岸戦争終結時を思い出すのだが、当時は米国中が戦勝気分に沸いていた。後に大統領候補としても名前があがったコリン・パウエル (当時「統合参謀本部議長」、現「国務長官」)というヒーローまで生み出すこととなった。
2002年は、米国で議会選挙が実施される年でもある。共和、民主両勢力伯仲のなか激しい選挙戦が繰り広げられるのだろう。あれだけ大統領選が揉めた後でもある。政権政党としては、明らかな政治的結果のもと選挙戦を戦いたいと思っても不思議ではない。
したがって、米国が新たな軍事行動を採る可能性は高いのではないだろうか。
ブッシュ大統領は、12月21日通信社との会見で「来年は戦争の1年になるだろう」と、テロ組織掃討の範囲をアフガニスタン以外に広げる決意を示したと伝えられている(ロイター)。すでにイラクへの戦線拡大を予想する声は高まっているが、パレスチナ問題でブッシュ政権は12月初旬に従来の方針を変え、自治区へのイスラエル軍の侵攻を「自衛権」として容認する方針を打ち出している。2001年、西アジアに「一石」ならぬ「大岩」を投じた米国のおこした波紋が、中東地域でどういう結果を引き起こすのか、いずれにしてもこれからが本番であるのかもしれない。原油価格その他から目は離せない。
その他、金市場の材料となりそうなものは山積している。いずれも状況が進んだ段階で金価格を刺激する可能性が高いものばかりである。2002年の金市場は、2001年以上に乱高下するのではないだろうか。日本国内の要因にも緊張強いられるものも多い。
最後に、こうした波乱含みの世情はともあれ、読者の皆様におかれましては健康で明るい年を迎えられんことをお祈りして2001年の終わりとさせていただきます。ありがとうございました。
金融・貴金属アナリスト
亀井幸一郎
※本レポートは執筆者の個人的な見解を述べたものであり、
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