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病人が深刻な内部疾患で高熱を出しているときに、三つの対処法がある。
第一は、手術で病巣を摘出することだ。これには専門の外科医が必要だし、病人と家族も相当の覚悟をしなければならない。しかし、これこそが本当に必要なことである。
第二は、熱冷ましを与えることだ。確かに熱は下がる。しかし、病巣は残っているのだから本当の対処ではない。
第三は、体温計を水に漬けることだ。病気の実態は何も変わらないが、家族が素人だとだまされてしまう。
経済政策にもこの三つがある。「構造改革」と叫ぶ政府が現れると、ついに専門の外科医が登場したようにみえる。日本経済は生きかえるだろうと、国民は期待する。
しかし、残念ながら、検討されているのは体温計の水漬けが多い。「国債発行額30兆円以下」は、その典型だ。この問題をめぐって、これからの予算編成過程で「激しい議論」が闘わされるだろう。しかし、財務省プロ集団の手にかかれば、国債発行額の表面的操作など朝飯前だ。
問題の本質は税収の激減にあり、その原因は企業収益の悪化にある。実は、企業が経済環境の激変に適応していないことこそ、日本経済が直面するあらゆる症状の原因である。つまり、必要なのは民間企業の改革なのだ。だが、金融緩和で不採算企業が生き延びれば、それは実現されない。金融緩和は、政府が問題の本質を放置していることの何よりの証拠なのである。
政府の構造にも、手術すべきところは多い。小泉内閣の発足直後、私は「この内閣が標榜する構造改革は、もしかしたら本物かもしれない」と期待した。それは、道路特定財源の見直しが検討項目とされたからだ。揮発油税収入を総合交通政策に使えれば、都市住民の生活は大きく変わる。しかし半面で、これは道路族にとって絶対に許容できない政策だ。
政府の構造改革宣言が本物かどうかを判定する基準はいくつかあるが、道路特定財源は、その一つだ。ところが、この問題は、いつの間にか忘れられてしまった。
特殊法人改革や道路計画の見直しは、一般の認識とは異なり、実は熱冷まし段階のものだ。もちろん、断行すれば利益集団に大きな打撃が及ぶから、政治的には容易な問題ではない。つまり、見た目は変わる。しかし、これで国民生活に実態的な変化が生じることはないだろう。
まして、こうした政策は、日本経済の活性化には何の関係もない。本当に必要な手術がなされないでいる間に、死に至る病は確実に進行しているのである。(12/02)
http://ntt.asahi.com/business/issin/K2001120200371.html