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日本銀行は20日、12月の金融経済月報を公表し、「わが国の景気は、輸出や設備投資の減少に加えて個人消費も弱まるなど、広範に悪化している」として、情勢判断を7ヶ月連続で下方修正した。「悪化」が使われたのは98年7月から99年2月以来、約3年ぶり。
個別項目については、個人消費は「このところ弱まってきている」として、前月の「徐々に弱まりつつあるように窺われる」から下方修正。公共投資は「減少傾向にある」、純輸出は「減少を続けており」、設備投資は「減少している」として、前月から判断を据え置いた。
鉱工業生産と在庫は「こうした最終需要の動向に加え、素材を中心に在庫過剰感がなお強いこともあって、鉱工業生産は大幅な減少が続いている」と指摘。前月の「電子部品や素材で在庫過剰感が強い」から、「電子部品」を削除することで、一部分野で在庫調整が進ちょくしているとの認識を示した。
情報関連財輸出の回復、当面期待しがたい
日銀企業短期経済観測調査(短観)の結果を受け、企業収益は「大幅に減少しており」、業況感も「悪化を続けている」と指摘。前月の「企業収益は製造業を中心に悪化しており」から判断を引き下げた。
所得形成・消費者心理も「労働時間の減少や失業の増加が続く中で、家計の所得形成の弱まりが明確になってきており、消費者心理も慎重化している」と指摘。前月の「家計の所得形成の弱まりも、はっきりとしてきている」から下方修正した。
先行きは、輸出環境について「世界同時的な情報関連財の在庫調整は着実に進んでおり、来春辺りまでには概ね一巡するとの見方が強まっている」として、前月の「との見方が多い」から、若干の強めの表現に修正した。
そのうえで「もっとも、情報関連財の最終需要は依然として低調に推移しているだけに、同分野での輸出の目立った回復は、当面期待し難い」と指摘。 前月の「情報関連財の最終需要も、当面は低調に推移する可能性が高い」からより悲観的な表現に書き換えた。
今後悪化を続けることは避けられない
また、「同時多発テロ事件以降、世界経済は一段と減速しており、とくに米国の景気動向には依然不確実な要素が多い。このため、米国をはじめとする海外景気動向次第では、わが国の輸出や生産が再び下押しされる懸念も残されている」と指摘。
前月の「米国個人消費の不振が長引けば、わが国においても消費財等の輸出減少を起点に新たな調整が誘発されることも考えられる」から、ここでも悲観的な見方が示された。
国内需要面も「輸出環境の不透明感が強く、国内民需が全般に弱まっていく中で、政府支出も基調的には減少傾向を続けることが見込まれている」と指摘。
「情報関連財等での在庫調整進捗に伴って、鉱工業生産の減少テンポは幾分緩まるとしても、経済全体の活動水準が下げ止まるまでには、かなりの時間を要すると考えられる」として、前月の「生産活動が全体として下げ止まるまでには、かなりの時間を要すると考えられる」から下方修正した。
これらを総合したうえで、景気先行きについて「今後悪化を続けることは避けられないと考えられる」と予想。前月の「内需がさらに弱まっていくことは避けられず、同時に、輸出の一段の減少が景気を下押しする懸念も強まっている」から情勢判断を引き下げた。
中小企業の資金調達環境厳しくなる方向
19日の速水優総裁の会見では、「金融面のリスク」が政策変更の理由として挙げられたが、月報の金融面の情勢判断は小幅の修正にとどまった。金融機関の貸出姿勢については「民間銀行は、優良企業に対しては貸出を増加させようとする姿勢を続ける一方で、信用力の低い先に対しては貸出姿勢を慎重化させる傾向が窺われる」と、前月と変わらず。
企業金融については「企業からみた金融機関の貸出態度も慎重化している」として、前月は「中小企業」となっていたのを「企業」に書き換えた。社債、CPなど市場を通じた企業の資金調達環境は「高格付け企業を中心に概ね良好な地合いが続いているが、低格付け企業の発行環境は悪化している」と指摘。 前月の「低格付け企業の発行環境が幾分悪化しているが、概ね良好な地合いが続いている」から、順番の入れ替えにとどまった。
最近の金融環境の総括は「企業破綻の増加などを背景に、民間銀行や投資家の信用リスク・テイク姿勢はさらに慎重化しており、信用力の低い企業、とりわけ中小企業では資金調達環境が厳しくなる方向にある」と指摘。
前月の「民間銀行や投資家の信用リスク・テイク姿勢は幾分慎重化しており、信用力の低い企業や中小企業では資金調達環境が厳しくなる動きがみられている」から、若干、判断を慎重化させた。