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日銀は、18〜19日の金融政策決定会合で、住宅ローン債権、不動産を裏付けとする資産担保証券(ABS)を適格担保に加えるため、実務的検討に入ることを決定した。これまでの金融政策の域を越えた、「リスク資産の引き受けという、非伝統的な政策」(複数市場関係者)という認識があるなか、専門家の間では、市場活性化への期待感と、中央銀行がリスク資産を持つことに対する違和感が交錯し、賛否両論が聞かれる。
<賛同派は、市場の活性化に期待>
積極的・消極的にかかわらず、同検討案に賛同する専門家は、日銀が不動産を引き受けることで、「中長期的にみて不動産価格が、ひいては株価も上昇する」(複数専門家)とのシナリオを描く。
「ABS市場を活性化させる効果があるという意味で、ABSを適格担保に加える検討は、高く評価したい」(ドイツ証券 チーフ・ストラテジスト/エコノミスト、水野温氏氏)、「日銀が金融調節手段として使うことで、ABS保有意欲が増し、不動産や住宅関連企業へのファイナンスを容易にする」(バークレイズ・キャピタル証券 チーフ・エコノミスト、山崎衛氏)−−などの指摘がある。
実際、現在のABS市場規模は、大きくはない。日銀の統計によると、国内発行のABS、資産担保CP(ABCP)、信託受益権等を含む債券流動化関連商品の残高は、2001年3月末時点で13.9兆円。また、メリルリンチ証券によると、2001年暦年のABS新規発行残高は、公募案件ベースで2.9兆円程度の見込みだという。そのうち、不動産関連は、商業用モーゲージ債券(CMBS)と住宅ローン債券(RMBS)を合わせて全体の27%程度(約7800億円)。
2001年は、日本版不動産投資信託(J−REIT)市場が開設されたものの、CMBS市場へのインパクトは限定的となっている。2001年4月に導入された不動産証券化に関する5%ルールで、オリジネーターは当該物件のリスク部分の5%以上の保有にオフバランスが認められないため、市場拡大が期待されたものの、「劣後部分の多くは、コスト面のメリットや利便性から、銀行向けのノンリコース・ローンに吸収され、市場に現れなかった」(複数関係者)と観測されている。
このような現状を踏まえ、日銀が不動産関連の資産を引き受けることで、「即効性はないが、これらリスク資産が、銀行に吸収されるノンリコース・ローンや、機関投資家のためだけの投資商品ではなく、個人投資家向けということもアピールし、中長期的な市場拡大期待に向け、絶大な効果がある」(複数専門家)という。
<否定派は、リスクと市場メカニズムへの影響を指摘>
一方、否定派は、不動産関連ABSのリスクの高さと、ABS市場に日銀が参入することによる、市場メカニズムへの影響に懸念を示す。実際、不動産関連ABSは、1)低格付けが多い、2)流動性が低い、3)私募が多い(ディスクロージャー度が低い)−−とリスクおよび不透明性が高い。
メリルリンチ証券によると、2001年暦年でみたBB格の発行比率は全体の0.9%だが、BB以下は、全てCMBSであるという。さらに、上述の5%ルールを受けて、シングルB格トランシェも登場している。また、CMBSとRMBSで7800億円という市場規模は、流動性の低さを明確に表している。
私募の割合をつかむのは困難だが、2001年11月現在でABS全体の73%というメリルリンチ証券の試算が、不動産関連ABSにも当てはまるとすれば、非常に高い割合となる。
岡三経済研究所 経済調査部のシニア・エコノミスト、保科雅之氏は「中央銀行がリスク資産を保有することは、基本的に賛成できない。日銀のバランス・シートは現在は良好であるが、万が一それらの資産で損失を出した場合、補填するのは政府(税金)だからだ」としている。また、「不動産ABSには、先に破たんしたマイカルが発行していたセールアンドリースバック型CMBSなどは、低格付け企業の資金調達のラストリゾート的な側面もある」(ある市場関係者)との声も聞かれ、「日銀の手法は、個別の案件を引き受けるというものではないが、モラル面で、日銀が低格付け・低流動的・低ディスクロの高リスク資産を引き受ける事実に嫌悪感を抱く向きもいるだろう」(同関係者)という。
大和総研・経済調査部の主任研究員、取越達哉氏は、市場メカニズムへの影響を指摘する。同氏は「効率的な資産分配という経済学の観点からみると、官業による民業の圧迫というマイナス面がある。本来市場は、自由なメカニズムに任せておくべきところを、中央銀行が介入することによって歪みが生じ、健全な市場拡大等が阻まれる可能性はある」とみている。