★阿修羅♪ 国家破産5 ★阿修羅♪ |
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不況で給料が下がったので、あまり買い物をしなくなった。その結果、日本企業の業績はますます悪化。いっそう給料が減り、生活は苦しさが募ってくる。不況はどんどん深刻さを増していく。こんな悪しき連鎖が、日本中に蔓延しつつある。だがそれも次にやってくる真の恐怖の前では、単なる序曲でしかない。
●もう一つのゼネコンに注目が
'02年を前に、日本経済は重大な岐路に差しかかっている。
金融庁による特別検査が進むなか、9月のマイカルに続き、12月6日に青木建設が破綻した。だが、先に出回った「問題企業リスト」は、29社とも30社とも言われる。破綻する企業がこれで終わりとは、誰も思っていない。
「いま注目を集めているのは準大手ゼネコンの佐藤工業とダイエーですが、株価が100円を切っている企業はおよそ100社にものぼる」(全国紙経済部記者)
12月12日に発表された日銀短観によれば、企業の景況感を示す業況判断DI(景気が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた指数)は、大企業・製造業がマイナス38。前回9月から5ポイントも下がり、これで4期連続の悪化となった。日本経済にはいま、一向に明るい兆しが見えず、ただひたすら、不安感ばかりが蔓延している。
こんななか、12月11日に東京都内で、ある注目すべき講演が行われた。この講演は会員制で、マスコミはシャットアウト。話をしたのは、日本銀行審議委員で、元東燃社長の中原伸之氏だ。
中原氏は90分に及ぶ講演で、さまざまなデータをもとに日本がいま置かれている危機的な状況を強く語った。
《私は現在進行中の「平成大不況」の3度目の後退が、遅くともここ2〜3年のうちに、これまで先送りしてきた諸問題の総決算を迫ることになると思っています。2001年度は名目GDP、実質GDP両方の伸び率がマイナスになることが必至の情勢といえますが、私は2002年度についても名目GDP、実質GDPの両方がマイナスになる可能性があると考えています。……これは少なくとも20世紀以降初めての事態と言えるでしょう。現下のデフレはそれほど深刻なものなのです》
中原氏は、10月の5.4%という失業率、1843件という企業倒産件数('84年10月以来の高水準)などの数値を挙げ、「日本経済がある種の破断界を越えつつあるのではないか」と危惧する。そして、こう続けている。
《日本経済はデフレスパイラルに入っているかどうかという議論をよく耳にしますが、私は、現状はデフレスパイラルの初期段階であると考えています。デフレスパイラルの定義はいろいろあるようですが、「景気が後退するなかで、物価が下落幅を拡大する」あるいは「物価下落が景気後退をもたらし、これがさらに物価を下落させる」と定義すれば、すでにこうした経済状況の軌道に乗ってしまっていると私は考えています》
日本経済がデフレ状態にあることは誰しも認めるところだ。ただ、それが「スパイラル」という悪循環に陥っているかどうかについては、議論が分かれていた。単なるデフレであれば、一方には「物価が安くなるのだから、消費者にとってはいいことではないか」という見方もある。
ところが、日銀の金融政策決定会合での発言権を持つ審議委員が「スパイラルに陥っている」と認めたとあれば、この意味は重い。「デフレスパイラル」となれば、物価の下落→企業収益の悪化→従業員の給与減少→モノが売れない→物価の下落という、悪しき循環が今後も繰り返されるということ。中原氏は日本経済は'02年以降ますます悪化の度合いを強め、「完全失業率は先行き7〜8%程度に達する」というのである。
国民にとって、これは恐るべき事態である。いまでも十分どん底なのに、倒産企業は激増の一途を辿っていくのだ。辛うじて持ちこたえる企業もリストラを加速させ、巷にはいま以上の失業者が溢れかえることになる。現在中高年を中心に自殺者が増え続け、年間3万人にも達すると言われているが、この問題もますます深刻化していくだろう。
国民の生活は苦しさを増し、住宅ローンなど債務を抱える人は、破綻の危機に瀕するケースが続出することは間違いない。'02年、われわれの前には、これまで以上の塗炭の苦しみが待ち構えている。
●国債暴落で大銀行が憤死する
ところが、ただでさえこのように「国難とでも言うべき状況」(中原氏)なのに、その先には、さらに戦慄すべきシナリオが待ち受けているという指摘が出ている。デフレスパイラルがある「限界点」に達したとき、次にやってくる「超インフレ」=「ハイパーインフレ」の恐怖だ。そしてそれは、早ければ'02年中に襲いかかってくるという。
ハイパーインフレとは、何らかのきっかけで(通常は戦争や内乱など)国が信用を著しく失墜させ、短期間に数百%以上もの急激なインフレを起こすことだ。
普通の状態では起こるはずのないハイパーインフレが日本でなぜ起こるのか。現在の日本には、「著しく信用を失墜」する因子があるということだ。それは日本経済のガン、日本の銀行が抱える巨額の不良債権問題である。
この不良債権の拡大を恐れ、日本の銀行はいわゆる「貸し渋り」を強化し続けてきた。もはや日本の銀行は、「カネを持っていても貸さない」機関となり、銀行の本来の役割を放棄している。
今年に入って日銀は、「量的緩和」、つまり国内に現金を大量にバラまいて景気を回復させようという金融政策を続けてきた。ところが、いくらカネをバラまいても、一向に景気はよくならない。銀行が日銀から出たカネを企業に貸し渋りし、「安全策」としてひたすら国債を買い続けているからである。
「銀行は1行につき何兆円もの国債を買い続けていますが、いまはそれを日銀が再び買うという仕組みになっている。要するに、マネーが政府、日銀と銀行とのあいだで、ただぐるぐると回っているだけなんです。内情を見ればとっくに破綻していてもおかしくない足利、西日本、北陸などの銀行が生き延びているのは、この仕組みで資金を常に調達できるからなんです。しかし、実はこの歪んだシステムにより、日本経済はたいへんなリスクを抱え込んでいる」(慶応大学経済学部・金子勝教授)
国内の銀行の国債保有残高は、現在約70〜80兆円にも達しているという。この、あまりにも膨らみすぎた銀行の国債保有残高が、日本経済をやがて破滅に導く大爆弾と化す。
「銀行が大量に買い込んでいるため、日本の国債はいま、140円前後という、異常な高値を維持しています。この状態がずっと続くことはあり得ない。普通なら国債発行量が増えすぎると、国債価格は落ちていく。なのに、銀行が買っているため無理なかたちで買い支えられている。銀行もそれを分かっており、いつ国債が下落するかとヒヤヒヤしながら買い続けている。もし何かのきっかけで少しでも国債価格が下落すれば、みんながいっせいに逃げ出す(国債を売る)ことになる。国債の下落は、少し落ちただけでも銀行に凄まじい被害を与えるからです。その結果、国債の暴落が発生します」(外資系金融機関幹部)
仮に、国債が10%ほど下落しただけで、80兆円の国債を抱える銀行界では、8兆円の損失が発生する。もとより不良債権に苦しむ銀行が吸収できる額ではない。金融危機の到来だ。パニックになった銀行は貸し渋りどころか強引な“貸し剥がし”を始め、見捨てられた企業がバタバタと倒産する。
「さらに、国債が暴落すると金利が大幅に上昇していきます。安全なつもりで買うはずの国債が安全でなくなれば、もう誰も買わなくなる。これは、日本という国自体の信用が失われていくことも意味します。先日、格付け機関のS&P社が日本国債の格付けをAAに格下げしましたが、さらに格下げされれば、誰も円を買うことはなくなり、日銀の量的緩和で国内に滞留していた巨額のマネーが怒濤のように外貨へと向かう。円の大暴落、急激な円安の発生です。すると、輸入品を中心にモノの価格が急上昇することになる。超インフレ時代の到来です」(大和総研経済調査部長・岡野進氏)
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●住宅ローンがあったら終わり
中央大学商学部教授で一橋大学名誉教授の花輪俊哉氏によれば、公的な統計調査資料で、戦後日本の物価上昇率がもっとも高率だったとされるのは、終戦直後の'46年における年率364.5%だという。ただし、現在の日本経済はある意味で終戦直後以上の緊急事態に陥っている。
不良債権問題はもちろん、国と地方が抱える財政赤字は666兆円。これに、特殊法人などが抱えている「隠れ借金」を加えると、債務合計額は1000兆円を超えると言われている。毎年の税収が約50兆円しかないのに、20倍もの借金を背負っているのだ。
この状態で、超インフレが発生したらどうなるのか。
「もはや不良債権問題などささいなことに感じられるほどの、大パニックが起きる。いまの2%程度の超低金利でようやく存続しているような日本企業は、金利の暴騰により、すべてが吹き飛ぶ」(全国紙経済部デスク)
たとえそこまで行かなくとも、超インフレが起きた場合に国民が被る被害は著しい。まず、真っ先に直撃を受けるのは、貯金や年金を頼りに暮らす高齢者だ。インフレになれば貯金の実質的価値はどんどん目減りする。
もちろん、これはサラリーマンも同様だ。'90年代初頭、スウェーデンで実際に起きた通貨危機と超インフレでは、年換算でインフレ率が500〜600%に達したという。物価が1年で5倍や6倍になって、はたしてどれだけの人が持ちこたえられるだろうか。ラーメン1杯5000円の世界である。
「インフレになれば給料も上がるのでは?」などと安易に考えないでほしい。せっかく大リストラを進めてきた日本の企業が、簡単に給料を上げるわけがない。そうでなくとも、インフレのときの給料の上昇は、物価の上昇には到底追いつかないのが普通だ。
唯一、多額の借金を抱える人だけ、それが軽減される。だが、住宅金融公庫の固定金利ならともかく、民間銀行に多い変動金利型の住宅ローンなどを抱えていたら、ひとたまりもない。そもそも生活費が莫大に膨らむわけだから、もはや貯金も借金も関係ない。
インフレがいまの日本で始まったら、このように目もあてられないことになる。ところが、最近デフレ不況の“特効薬”として、「インフレを起こせ」という議論がさかんにわき起こっている。
「インフレ目標政策」「インフレ・ターゲティング」などと言われる政策がそれだ。
その理論では、日銀が年間2〜3%程度のインフレ目標率を設定し、これを国民にアナウンスすれば、国民は「物価が上がる前に何か買っておこう」と購買意欲を高め、デフレがやがて解消。その結果日本経済が復活する、という。
速水優・日銀総裁はこれに強硬に反対しているが、竹中平蔵経財相は同様の金融政策導入論者といわれ、小泉首相の決断次第では、政策が実行に移される可能性もある。
しかし、そううまくいくのだろうか。前出・花輪氏がこう指摘する。
「インフレ目標論者は、マイルドなインフレを考えているのでしょうが、インフレというのは、人為的に操作できる経済現象ではない。絶対に噛みつかないと甘く見ていた猫が、なにかのアクシデントで豹変する。一度始まったインフレを、コントロールすることはほぼ不可能です」
元野村総研理事長で日銀理事も務め、経済学博士の鈴木淑夫代議士もこう語る。
「インフレになって得をするのは、666兆円の債務負担が軽くなる政府と、バブル期の投機のツケで債務超過に陥っている問題企業。政府、自民党の一部は、自らの政策の失敗による財政赤字の拡大と不良債権の累増を、インフレで一挙に解決しようとしているのではないか。これは損はすべて一般国民へ、という大衆収奪行為に等しい」
日本のように、デフレスパイラルを脱却するためにインフレ目標を設定しようという国は、ほとんど例がない(やや異なる条件では'30年代のスウェーデンが実施)。結末がどうなるのか、はっきり言って誰にも分からないのだ。
「インフレ目標政策など、地価上昇で銀行の担保価値を上げ救済するとか、借金で沈没しかけている連中の、バランスシート上の帳尻合わせに過ぎないんです」(明海大学不動産学部・長谷川徳之輔教授)
もし、インフレのコントロールができなくなったら、待っているのは“暴走”インフレ。結末はやはり最悪となる。
「残念ながら、日本がこれまで経験したはずのインフレと、それを招いた失政の反省がまったく活かされていません。日本経済は確かにこのままでは絶命するが、逃れるには、産業の内部構造を大改革するよりほかに方法はない。インフレ目標など、亡国論だ」(経済評論家・高橋乗宣氏)
●来月に再びニッポン格下げ
こんな危険な対策ではなく、もっと確実なデフレ対策、超インフレ防御策は、ないのか。大手シンクタンクの金融担当主任研究員のひとりは、もはや“最終手段”を取るしかない状況まで来ている、と次のように語る。
「やはり、不良債権問題をすぐになんとかするしかない。タイムリミットは近づいています。S&Pなど格付け機関は、早ければ'02年1月か3月に、日本の国債格付けをAAからもう一段格下げし、シングルAにする可能性が高い。そうなれば国債、円の暴落は避けられません。'02年中にハイパーインフレが始まる。その前に、特定のメガバンクも含め問題銀行はすべて国有化し、国の管理下に置いてしまうのです。小泉首相が腹をくくれば、年内にもできる。できなければ、円は1ドル160〜200円台に暴落し、超インフレが間違いなく発生。日本は本当に息の根が止まる」
もしも最悪の事態が起きた場合、個人で対抗する術すべはあまり多くはない。だが、経済ジャーナリストの田嶋智太郎氏はこう助言をしてくれた。
「円の暴落、超インフレに対抗する方法は、資産の一部を外貨建ての金融商品に分散投資することです。円安で通貨の価値が下がれば、相対的に割安になるのが外貨。株を買う場合は、現在のデフレ状況でも大きく下押ししない銘柄をまず厳選し、その後、インフレ効果で株価が上がっていく銘柄を見極める。よく言われるところの国際優良株、たとえばトヨタ、ホンダ、キヤノンなどは、世界を舞台に活躍し、世界のどこでも利益が出せ、円暴落の影響をそれほど受けない。いまの株価は天与の安値なので注目しておくのも対処法の一つです」
問題は、国民がこの危機を感じ取り、いっせいに外貨建て商品に資産を移し始めると、それ自体が円大暴落→超インフレの引き金になりかねないということ。だが、そのままにしておいても、やがて確実に破滅の日はやってくる。先手を打って危機に対処するか、それとも、危機に直面してから対応策を決めるか。どちらにするかは、あなた次第だ。